放射線検出

放射線について

鉄スクラップにも潜む危険!放射能探知システムとは?

私たちの身の回りにある金属製品は、携帯電話や自動車など、その形を変えながらリサイクルされています。不要になった金属は回収され、溶かされて再び製品の材料として生まれ変わる、まさに循環型社会を象徴するシステムです。しかし、このリサイクルの過程において、放射性物質の混入という見過ごせない問題が潜んでいます。 医療現場で使われるX線装置や、工業製品の一部には、その機能を維持するために放射性物質が使われているものがあります。これらの製品は、その使用目的を終えた後、適切に処理されずにスクラップとして回収されてしまうケースがあります。もし、放射性物質を含む製品がスクラップに混入してしまうと、リサイクルの過程で溶解炉に投入され、鉄筋や鉄板など、私たちの生活に身近な製品に生まれ変わってしまう可能性があります。 放射性物質を意図せず生活空間に取り込んでしまうことは、健康への影響が懸念されます。この問題を解決するためには、放射性物質を含む製品をスクラップに混入させない仕組み作りが重要です。例えば、製品に含まれる放射性物質の情報をデータベース化し、リサイクル業者がスクラップを分別する際にその情報を確認できるようにするなどの対策が考えられます。リサイクルは環境負荷を低減し資源を有効活用する上で非常に重要なプロセスですが、安全性を確保するためにも、放射性物質への対策は必要不可欠です。
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放射線計測系:原子力施設の安全を守る見えない盾

原子力施設や研究の現場では、人の目には見えない放射線を正確に捉え、安全を確保することが何よりも重要です。そのために「目」の役割を果たすものが放射線計測系と呼ばれるシステムです。放射線計測系は、原子力施設で働く人や周辺環境を守るために、放射線の種類や量を常に監視し、安全な範囲を超えないように制御する重要な役割を担っています。 放射線計測系は、大きく分けてエリアモニタリングとプロセスモニタリングの2つの役割を担います。エリアモニタリングは、原子力施設内の作業環境や周辺環境における放射線量を測定し、安全性を確認します。一方、プロセスモニタリングは、原子炉内の状態や放射性物質の処理状況を監視するために、配管やタンクなど、様々な場所に設置され、放射線の種類や量を測定します。 計測されたデータは、中央制御室に集められ、リアルタイムで監視されます。もしも、異常な値が検出された場合には、警報を発して、迅速な対応が取れるようになっています。このように放射線計測系は、原子力施設の安全運転と周辺環境の保全に欠かせないシステムといえるでしょう。
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原子力発電の基礎:同時計数回路

- 同時計数回路とは放射線を検出する装置である計数管は、様々な分野で利用されていますが、その応用範囲を大きく広げる技術の一つに、同時計数回路があります。これは、複数の計数管からの信号を同時に受け取った場合にのみ動作する特殊な回路です。計数管は、放射線が通過すると電気信号を発生させますが、この信号は自然界に存在するノイズや、目的外の放射線によっても発生することがあります。そのため、一つの計数管からの信号だけで判断すると、誤った測定結果を導き出す可能性があります。そこで、同時計数回路を用いることで、このような問題を解決することができます。二つ、あるいはそれ以上の計数管を接近させて配置し、それぞれの計数管からの信号が、ほぼ同時に回路に到達した時のみを有効な信号として計数する仕組みになっています。例えば、宇宙から飛来する非常にエネルギーの高い粒子である宇宙線を観測する場合を考えてみましょう。宇宙線は大気中の原子と衝突し、多数の粒子がシャワーのように地上に降り注ぎます。この時、隣接する複数の計数管がほぼ同時に反応した場合、それは宇宙線とその生成物が通過したことを示しており、ノイズやその他の放射線による誤検出の可能性を大幅に低減できます。このように、同時計数回路は、偶然に発生する可能性の低い、特定の事象だけを検出するのに役立ち、放射線の研究分野だけでなく、医療分野や工業分野など、様々な分野で応用されています。
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小さな傷跡から読み解く:固体飛跡検出器

私たちの世界は、目には見えないけれども、様々な放射線で満ちています。太陽からの光もその一つですし、宇宙から降り注ぐ宇宙線もまた、放射線の一種です。さらに、レントゲンやCTスキャンといった医療現場でも放射線は活用されています。これらの放射線の中には、私たちの体に害を及ぼすものもあれば、医療や工業の分野で大変役に立つものもあります。 放射線の種類や量を正確に測定することは、私たちの安全を守る上で非常に重要です。また、放射線を適切に利用するためにも、その性質を詳しく知る必要があります。そこで活躍するのが、まるで名探偵のように目に見えない放射線の痕跡を捉える「固体飛跡検出器」です。 固体飛跡検出器は、特殊な物質でできています。放射線がこの物質にぶつかると、ごく小さな傷跡が残ります。この傷跡は、例えるならば、雪の上に残された動物の足跡のようなものです。専門家は、この目に見えない傷跡を特殊な方法で観察し、分析することで、放射線の種類やエネルギー、飛んできた方向などを特定します。 このように、固体飛跡検出器は、目に見えない放射線を可視化し、私たちがその正体に迫ることを可能にする技術なのです。そして、この技術は、私たちの安全とより良い未来のために、様々な分野で応用され続けています。
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原子力発電の安全を守る中性子モニタ

原子力発電所では、原子炉内で起こる核分裂反応を監視し制御するために、中性子の数を正確に把握することが不可欠です。しかしながら、中性子は電気を帯びていないため、物質と相互作用を起こしにくく、直接検出することが非常に困難です。そこで、中性子と特定の物質との反応によって生じる別の粒子を検出することによって、間接的に中性子の存在を捉えるという方法が用いられています。 この方法を実現するために、中性子検出器には様々な種類が存在しますが、その一つに三フッ化ホウ素計数管と呼ばれるものがあります。これは、ホウ素10という物質が中性子を吸収すると、アルファ線と呼ばれるヘリウムの原子核を放出するという性質を利用したものです。アルファ線は電荷を持っているため、電気的な信号に変換することで容易に検出することができます。 具体的には、三フッ化ホウ素計数管は、内部に三フッ化ホウ素ガスを封入した円筒形の構造をしています。そして、中心軸には電圧がかけられた電極が設置されており、円筒の内壁は接地されています。中性子が計数管に入射すると、封入されたガス中のホウ素10と反応し、アルファ線が放出されます。このアルファ線は気体分子と衝突し、電離を引き起こします。発生した電子は電極に引き寄せられ、電気信号として検出されます。このようにして、検出された電気信号の数は、間接的に中性子の数に対応しているため、原子炉内の状態を把握することが可能となります。
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放射線をキャッチ!ガイガーカウンターの仕組み

- ガイガーカウンターとはガイガーカウンターは、私たち人間の目には見えない放射線を検出する装置です。1928年にハンス・ガイガーとヴァルター・ミュラーという二人の科学者によって開発されたことから、ガイガー・ミュラー計数管とも呼ばれ、現在では、より親しみやすい「ガイガーカウンター」という名前で広く知られています。では、ガイガーカウンターは一体どのようにして放射線を検出しているのでしょうか?それは、放射線が気体に電気を帯びさせる性質を利用しているのです。ガイガーカウンターの中心部には、薄い金属でできた筒が入っており、その中にはアルゴンなどの気体が封入されています。筒の中には電圧をかけられるようになっており、放射線が気体の中を通過すると、気体の原子が電離され、電流が流れます。この電流を検出することで、放射線が通過したことを確認できるのです。私たちの身の回りには、宇宙や大地など、自然から放射線が常に降り注いでいます。これは自然放射線と呼ばれ、通常は人体に影響を与えるレベルではありません。しかし、原子力発電所などの施設から漏れ出す人工的な放射線は、高いエネルギーを持つため人体に有害な影響を与える可能性があります。ガイガーカウンターは、このような放射線を検知し、目に見える形で教えてくれるため、放射線からの安全を守る上で重要な役割を担っているのです。
放射線について

放射線を見つけるGM計数管

- GM計数管とはGM計数管は、1928年にハンス・ガイガーとヴァルター・ミュラーによって開発されたことから、二人の名前をとってガイガー・ミュラー計数管とも呼ばれます。これは、目に見えない放射線を検出することができる画期的な装置です。GM計数管は、内部に気体を封入した円筒形の構造をしています。円筒の中心には電極となる金属線が張り巡らされており、外側の円筒と電極の間に高い電圧がかけられています。放射線が気体中に入ると、気体の分子と衝突しイオン化を引き起こします。イオン化によって生じた電子は、電圧によって加速され、さらに他の気体分子と衝突し、次々とイオン化を引き起こす連鎖反応が起きます。この現象を「電子なだれ」と呼びます。この電子なだれによって発生した大量の電子が電極に到達することで、微弱な電流が発生します。GM計数管はこの電流を検出することで、放射線を検知します。GM計数管は、構造が簡単で小型化しやすいという利点があり、放射線の測定器として広く普及しています。現在でも、医療分野、工業分野、研究機関など、様々な分野で使用されています。
放射線について

医療現場の立役者!イメージングプレートとは?

私たちが普段、目で見ている光は、電磁波と呼ばれる波の一種です。しかし、この世の中には、目には見えないけれど、同じ電磁波の仲間である光が存在します。それが、レントゲン撮影でおなじみのX線や、電子線、中性子線といったものです。これらの光は、目には見えないものの、物質を透過したり、散乱したりする性質を持っているため、医療や工業など、様々な分野で利用されています。 イメージングプレート(IP)は、これらの目に見えない光を捉え、写真のように記録することができる、特殊なフィルムのようなものです。IPは、まるで光を吸収して蓄えるスポンジのような構造をしていて、目に見えない光が当たると、そのエネルギーを吸収して、その情報を一時的に記憶します。そして、後からレーザー光を当てることで、記憶した情報を可視化し、画像として出力することができるのです。 従来のレントゲン写真では、銀塩フィルムというものが使われていましたが、IPは、銀塩フィルムよりも感度が高く、より鮮明な画像を得ることができるという利点があります。また、繰り返し使えるという点も、大きなメリットです。そのため、近年では、医療現場だけでなく、工業分野などでも広く利用されるようになってきています。
原子力の安全

原子炉の安全を守る!燃料破損検出装置

- 燃料破損検出装置とは原子力発電所では、ウラン燃料の核分裂反応を利用して熱エネルギーを作り出し、発電を行っています。ウラン燃料は、核分裂反応で発生する放射性物質が環境中に漏れるのを防ぐため、金属製の被覆管に封入されています。しかし、原子炉内の過酷な環境下では、運転中にわずかながら燃料が破損してしまうことがあります。このような破損燃料の存在を早期に発見し、適切な処置を講じるために、燃料破損検出装置が重要な役割を担っています。燃料破損検出装置は、原子炉から得られる様々な信号を分析することにより、燃料破損の兆候をいち早く捉えます。具体的には、原子炉冷却材中に含まれる放射性物質の量や種類を測定し、通常運転時とは異なるパターンを検出します。微量の燃料破損でも、冷却材中の放射性物質の量や比率に変化が現れるため、これを高感度なセンサーで検知するのです。燃料破損検出装置は、燃料破損の早期発見だけでなく、破損の規模や発生場所を推定する上でも役立ちます。これにより、原子炉の運転を安全に継続するか、あるいは停止して燃料を交換するかなど、適切な判断を下すことが可能となります。このように燃料破損検出装置は、原子炉の安全運転を維持し、私たちが安心して電気を使うことができるように、重要な役割を担っているのです。