日本原子力研究開発機構

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東濃地科学センター:高レベル放射性廃棄物処分研究の最前線

高レベル放射性廃棄物、それは原子力発電に伴い発生する、非常に強い放射能を持つ廃棄物です。この廃棄物の処分は、原子力発電を利用する上で避けては通れない課題であり、将来世代に負の遺産を残さないためにも、安全かつ確実な処分方法が求められています。 その解決策として期待されているのが「地層処分」です。地層処分とは、地下深くの安定した岩盤中に、人工バリアと天然バリアの二重の防護で高レベル放射性廃棄物を閉じ込め、長期にわたって人間社会から隔離する処分方法です。 岐阜県土岐市にある東濃地科学センターは、この地層処分の研究を行う、日本原子力研究開発機構の施設です。地下数百メートルに及ぶ坑道を利用し、実際の環境に近い条件下で、地層の特性や人工バリアの性能評価など、様々な研究開発が進められています。 東濃地科学センターの研究活動は、地層処分の信頼性を高め、その安全性を科学的に証明するために不可欠です。ここでは、長年にわたる研究で蓄積されたデータや知見に基づき、地層処分技術の確立に向けて、日々、研究開発が進められています。
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日本の材料研究を支えるJMTR:50年の歴史と未来

- 材料試験炉JMTRとはJMTRはJapan Materials Testing Reactorの略称で、日本語では材料試験炉と呼ばれます。原子炉の開発には、過酷な環境に耐えられる特殊な材料が欠かせません。JMTRは、こうした原子炉で使用する材料の研究を行うための原子炉として、1965年から茨城県の大洗研究所で稼働しています。JMTRは、50MWという出力と毎秒4×10の18乗個という高密度の中性子束が特徴です。中性子とは、原子核を構成する粒子のひとつで、電気的に中性であるため、他の物質と反応しやすく、材料の性質を変化させる性質を持っています。原子炉の中では、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こす際に、大量の中性子が放出されます。JMTRでは、この高密度の中性子を利用して、原子炉で使用する材料や燃料が、実際に原子炉内で想定される高温・高放射線環境下で使用できるかどうかを調べるための試験を行っています。具体的には、材料に中性子を照射することで、強度や耐食性、寸法安定性などの変化を調べたり、燃料の安全性や性能を評価したりしています。これらの試験を通して、原子力発電の安全性や信頼性の向上に貢献しています。
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原子炉の安全を守る縁の下の力持ち:構造物強度確性試験装置

高速増殖炉は、従来の原子炉よりも多くの燃料を生成することができるため、次世代のエネルギー源として期待されています。しかし、高速増殖炉を実用化するためには、安全性の確保が何よりも重要となります。 原子炉は、非常に高い温度と圧力の下で運転されるため、その構成要素である機器や配管には、高い信頼性が求められます。特に、高速増殖炉では冷却材として液体ナトリウムを使用します。ナトリウムは水と激しく反応する性質を持つため、ナトリウムの温度変化が機器に与える影響を正確に把握し、予期せぬ反応や事故を未然に防ぐ対策が欠かせません。 具体的には、ナトリウムの温度、圧力、流量などを常時監視し、異常が発生した場合には、自動的に原子炉を停止させるシステムの開発が重要になります。また、万が一、ナトリウムが漏洩した場合でも、その影響を最小限に抑えることができるよう、格納容器の強度を高めるなどの対策も必要です。 高速増殖炉は、エネルギー問題の解決に貢献できる可能性を秘めた技術ですが、その実用化には、安全性に対する万全の対策を講じることが不可欠です。
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高温ガス炉HTTR:未来のエネルギー

- 高温ガス炉HTTRとは高温ガス炉HTTRは、「高温工学試験研究炉」(High Temperature Engineering Test Reactor)の略称で、茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構が保有する試験研究炉です。1991年に建設が始まり、1998年には原子炉内で核分裂反応が連鎖的に起きる状態、つまり初臨界を達成しました。HTTRは、黒鉛減速ヘリウム冷却型原子炉という形式を採用しています。これは、中性子の速度を減速する減速材に黒鉛を、炉心を冷却する冷却材にヘリウムガスを用いる原子炉のことです。熱出力は30MWで、これはおよそ10万世帯分の電力を供給できる能力に相当します。HTTRは、発電を主な目的とした原子炉ではありません。その代わりに、高温ガス炉の技術実証や、将来のエネルギー源となりうる水素製造など、様々な分野への応用を目指した研究開発に利用されています。具体的には、原子炉から発生する高温の熱を利用して水素を製造する技術の開発や、高温の熱を化学プラントなどに供給する高温熱供給システムの実証などが進められています。HTTRは、安全性が高く、燃料の有効利用や高温熱利用といった利点を持つことから、次世代の原子炉として期待されています。
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高温工学試験研究炉:未来のエネルギーを探る

茨城県大洗町には、未来のエネルギー源として期待される高温ガス炉の技術開発を目的とした高温工学試験研究炉があります。これは通称「HTTR」と呼ばれ、日本原子力研究所(現 日本原子力研究開発機構)によって建設されました。世界的に見ても他に類を見ない、先進的な原子炉です。 高温ガス炉は、従来の原子炉とは異なる特徴を持つ、革新的な原子炉です。ヘリウムガスを冷却材に利用し、約950℃という非常に高い温度で運転することができます。この高温により、従来の原子力発電よりも高い発電効率を実現できるだけでなく、水素製造などへの応用も期待されています。 HTTRは、この高温ガス炉の安全性や信頼性を実証するために建設されました。実際に、長年にわたる運転実績を通じて、高温ガス炉が安全で安定したエネルギー源となりうることを示してきました。さらに、HTTRで得られた貴重なデータは、将来の商用炉の設計や開発に活かされることになります。
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イオンビームが拓く未来

イオン照射研究施設(TIARA)は、群馬県高崎市にある日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所内に設置されている施設です。この施設は、1993年に設立され、イオンビームを用いた最先端の研究を行うことができる国内でも数少ない施設の一つです。TIARAという名前は、Takasaki Ion Accelerators for Advanced Radiation Applicationの頭文字をとったものです。 TIARAの最大の特徴は、幅広いエネルギー範囲のイオンビームを作り出すことができる点にあります。具体的には、数万電子ボルトから数億電子ボルトという広範囲のエネルギーのイオンビームを作り出すことが可能です。イオンビームは、物質を構成する原子よりも小さいイオンを加速して作り出したビームです。このイオンビームを物質に照射すると、物質の表面や内部に様々な変化を引き起こすことができます。 TIARAでは、このイオンビームの特性を利用して、材料科学、バイオ技術、宇宙科学など、幅広い分野の研究開発が行われています。例えば、材料科学の分野では、イオンビームを用いることで、新しい材料の開発や、既存の材料の性能向上などが期待されています。また、バイオ技術の分野では、イオンビームを用いることで、新しい品種の開発や、病気の治療法の開発などが期待されています。さらに、宇宙科学の分野では、イオンビームを用いることで、宇宙環境を模擬した実験などを行うことができます。 このように、TIARAは、幅広い分野の研究開発に貢献できる施設として、国内外から高い評価を受けています。
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「もんじゅ」:日本の高速増殖炉開発の道のり

「もんじゅ」は、日本のエネルギー問題解決の切り札として、「夢の原子炉」と期待を込めて呼ばれていました。従来の原子炉とは異なり、ウラン燃料をより効率的に活用できる高速増殖炉という技術を採用していました。高速増殖炉は、ウランを核分裂させてエネルギーを取り出すだけでなく、その過程で発生する中性子を吸収させてプルトニウムを生成します。生成されたプルトニウムは、再び燃料として使用することができるため、資源の有効利用に大きく貢献します。さらに、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用することで、核廃棄物の量を大幅に減らすことも期待されていました。このように、「もんじゅ」はエネルギーの自給率向上と環境負荷低減の両面から、日本の未来を担う夢の技術として、大きな注目を集めていたのです。