廃液処理

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原子力発電の基礎知識:蒸発処理とは?

蒸発処理の概要 原子力発電所では、日々の運転や設備の保守点検などによって、様々な放射性廃棄物が発生します。中でも、放射性物質を含む水、いわゆる放射性廃液は、その量が多いため、適切な処理が求められます。蒸発処理は、この放射性廃液の量を減らし、保管や最終的な処分を容易にするための重要な技術の一つです。 蒸発処理は、簡単に言えば、大量の薄い濃度の放射性廃液を、巨大なやかんのような装置で煮詰める処理のことです。これにより、水は蒸気となって分離され、残った液体には放射性物質が濃縮されます。この蒸気は、放射性物質を含まない安全なものなので、大気中に放出されます。一方、残った濃縮された液体は、放射性廃棄物として、厳重に管理され、最終的には固化処理などを行い、安全な状態で処分されます。 蒸発処理は、放射性廃液の量を大幅に減らすことができるため、原子力発電所における廃棄物管理において重要な役割を担っています。また、比較的シンプルなプロセスであるため、安定して運転できるという利点もあります。
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原子力発電と凝集沈殿処理

凝集沈殿処理とは、水の中に溶け込まずに漂っている、目に見えないほど小さな粒子を大きくして、沈殿として取り除く水処理技術です。 この技術は、水道水の浄化や、家庭や工場から排出される汚れた水を綺麗にする下水処理場などで広く使われています。さらに、原子力発電所においても、放射性物質を含む廃液を浄化する過程で重要な役割を担っています。 凝集沈殿処理では、まず、処理対象の水に凝集剤と呼ばれる薬品を加えます。すると、水中の微細な粒子が互いにくっつきやすくなり、次第に大きな塊へと成長していきます。この大きな塊はフロックと呼ばれ、肉眼でも確認できるほどの大きさになります。 フロックが形成された水は、ゆっくりと時間をかけて静かに保たれます。この過程を沈殿といい、重いフロックは水の底に沈んでいきます。最後に、沈殿したフロックを含む汚泥と、上澄み液に分離することで、浄化された水を得ることができます。 凝集沈殿処理は、比較的シンプルな設備で運転できるため、コストを抑えられるという利点があります。また、薬品の種類や量を調整することで、様々な種類の廃液に対応できる柔軟性も備えています。
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原子力発電のドレン:その役割と処理

- ドレンとは原子力発電所には、巨大なタービンやポンプ、それらを繋ぐ無数の配管など、複雑な設備が数多く存在します。これらの設備は、原子炉で発生させた熱を利用して蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回し、電気を作り出すという重要な役割を担っています。この過程で、様々な機器や配管の中では、水や蒸気が絶えず循環しています。その際に、水に含まれる微量の不純物や、機器の腐食によって生じる物質などが混入することがあります。 これらの不要な水分や物質を、設備の外部に排出することを目的として、あらかじめ設けられた箇所から取り出される液体が「ドレン」です。ドレンは、原子炉容器、熱交換器、各種タンクなど、様々な場所から排出されます。例えば、原子炉で発生した蒸気を冷却して水に戻す復水器からは、冷却水に混入した不純物を含むドレンが発生します。また、タービンを回転させる蒸気からも、微量ながら不純物を含むドレンが発生します。ドレンは、発電所の運転状況や設備の状態を把握するための重要な指標となります。そのため、ドレンの排出量や成分は常に監視され、異常がないか確認されています。もし、ドレンの成分に異常が見つかった場合、それは機器の故障や腐食の兆候かもしれません。そのため、定期的にドレンを分析し、発電所の安全な運転を維持するために役立てられています。
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原子炉の安全を守る:格納容器サンプの役割

- 格納容器サンプとは原子力発電所の中心部には、巨大なドーム型の構造物である原子炉格納容器が存在します。この格納容器は、原子炉で万が一、放射性物質を含む水が漏れるような事態が発生した場合でも、その影響が外部に及ぶことを防ぐ、まさに最後の砦といえる重要な設備です。この格納容器の最下層には、「格納容器サンプ」と呼ばれるタンクが設置されています。このサンプは、原子炉格納容器内で発生する可能性のある、あらゆる水漏れを収集するために設けられています。原子炉の配管などから水が漏れた場合でも、このサンプに水が溜まることで、放射性物質が外部に拡散することを防ぎます。格納容器サンプに溜まった水は、放射性物質の有無を検査した後、浄化装置で処理されます。浄化された水は、再び原子炉の冷却水などとして再利用されます。このように、格納容器サンプは、原子炉の安全運転を維持する上で、非常に重要な役割を担っているのです。原子力発電所では、何重もの安全対策を講じることで、事故の可能性を極限まで低減しています。格納容器サンプもそうした安全対策の一つであり、原子力発電所の安全性を確保する上で、欠かせない設備と言えるでしょう。