原子力と物質移動
物質移動とは、物質が移動する現象を指しますが、ただ漫然と移動するのではなく、異なる状態にある物質が濃度の差によって自発的に移動することを言います。例えば、空気中に漂う香水の香りが部屋中に広がったり、コップに入れたインクが水に溶けて均一に広がる様子が挙げられます。
物質の状態は、気体、液体、固体の3つに大きく分けられ、物質移動はこれらの状態間、あるいは同じ状態間でも起こります。
私たちの身の回りには、物質移動の例が数多く存在します。例えば、洗濯物が乾く現象も、空気中の水蒸気濃度と、洗濯物に含まれる水分の濃度差によって、水分が移動している現象です。また、コーヒーに砂糖が溶け広がるのも、砂糖の濃度差によって起こる物質移動の一例です。
物質移動は、原子力発電においても重要な役割を担っています。原子炉内で核分裂反応によって生じた熱を、冷却水に伝える過程や、使用済み燃料から有用な物質を分離する過程など、様々な場面で物質移動の現象が利用されています。