密封線源

放射線について

放射線源の隠れた主役:密封線源

安全な放射線利用の担い手として、密封線源は欠かせない存在です。密封線源とは、放射性物質を頑丈な容器に閉じ込め、外部への漏洩を完全に防ぐ仕組みを持った線源です。 この容器は通常の使用状況を想定し、厳しい試験をクリアしたものであり、簡単には壊れることはありません。そのため、放射性物質が外部に漏れ出す心配はほとんどありません。 密封線源は、医療、工業、農業、研究など、様々な分野で利用されています。 例えば、医療分野では、がん治療に用いられる放射線治療装置に利用されています。工業分野では、製品の厚さや欠陥を検査する装置などに利用されています。 このように、密封線源は私たちの生活の様々な場面で、安全かつ効果的に利用されています。 放射線の安全性と有用性を両立させる技術として、今後ますます重要な役割を担っていくと考えられています。
放射線について

がん治療におけるRALS:遠隔操作で高精度な放射線治療

- 遠隔操作式後重点法治療装置(RALS)とは遠隔操作式後重点法治療装置(RALS)は、放射線を利用してがん細胞を死滅させる治療装置です。手術でがんを取り除く外科療法、抗がん剤を用いる化学療法と並んで、がん治療において重要な役割を担っています。従来の放射線治療では、体の外から放射線を照射するため、周囲の正常な細胞にも影響が及ぶ可能性がありました。しかし、RALSは放射線を出す小さな線源を細い管を通して体内の治療したい場所に直接挿入します。これにより、がん細胞を狙い撃ちするようにピンポイントに放射線を照射することが可能となり、周囲の正常な細胞への影響を最小限に抑えることができます。治療は、まず患者さんの体内にあらかじめアプリケーターと呼ばれる器具を留置します。その後、RALS本体から線源をアプリケーターを通して送り込み、がんに放射線を照射します。線源は治療が終わるとRALS本体に戻されるため、治療中以外は患者さんの体内に放射線が残り続けることはありません。RALSを用いた治療は、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がんなど、体の深部にできたがんの治療に特に有効とされています。また、従来の放射線治療に比べて治療期間が短く、入院期間の短縮も見込めます。
放射線について

放射性同位元素と私たちの生活

- 放射性同位元素とは?原子は物質を構成する基本的な粒子ですが、その中心には原子核が存在し、さらにその原子核は陽子と中性子で構成されています。陽子の数は元素の種類を決定づけるもので、これを原子番号と呼びます。一方、中性子の数は同じ元素でも異なる場合があります。この、陽子の数が同じで中性子の数が異なる原子を同位体と呼びます。 多くの同位体は安定していますが、中には原子核が不安定で、余分なエネルギーを放出して安定になろうとするものがあります。この不安定な原子核を持つ同位体を放射性同位元素と呼びます。放射性同位元素が安定な状態になるために放出するエネルギーは放射線と呼ばれ、α線、β線、γ線といった種類があります。 放射性同位元素は自然界にも存在し、ウランやラジウムなどが知られています。また、人工的に原子炉や加速器を用いて作り出すことも可能です。放射性同位元素は、その性質を利用して医療分野では診断や治療に、工業分野では非破壊検査や材料開発などに活用されています。
放射線について

放射線治療におけるアプリケータ:その役割と種類

多くの人にとって、「アプリケータ」と聞いても、塗り薬を思い浮かべるくらいかもしれません。しかし、放射線医学の世界では、全く異なる意味で使われています。ここでは、放射線を治療に用いる際に欠かせない「アプリケータ」について詳しく説明します。 放射線治療には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、体外から放射線を照射する「外部照射」です。もう一つは、体内に放射線源を留置して治療を行う「密封小線源治療」です。アプリケータは、この密封小線源治療において、放射性物質を封入し、患部に適用するために用いられる器具のことを指します。 密封小線源治療では、放射線源を病変にできるだけ近づけることで、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えながら、病変部に集中的に放射線を照射することができます。このような治療効果を最大限に引き出すために、アプリケータは重要な役割を担っています。 アプリケータの形状や材質は、治療する部位や方法によって異なります。例えば、子宮頸がんの治療に用いられるアプリケータは、膣内に挿入しやすい形状をしており、体内で動かないように工夫されています。また、近年では、治療計画に合わせて3Dプリンターで作成するなど、患者さんの体や病変に最適な形状のアプリケータを用いることで、より精密な治療が可能となっています。