
幻のウラン濃縮技術:拡散筒
- 拡散筒とは?拡散筒とは、過去にウラン濃縮の実用化を目指して研究開発が進められていた「熱拡散法」において、中心的な役割を担っていた装置です。名前の通り、筒状の形をしており、その内部にはウランの同位体であるウラン235とウラン238を含む六フッ化ウランの混合気体が封入されます。この拡散筒は、外部から加熱され、内部は冷却される構造になっています。これにより筒の上部と下部で大きな温度差が生じます。この温度差を利用して、ウラン235とウラン238の分離が行われます。具体的には、高温となった気体は密度が低くなるため筒の上部に移動し、低温の気体は密度が高くなるため下部に移動します。この時、わずかに軽いウラン235を含む気体は、重いウラン238を含む気体よりも多く上部に移動する傾向があります。拡散筒を多数連結し、このわずかな濃度差を連続的に生み出すことで、最終的にウラン235の濃度を高めることが可能となります。しかし、熱拡散法は多くのエネルギーを必要とするため、現在ではより効率的な遠心分離法に取って代わられています。