放射線物理

放射線について

荷電粒子平衡:ミクロな世界のエネルギーバランス

- 荷電粒子平衡とは物質に強力なエネルギーを持つ放射線、つまり荷電粒子を照射すると、物質の中では様々な反応が起こります。荷電粒子平衡とは、物質の内部の極めて小さな領域において、荷電粒子が持つエネルギーの出入りが釣り合っている状態を指します。もう少し具体的に説明すると、物質中の微小な領域に、外から特定のエネルギーを持った荷電粒子が飛び込んできます。同時に、その領域からは、全く同じエネルギーを持った荷電粒子が外へと飛び出して行きます。荷電粒子平衡の状態では、飛び込んでくる荷電粒子の数と飛び出して行く荷電粒子の数は常に等しく、まるで、人の流れが絶え間なく続く駅の改札口で、入ってくる人と出て行く人の数が常に一定に保たれているようなイメージです。荷電粒子平衡は、放射線物理学において重要な概念の一つです。放射線治療において、体内における放射線のエネルギー付与や線量分布を正確に計算するために、この荷電粒子平衡の理解は欠かせません。荷電粒子平衡の状態を把握することで、より効果的で安全な放射線治療の実現に繋がると期待されています。
放射線について

放射線を見分ける: 半導体検出器の仕組み

- 半導体検出器とは半導体検出器とは、その名の通り半導体を用いて放射線を検出する装置のことです。普段、私たちが何気なく使用している携帯電話やパソコンにも、実はこの半導体が欠かせない役割を担っています。しかし、放射線検出器においては、ケイ素やゲルマニウムといった物質が主な材料となります。これらの物質は、普段は電気をほとんど通さない性質を持っています。ところが、放射線を浴びると、途端に電気を良く通すようになるという、非常に興味深い性質を秘めているのです。半導体検出器は、まさにこの性質を利用して、目に見えない放射線の量や種類を測定する役割を担っています。具体的には、放射線が半導体に入射すると、物質内の電子がエネルギーを受け取って自由電子となります。この自由電子の動きを電気信号として捉えることで、放射線を検出する仕組みです。半導体検出器は、従来の放射線検出器と比べて、感度やエネルギー分解能に優れているという利点があります。そのため、医療分野における画像診断や、原子力発電所における放射線管理、さらには宇宙観測といった最先端の科学分野に至るまで、幅広い分野で活躍しています。