天然バリア

原子力の安全

多重障壁:放射性廃棄物を安全に守る仕組み

- 放射性廃棄物と安全確保 原子力発電所では、発電に伴い、使用済み燃料など、放射線を出す物質(放射性物質)を含む廃棄物が発生します。これらの廃棄物は、放射線の強さや性質によって分類されます。特に、ウランの核分裂によって生じる物質など、放射能のレベルが極めて高いものは高レベル放射性廃棄物と呼ばれ、人体や環境への影響が大きいため、厳重な管理が必要です。 高レベル放射性廃棄物を安全に管理し、処分していくためには、「多重障壁」という考え方が重要になります。これは、放射性物質を人間や環境から隔離するために、複数の防護壁を設けるという考え方です。 まず第一の障壁として、高レベル放射性廃棄物はガラスと溶かし混ぜて固化体にし、ステンレス製の容器に封入されます。このガラス固化体は、放射性物質を閉じ込める役割を果たします。次に、この容器をさらに頑丈な金属製のオーバーパックで覆い、地下深くに建設された安定した岩盤の中に保管します。このオーバーパックは、長期間にわたって腐食や損傷から容器を保護する役割を担います。そして最後に、地下深部の安定した地層が、最終的な障壁として機能し、放射性物質が人間や環境に拡散することを防ぎます。 このように、多重障壁を設けることによって、高レベル放射性廃棄物を長期間にわたり安全に隔離し、人間や環境への影響を最小限に抑えることが可能となります。