グローバル化する技術者教育:ワシントン・アコードとは
1980年代後半に入ると、世界はグローバル化の波に大きく揺さぶられ、国境を越えた人の行き来が盛んになりました。特に、高度な専門知識や技術を持つ技術者の国際的な移動は、企業の国際展開や技術革新を加速させる上で重要な要素となっていました。
しかし、技術者の国境を越えた移動が活発化する一方で、大きな壁が立ちはだかりました。それは、国ごとに技術者教育の基準や求められる能力、そして資格認定制度が異なっていたことです。このため、ある国で優れた技術者として認められていても、別の国ではその資格や能力が十分に評価されないという事態が生じていました。
このような状況を打開し、技術者教育の質を国際的に保証することで、技術者の円滑な国際移動を促進しようという機運が高まりました。そして、1989年11月、関係国の技術者教育認定機関が集い、ワシントンD.C.において歴史的な合意が成立します。これが、技術者教育における国際的枠組みとして重要な役割を担うことになる「ワシントン・アコード」の誕生です。