原子炉

原子力施設

進化した原子炉の心臓部:内蔵型再循環ポンプ

原子力発電は、多くのエネルギーを生み出し安定して電気を供給できるという点で、私たちの社会にとって重要な役割を担っています。その一方で、発電所は高い安全性が求められており、より安全にそして効率的に電気を生み出すための技術革新が日々進められています。 その革新的な技術の一つに、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)に採用された内蔵型再循環ポンプがあります。従来の沸騰水型原子炉では、原子炉の外に設置された再循環ポンプを使って炉心の冷却水を循環させていました。しかし、この方法では、配管やバルブなど原子炉の外にある機器が増えるため、故障のリスクが高まる可能性がありました。 そこで開発されたのが、内蔵型再循環ポンプです。このポンプは原子炉圧力容器の中に設置されるため、原子炉の外にある機器を減らすことができます。その結果、配管の破損などによる冷却水漏れのリスクを抑え、原子炉の安全性を更に向上させることが可能となりました。 また、内蔵型再循環ポンプは、従来の外部ポンプに比べて小型軽量であるため、建設コストの削減にも貢献します。 このように、原子力発電は安全性と効率性を更に高めるための技術開発が進められています。内蔵型再循環ポンプはその一例であり、原子力発電の信頼性を高める上で重要な役割を担っています。
原子力の安全

原子炉制御の鍵!実効遅発中性子割合とは?

原子力発電の心臓部とも言える原子炉では、ウランなどの核燃料が核分裂という反応を起こすことで、莫大なエネルギーを熱として生み出しています。この核分裂という現象において、非常に重要な役割を担っているのが中性子です。 中性子は原子核を構成する粒子のひとつで、電気的な性質である電荷を持たないという特徴を持っています。このため、中性子は他の原子核に容易に吸収されるという性質を持っています。ウランなどの重い原子核に中性子が吸収されると、その原子核は不安定な状態になり、二つ以上の原子核に分裂します。これが核分裂です。 核分裂の際に、分裂した原子核からは再び中性子が飛び出してきます。この中性子がまた別のウラン原子核に吸収され、核分裂を起こす。このような反応が連鎖的に起こることで、原子炉の中では安定した熱エネルギーの供給が可能となるのです。
原子力発電の基礎知識

原子炉の心臓部:実効増倍率を紐解く

原子力発電は、ウランなどの原子核分裂を利用して莫大なエネルギーを生み出す発電方法です。原子核分裂とは、ウランなどの重い原子核に中性子と呼ばれる粒子をぶつけることで、原子核が分裂し、その際に莫大なエネルギーと新たな中性子を放出する現象です。 この新たに放出された中性子が、また別のウラン原子核に吸収され、さらに分裂を引き起こすことで、連鎖的に反応が継続します。これが原子力発電の心臓部と言える核分裂連鎖反応です。 原子炉内では、この連鎖反応を制御するために、中性子の数を調整することが非常に重要になります。中性子の数が多すぎると反応が過熱し、制御不能になる可能性があります。逆に、少なすぎると連鎖反応が途絶えてしまい、エネルギーを取り出すことができなくなります。 そこで、原子炉内には中性子を吸収する制御棒や、中性子の速度を調整する減速材などが設置されており、これらの装置によって中性子の数を常に監視し、微妙な調整を行うことで、安全かつ安定的にエネルギーを取り出せるように制御しています。このように、原子力発電においては、中性子のバランスを適切に保つことが、安全で安定した運転を実現するために不可欠なのです。
原子力施設

SCARABEE:高速炉の安全研究を支える実験炉

フランス南部にあるカダラッシュ研究所に設置されたSCARABEEは、プール型の原子炉です。1982年の運転開始以来、高速中性子炉、とりわけ高速増殖炉の安全性に関する研究において中心的な役割を果たしてきました。高速炉は、将来のエネルギー需要を満たす可能性を秘めた原子炉として期待されています。 SCARABEEは、高速炉の安全性に関する様々な状況を模擬できる実験炉です。例えば、炉心冷却材の喪失や炉心内の出力分布の異常など、高速炉特有の事象を模擬した実験を行うことができます。これらの実験を通して、高速炉の安全性を向上させるための貴重なデータを取得してきました。 フランスは、長年にわたり高速炉の開発と研究に力を入れてきました。SCARABEEはその中心的な役割を担っており、そこで得られた研究成果は、次世代の高速炉の設計や安全基準の策定に大きく貢献しています。SCARABEEは、フランスのみならず、世界の高速炉の安全研究をリードする重要な施設といえるでしょう。
原子力施設

原子力開発の要:実験用原子炉

- 実験用原子炉とは 原子力発電所で稼働している原子炉とは別に、「実験用原子炉」と呼ばれる原子炉が存在します。文字通り、様々な実験を行うことを目的として建設された原子炉です。 新しいタイプの原子炉を開発する際、机上の計算やコンピューターシミュレーションだけでは、実用化に向けた課題や詳細な特性を把握しきれません。そこで、実際に実験用原子炉を建設し、現実の環境における運転データや材料の挙動などを綿密に調査するのです。 実験用原子炉で得られたデータは、新型原子炉の設計や安全性の評価、さらには既存の原子炉の運転効率向上や安全性向上に役立てられます。このように、実験用原子炉は原子力開発の基礎を支える、原子力技術の進歩に欠かせない重要な役割を担っているのです。
原子力施設

原子力発電のドレン:その役割と処理

- ドレンとは原子力発電所には、巨大なタービンやポンプ、それらを繋ぐ無数の配管など、複雑な設備が数多く存在します。これらの設備は、原子炉で発生させた熱を利用して蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回し、電気を作り出すという重要な役割を担っています。この過程で、様々な機器や配管の中では、水や蒸気が絶えず循環しています。その際に、水に含まれる微量の不純物や、機器の腐食によって生じる物質などが混入することがあります。 これらの不要な水分や物質を、設備の外部に排出することを目的として、あらかじめ設けられた箇所から取り出される液体が「ドレン」です。ドレンは、原子炉容器、熱交換器、各種タンクなど、様々な場所から排出されます。例えば、原子炉で発生した蒸気を冷却して水に戻す復水器からは、冷却水に混入した不純物を含むドレンが発生します。また、タービンを回転させる蒸気からも、微量ながら不純物を含むドレンが発生します。ドレンは、発電所の運転状況や設備の状態を把握するための重要な指標となります。そのため、ドレンの排出量や成分は常に監視され、異常がないか確認されています。もし、ドレンの成分に異常が見つかった場合、それは機器の故障や腐食の兆候かもしれません。そのため、定期的にドレンを分析し、発電所の安全な運転を維持するために役立てられています。
原子力施設

原子力開発の要: 実験炉の役割

原子力発電は、多くの電力を安定して供給できる上に、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないという利点があります。しかしながら、安全性向上や廃棄物対策など、解決すべき課題も残されています。そこで、これらの課題を克服し、より安全で高効率な原子力発電を実現するために、世界中で新型炉の開発が進められています。 新型炉の開発において、実際に原子炉を建設して実験を行う「実験炉」は、必要不可欠な存在です。机上の計算やコンピューターシミュレーションだけでは、複雑な原子炉の挙動を完全に予測することはできません。実験炉では、実際に燃料を装荷し、核分裂反応を制御しながら、様々な運転条件下におけるデータを取得します。これにより、新型炉の設計の妥当性を検証し、安全性や性能を評価することができます。 実験炉で得られたデータは、新型炉の実用化に向けた貴重な資料となるだけでなく、既存の原子炉の安全性向上や運転効率の改善にも役立てられます。実験炉の建設には、多大な費用と時間がかかるという課題もありますが、原子力発電の未来を拓くためには、実験炉による技術開発が欠かせません。
原子力施設

次世代原子炉SWR1000:安全性と経済性を両立

- SWR1000とはSWR1000は、ドイツのシーメンス社が開発を進めている、出力1000メガワット級の革新的な原子炉です。その名称は、「Simplified Boiling Water Reactor」、つまり「単純化沸騰水型原子炉」の頭文字を取ったもので、従来の沸騰水型原子炉の設計を簡素化し、より安全性を高めた点が特徴です。従来の沸騰水型原子炉では、原子炉圧力容器の中に、燃料集合体と制御棒の他に、再循環ポンプや蒸気乾燥器などの機器が設置されていました。しかし、SWR1000では、これらの機器を原子炉圧力容器の外に設置することで、構造を簡素化し、機器の信頼性向上と保守点検の容易化を実現しています。また、SWR1000は、自然循環を採用していることも大きな特徴です。従来の沸騰水型原子炉では、再循環ポンプを使って原子炉内を冷却水が循環していましたが、SWR1000では、原子炉内で発生する蒸気の力によって自然に冷却水が循環する仕組みになっています。これにより、ポンプの故障による事故リスクを低減することができます。さらに、SWR1000は、最新の安全技術を採用しており、地震や津波などの自然災害や、航空機衝突などの外部からの脅威に対しても高い安全性を確保しています。具体的には、原子炉建屋を二重の格納容器で覆うことで、放射性物質の外部への漏出を防止する設計となっています。SWR1000は、欧州で開発が進められている加圧水型原子炉であるEPR(European Pressurized Water Reactor)を補完する存在として期待されています。EPRは大型炉として、SWR1000は中小型炉として、それぞれの特性に合わせた電力供給に貢献することが期待されています。
原子力の安全

原子力発電の安全装置:トリップとは

原子力発電所は、莫大なエネルギーを生み出す一方で、ひとたび事故が起きれば甚大な被害をもたらす可能性も孕んでいます。そのため、安全確保は原子力発電において最優先事項であり、発電所には多層的な安全対策が講じられています。その中でも特に重要な安全装置の一つが「トリップ」と呼ばれる緊急停止システムです。 トリップは、原子炉やタービンなどの運転中に、例えば機器の故障や出力の異常上昇といった通常とは異なる状態を検知した場合に作動します。これは、原子炉内の核分裂反応を強制的に停止させ、安全な状態をいち早く確保するための、言わば緊急ブレーキと言えるでしょう。 トリップの作動は、人間の操作に比べてはるかに迅速であり、 milliseconds 単位で反応するよう設計されています。 トリップには、原子炉の出力を急激に下げる制御棒の挿入や、原子炉冷却材の緊急注入など、様々な安全装置が連動して作動する仕組みが採用されています。これらの安全装置は、それぞれが独立して機能するよう設計されており、仮に一部の装置が故障した場合でも、他の装置が確実に作動することで、原子炉の安全を確保します。トリップは、原子力発電所の安全性を支える最後の砦として、重要な役割を担っていると言えるでしょう。
原子力発電の基礎知識

原子力発電の未来:次世代原子炉とは?

原子力発電は、半世紀以上にわたり私たちの社会に電力を供給する重要な役割を担ってきました。長い歴史の中で、原子炉の技術は絶え間ない進化を遂げてきました。初期の原子炉は、主に電力供給を目的としていましたが、現代の原子炉は、安全性と効率性を飛躍的に向上させています。この進化は、技術革新への絶え間ない努力の賜物と言えるでしょう。そして今、原子力発電は新たな章を迎えようとしています。それは、次世代原子炉の時代です。次世代原子炉は、従来の原子炉と比較して、安全性、効率性、経済性、そして環境適合性において、さらに優れた性能を持つように設計されています。例えば、安全性については、自然の法則に基づいた受動的安全システムを採用することで、事故のリスクを大幅に低減することが可能となります。また、燃料の燃焼効率を高めることで、廃棄物の発生量を抑制し、資源の有効利用にも貢献します。さらに、次世代原子炉は、高温での運転が可能であるため、水素製造など、電力供給以外の用途への展開も期待されています。原子力発電は、高効率で安定的なエネルギー源として、私たちの社会にとって重要な役割を担っています。次世代原子炉の開発と実用化は、エネルギー問題の解決、地球温暖化対策、そして持続可能な社会の実現に向けて、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
核燃料

トリチウム:核融合の燃料

- トリチウムとは水素は私達の身の回りにありふれた元素ですが、その仲間であるトリチウムは、原子核の中に陽子1個と中性子2個を持つ特別な水素です。私達が普段目にする水素は原子核に陽子を1つだけ持ちますが、トリチウムは中性子を2つも余分に持っているため、その分だけ重くなります。そのため、トリチウムは三重水素とも呼ばれます。通常の元素記号では水素はHと表しますが、トリチウムは3HあるいはTと表記されます。このトリチウムは、放射線を出す性質を持つ放射性同位体として知られています。自然界では、トリチウムは宇宙から飛来する宇宙線と大気中の窒素や酸素が反応することでごく微量ですが生まれています。また、原子力発電所では原子炉の中でウランが核分裂する際に人工的にトリチウムが生成されます。原子力発電所では、使用済み燃料の再処理を行う際に、このトリチウムが環境中に放出されることがあります。
放射線について

放射線業務の基礎知識

- 放射線業務とは放射線業務とは、労働安全衛生法施行令別表第2や電離則2条3項で定められている、放射線を出す装置や放射性物質を取り扱う業務のことを指します。私たちの身近なところでは、病院で行われるレントゲン撮影が挙げられます。レントゲン撮影に用いられるエックス線装置は放射線を出す装置であり、その操作や検査は放射線業務にあたります。医療分野以外でも、工業分野で利用されるサイクロトロンやベータトロンといった、電気の力で粒子を加速させる装置なども放射線業務に該当します。これらの装置は、材料の分析や非破壊検査などに用いられ、私たちの生活を支えています。さらに、エックス線装置の一部であるエックス線管やケノトロンといった装置内のガスを抜いたり検査する作業も放射線業務に含まれます。また、医療機器や工業製品の一部に放射性物質が組み込まれている場合があり、これらの機器の取り扱いも放射線業務となります。原子力発電所における原子炉の運転や、原子力発電の燃料となるウラン鉱などの核原料物質を採掘する作業も、放射線業務に分類されます。このように、放射線業務は医療、工業、原子力など幅広い分野に及びます。これらの業務に従事する人々は、放射線が人体に与える影響を十分に理解し、法律で定められた安全対策を徹底することが重要です。
核燃料

トリチウム:核融合の未来を担う元素

- トリチウムとは?水素は、私たちの身の回りにもっとも多く存在する元素の一つです。水素の仲間であるトリチウムも、自然界にごくわずかに存在しています。では、このトリチウムとは一体どんな物質なのでしょうか。トリチウムは、水素の一種ですが、普通の水素とは原子核の構造が異なります。原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子からできています。さらに原子核は、陽子と中性子で構成されています。 水素の原子核は、陽子1つだけでできています。一方、トリチウムは、陽子1つに加えて、中性子を2つも含んでいます。このため、トリチウムは「三重水素」とも呼ばれます。トリチウムは、自然界では、宇宙線と大気の反応によってごく微量ですが生まれています。 また、原子力発電所などでは、原子炉の中でリチウムという元素に中性子をぶつけることで人工的に作られています。トリチウムは、弱いベータ線を出す放射性物質として知られていますが、その放射能は非常に弱く、紙一枚で遮ることができる程度です。また、トリチウムは水と容易に結合する性質があるため、環境中に放出された場合には、水蒸気として拡散したり、雨水に溶け込んだりして薄まります。
原子力施設

研究と応用を支えるトリガ炉

- トリガ炉とはトリガ炉は、TrainingResearchIsotopeProductionGeneralAtomicの頭文字をとったもので、アメリカ合衆国のGA社によって開発された原子力炉です。その名の通り、大学や研究機関において、原子力の基礎研究や学生の教育訓練、そして医療分野で利用される放射性同位元素の製造などを主な目的としています。トリガ炉最大の特徴は、炉心が円環状に配置され、その中心部に大きな実験孔が設けられている点です。従来型の原子炉と比較して、この特殊な構造には、いくつかの利点があります。まず、炉中心部の実験孔に試料を挿入することで、より強い中性子線を照射できるため、効率的に放射性同位元素を製造することができます。また、中性子線を効率的に利用できることから、材料の分析や放射線による影響を調べる研究にも適しています。さらに、トリガ炉は独自の安全機構を備えていることも大きな特徴です。万が一、炉出力が急上昇した場合でも、燃料自体が持つ特性によって自動的に出力が抑制されるため、炉心溶融などの重大事故につながるリスクが極めて低いと言われています。このように、トリガ炉は高い安全性と汎用性を兼ね備えた原子炉として、世界中の大学や研究機関で幅広く活用されています。
核燃料

未来のエネルギー: トリウムサイクルの可能性

- トリウムサイクルとはトリウムサイクルは、トリウム232という物質を原子炉で利用し、ウラン233という核燃料を生成しながらエネルギーを生み出すサイクルです。 トリウム232自体は核分裂を起こしませんが、中性子を吸収することでウラン233に変換されます。ウラン233は核分裂を起こしやすい性質を持つため、再び燃料として利用することができます。従来のウラン燃料サイクルでは、天然ウランに含まれる核分裂しやすいウラン235の割合は約1%に過ぎず、残りの大部分を占めるウラン238は核分裂を起こしにくいという課題がありました。一方、トリウムサイクルでは、トリウム232から生成されるウラン233を燃料として利用するため、天然に存在するトリウム資源をほぼ全てエネルギーに変換できる可能性を秘めています。また、トリウムサイクルは、核拡散の抑制や廃棄物の低減といった点でも注目されています。トリウムサイクルで生成されるプルトニウムの量は、ウラン燃料サイクルと比べて少なく、核兵器への転用リスクを低減できる可能性があります。さらに、トリウムサイクルで発生する廃棄物は、ウラン燃料サイクルと比べて放射能の強さが弱く、半減期が短いため、廃棄物処理の負担軽減も期待されています。このように、トリウムサイクルは、エネルギー問題の解決策として、また、より安全な原子力利用を実現する技術として、大きな期待が寄せられています。
原子力発電の基礎知識

原子炉の安全運転のカギ!過剰反応度とは?

原子炉は、ウランなどの核燃料が核分裂を起こすことで熱エネルギーを生み出す施設です。核分裂とは、ウランの原子核に中性子が衝突すると、ウラン原子核が分裂し、さらに複数の中性子を放出する現象です。このとき、莫大なエネルギーが熱として放出されます。 原子炉では、この核分裂反応を連鎖的に起こさせることで、熱エネルギーを継続的に取り出しています。 この核分裂の連鎖反応を制御するのが過剰反応度という概念です。過剰反応度は、原子炉内の中性子の増減を表す指標です。原子炉がどれくらい活発に反応を起こせるかを表しているとも言えます。 過剰反応度が大きすぎる場合、核分裂反応が過剰に起こり、原子炉内の温度が急上昇する可能性があります。逆に、過剰反応度が小さすぎる場合は、核分裂反応が持続せず、原子炉が停止してしまいます。 原子炉の設計者は、運転期間中を通して安定した運転を維持するために、必要な過剰反応度を計算し、適切な量の燃料を炉に装荷します。さらに、運転中は制御棒と呼ばれる中性子を吸収する材料を炉心に挿入したり、引き抜いたりすることで過剰反応度を調整し、原子炉内の中性子の数を制御しています。
原子力施設

原子力発電の心臓部:加圧水型炉の仕組み

原子力発電所の中心には、莫大なエネルギーを生み出す原子炉が存在します。原子炉にはいくつかの種類がありますが、世界中で最も多く採用されているのが加圧水型炉(PWR)です。PWRは、安全性と効率性を高水準で両立させた設計が特徴で、現在、日本で稼働している原子力発電所の多くがこのPWRを採用しています。 では、PWRは具体的にどのような仕組みで電力を生み出しているのでしょうか? PWRの内部では、まずウラン燃料が核分裂反応を起こし、膨大な熱エネルギーを発生させます。この熱エネルギーを利用して水を沸騰させ、高温高圧の水蒸気を作り出します。この水蒸気がタービンと呼ばれる巨大な羽根車を回転させることで発電機が動き、電気が生み出されるのです。火力発電と異なる点は、PWRでは水を高温高圧の状態に保つために、原子炉と蒸気発生器の間で水を循環させている点です。この循環により、放射性物質を含む水がタービンや発電機に直接触れることを防ぎ、安全性を高めています。 このように、PWRは高度な技術によって安全性を確保しながら、効率的に電力を生み出すことができる原子炉なのです。
原子力施設

加圧水型軽水炉:エネルギー源の主力

原子力発電は、ウランという物質が持つ巨大なエネルギーを利用して電気を起こす仕組みです。ウランの原子核は、中性子と呼ばれる小さな粒子がぶつかると分裂し、その際に莫大な熱エネルギーを放出します。この現象を核分裂と呼びます。原子力発電所では、この核分裂反応を人工的に制御しながら継続的に起こさせることで、膨大な熱エネルギーを得ています。 原子炉と呼ばれる巨大な施設の中で、ウラン燃料は燃料集合体として格納され、核分裂反応が制御されています。核分裂で発生した熱は、周囲の水を沸騰させて高温高圧の蒸気を発生させます。この蒸気の勢いは凄まじく、タービンと呼ばれる巨大な羽根車を回転させるのに十分な力を持っています。タービンは発電機と連結しており、タービンが回転することで発電機も回転し、電気が生み出されます。 火力発電も、燃料を燃やして熱を作り、蒸気でタービンを回して発電する点は同じです。しかし、原子力発電は、石炭や石油の代わりにウランを燃料とし、核分裂という全く異なる方法で熱を生み出す点が大きく異なります。火力発電と比べて、原子力発電は、同じ量の燃料から桁違いに多くのエネルギーを取り出せるという利点があります。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源の主力:加圧水型原子炉

- 加圧水型原子炉とは加圧水型原子炉(PWR)は、現在、世界中で最も広く利用されている原子炉形式の一つです。その名の通り、原子炉内で発生する熱を効率的に活用するために、水を高圧状態に保つという特徴があります。原子炉の中では、ウラン燃料の核分裂反応によって膨大な熱エネルギーが発生します。この熱を利用して水を沸騰させ、蒸気を作ります。この蒸気がタービンを回し、発電機を駆動することで電気が生み出されます。PWRでは、原子炉と蒸気発生器と呼ばれる装置がそれぞれ独立して設置されています。原子炉内で高圧に保たれた水は、放射性物質を含んだまま配管を通って蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器では、原子炉から運ばれてきた高温・高圧の水の熱が、二次側の水に伝わり蒸気を発生させます。この二次側の蒸気は放射性物質を含んでいないため、安全にタービンを回して発電することができます。PWRは、原子炉で発生した熱を直接タービンに送る沸騰水型原子炉(BWR)に比べて、構造が複雑で設備費用も高額になるという側面があります。しかし、放射性物質の管理が容易であるため、安全性が高いという大きなメリットがあります。世界中で稼働する原子力発電所の多くがPWRを採用しており、今後も原子力発電の主要な炉型として、重要な役割を担っていくと考えられています。
原子力施設

RIAR: ロシアの原子力研究の中心

- RIARとはRIARは、「ロシア連邦原子炉研究所」の略称であり、ロシアのディミトロフグラードに位置する原子力研究の中枢を担う機関です。1956年の設立以来、原子力技術の最前線において、基礎研究から応用技術開発、そして原子力発電の実用化に至るまで、幅広い分野において多大な貢献を果たしてきました。RIARは、多岐にわたる原子炉や実験設備を擁しており、世界でも有数の原子力研究施設として知られています。ここでは、原子炉の設計や開発、燃料や材料の研究、放射性廃棄物の処理・処分、放射線防護など、原子力技術に関するあらゆる分野の研究開発が行われています。RIARの研究成果は、ロシア国内の原子力発電所の安全性と効率性の向上に大きく貢献してきました。また、国際原子力機関(IAEA)などの国際機関とも積極的に協力し、世界中の原子力技術の発展にも貢献しています。近年では、次世代原子炉の開発や、原子力を医療や工業などの分野へ応用する研究にも力を入れています。RIARは、今後も世界トップレベルの原子力研究機関として、人類の平和と発展に貢献していくことが期待されています。
原子力施設

RBMK炉:旧ソ連の独自技術

- RBMK炉とは RBMK炉とは、「Reaktory Bolshoi Moshchnosti Kanalynye」のロシア語の頭文字をとった略称で、日本語では「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」という長い名前で呼ばれています。これは、旧ソ連が独自に開発した原子炉の形式で、西側諸国では英語の頭文字をとってLWGR(Light Water-cooled Graphite-moderated Reactor軽水冷却黒鉛減速炉)とも呼ばれています。 この原子炉の特徴は、燃料に濃縮度の低いウラン酸化物を使い、減速材に黒鉛、冷却材に軽水を用いている点です。原子炉の心臓部である炉心には、多数の圧力管が縦に設置されています。それぞれの圧力管の中に燃料集合体が挿入され、その中を冷却水が下から上に流れながら沸騰し、燃料から熱を奪い出す構造になっています。 RBMK炉は、当時のソ連が掲げていた「核兵器と発電の両立」という目標のもと、プルトニウム生産も可能な原子炉として開発されました。ウラン資源が豊富で、技術力の面でも制約の多かったソ連にとって、RBMK炉は当時の技術で実現可能な、数少ない選択肢だったと言えるでしょう。 しかし、RBMK炉は、その設計上の特性から、安全性の面でいくつかの欠陥を指摘されていました。実際に、1986年に旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所で起きた大事故は、RBMK炉の持つ構造的な問題点が露呈した結果と言われています。
原子力施設

独自技術が生んだ原子力発電:カナダ型重水炉

- カナダ型重水炉とはカナダ型重水炉は、その名の通りカナダで開発された原子力発電炉です。正式名称はCANDU炉と言い、これは「CANadian Deuterium Uranium(カナダ重水ウラン)」の頭文字を取ったものです。この原子炉は、現在世界で主流となっている軽水炉とは異なる設計思想に基づいており、独自の技術が使われています。最大の特徴は、天然ウランを燃料として使用できる点です。ウランには、核分裂しやすいウラン235と、そうでないウラン238が存在します。天然ウランにおけるウラン235の濃度はわずか0.7%程度ですが、カナダ型重水炉はこの濃度のまま燃料として使用できます。一方、軽水炉ではウラン235の濃度を3~5%程度にまで濃縮する必要があり、特別な施設とコストがかかります。さらに、カナダ型重水炉は運転中に燃料交換が可能という利点も持ち合わせています。軽水炉の場合、燃料交換を行うためには原子炉を停止しなければなりませんが、カナダ型重水炉は運転を続けながら燃料交換ができます。そのため、高い稼働率を維持することが可能です。しかし、カナダ型重水炉にも課題はあります。軽水炉に比べて大型になりやすく、建設コストが高額になりやすい点は、導入を検討する上で重要な要素となります。このように、カナダ型重水炉は独自の技術を用いることで、天然ウランの使用や運転中の燃料交換といった特徴を実現しています。世界的に見ると、カナダをはじめ、インドや韓国などで採用されている原子炉です。
原子力の安全

原子炉の安全: 自己制御性とは?

原子炉は、発電の要となる重要な設備ですが、その出力調整は、単に外部からの操作だけで行われているのではありません。原子炉の内部では、様々な物理現象が複雑に絡み合い、出力を安定させるための重要な役割を担っています。 原子炉の出力調整において、よく知られている外部からの操作としては、制御棒の挿入が挙げられます。制御棒は、中性子を吸収しやすい物質で作られており、炉心に挿入することで核分裂反応を抑制し、出力を低下させることができます。反対に、制御棒を引き抜くことで、核分裂反応は促進され、出力は上昇します。 しかし、原子炉の出力調整は、このような外部からの操作だけで成り立っているわけではありません。炉心内部では、核分裂反応によって生じる熱と、冷却材による熱の吸収が絶えず行われており、この熱バランスが、出力調整において重要な役割を果たします。例えば、原子炉の出力が増加すると、炉心内の温度が上昇し、これに伴って冷却材の温度も上昇します。温度が上昇すると、水分の密度が低下し、中性子の減速効果が減少するため、核分裂反応が抑制され、結果的に出力が安定化します。 このように、原子炉は、外部からの制御と、炉心内部の物理現象による自己制御の両方が組み合わさることで、安定かつ安全に運転されているのです。
原子力施設

発電のしくみ:動力炉の役割

- 動力炉エネルギー変換の中心原子力発電所の中核を担うのが動力炉です。原子力発電は、ウラン燃料の核分裂反応によって生み出される莫大な熱エネルギーを、電力に変換する仕組みです。この熱エネルギーを生み出す装置こそが動力炉であり、原子炉の中でも特に発電や船舶の推進など、動力源として利用されるものを指します。動力炉は、研究や実験を目的とする原子炉とは明確に区別されます。研究炉は、中性子線や放射性同位元素を生成するために利用される一方、動力炉は、いかに効率よく熱エネルギーを発生させ、電力を安定供給できるかという点に設計の重点が置かれています。動力炉の中には、核分裂反応を制御するための炉心、熱エネルギーを運び出す冷却材、そして核分裂反応の速度を調整する制御棒など、様々な装置が組み込まれています。これらの装置が複雑に連携することで、安全かつ安定的に熱エネルギーを生み出し続けることが可能となります。原子力発電は、化石燃料を使用しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。動力炉は、その原子力発電を支える心臓部として、未来のエネルギー供給を担う重要な役割を担っていると言えるでしょう。