放射線

原子力発電の基礎知識

原子力発電の基礎:除去断面積とは

原子力発電所では、ウランなどの核燃料が核分裂を起こすことで莫大なエネルギーを生み出します。この核分裂という現象を引き起こすのが中性子と呼ばれる小さな粒子です。中性子は原子炉の中を飛び回りながら他の原子核とぶつかり、その衝撃によって更に多くの核分裂を引き起こします。 原子炉内では、この中性子の動きを精密に制御することが非常に重要です。なぜなら、中性子の速度や運動方向によって核分裂の効率が大きく変わるからです。もし、中性子が原子炉内の物質に吸収されてしまったり、核分裂を起こせないような速度や方向に変化してしまったりすると、原子炉内の核分裂反応は持続しません。 このように、中性子が原子炉の構成物質と衝突することによって、そのエネルギーや進行方向が大きく変化し、核分裂に寄与しなくなる現象を除去反応と呼びます。除去反応には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、中性子が原子核に吸収されてしまう吸収反応です。もう一つは、中性子が原子核と衝突する際に、そのエネルギーや進行方向が大きく変化してしまう散乱反応です。特に、中性子のエネルギーが大きく損失してしまう散乱反応は、核分裂の効率を低下させるため、原子炉の設計において重要な考慮事項となります。 原子炉の設計者は、これらの除去反応を最小限に抑え、核分裂反応を効率的に維持するために、様々な工夫を凝らしています。具体的には、中性子のエネルギーを適切に調整するための減速材や、中性子を吸収しにくい材料を選んで原子炉を構成するなど、高度な技術が駆使されています。
放射線について

細胞を守る巧妙なしくみ:除去修復

私たちの体を作る設計図ともいえる遺伝情報は、DNAと呼ばれる物質に記録されています。DNAは、はしごをねじったような形をした非常に長い分子で、細胞の中心にある核の中に大切に保管されています。この設計図であるDNAは、細胞が分裂して新しい細胞を作る際に正確に複製されることで、親から子へと受け継がれていきます。 しかし、DNAは常に危険にさらされています。放射線や紫外線、細胞内の化学物質などによって、日々少しずつ損傷を受けているのです。このような損傷は、遺伝情報に異常を引き起こし、細胞のガン化や細胞死につながる可能性もあるため、決して無視することはできません。 そこで、細胞はDNAの損傷を修復するための巧妙な仕組みをいくつか備えています。例えば、損傷を受けたDNAの一部を切り取って修復する仕組みや、損傷した部分を元の状態に戻す仕組みなどです。これらの修復機構は、細胞の生存と正常な機能維持に不可欠です。修復機構が正常に働かなくなると、遺伝情報は損傷を受けやすくなり、細胞はガン化しやすくなってしまいます。 このように、私たちの細胞は、遺伝情報を守るために、様々な防御機構を進化させてきました。そのおかげで、私たちは健康な体を維持し、子孫へと遺伝情報を伝えることができるのです。