核融合

その他

ミューオン分子と核融合反応

ミューオン分子とは何かを理解するには、まずミューオンについて知る必要があります。ミューオンは、私たちの身の回りにも存在する、電気を帯びた極小の粒子です。物質を構成する基本的な要素である素粒子の一つで、電子と同じ仲間であるレプトンに分類されます。しかし、ミューオンは電子と比べて約200倍も重いという特徴があります。 このミューオンが、水素原子と結びつくことで、ミューオン分子が生まれます。水素は、原子核を構成する陽子1個と、その周りを回る電子1個からなる、最も単純な構造を持つ元素です。水素には、陽子に加えて中性子を含む重水素や三重水素といった仲間も存在します。これらの水素原子が作る分子、つまり水素分子や重水素分子、三重水素分子において、通常は電子が担っている役割をミューオンが担うことで、ミューオン分子は形成されます。 ミューオンは電子よりもはるかに重いため、ミューオン分子内の原子核同士の距離は、通常の分子に比べてはるかに近くなります。この特性は、核融合反応の効率に大きな影響を与えます。そのため、ミューオン分子は、核融合エネルギーの実現に向けて重要な役割を担う可能性を秘めているのです。
原子力発電の基礎知識

未来のエネルギー: ミューオン触媒核融合

近年、深刻化する地球温暖化や資源の枯渇といった問題を背景に、エネルギー問題は世界規模での課題となっています。その解決策として、太陽のエネルギーを生み出すメカニズムである核融合を地上で実現しようという研究が進められています。核融合発電は、従来の原子力発電とは異なり、高レベル放射性廃棄物が発生しないことや、燃料となる物質が海水中に豊富に存在することなどから、まさに「夢のエネルギー」として期待されています。 核融合反応を起こすためには、原子核同士が電気的な反発力に打ち勝って融合する必要があります。そのため、太陽の中心部のような超高温・高圧状態を作り出すことが不可欠と考えられてきました。しかし、近年注目されている「ミューオン触媒核融合」は、従来の方法とは全く異なるアプローチで核融合の実現を目指しています。 ミューオンは、電子の仲間である素粒子の一つですが、電子よりもはるかに重いという特徴があります。このミューオンを水素原子に作用させると、ミューオンは電子の約200倍も重いことから、原子核の周りを電子よりもはるかに近い軌道を回るようになります。すると、あたかも原子核同士の距離が縮まったような状態となり、従来の方法よりもはるかに低い温度で核融合反応を起こせる可能性が期待されています。 ミューオン触媒核融合は、まだ基礎研究の段階ですが、その革新的な可能性から世界中で研究が進められています。将来的には、より安全でクリーンなエネルギー源として、私たちの社会に貢献することが期待されています。
その他

常温核融合:夢のエネルギーは実現するのか?

近年、新たなエネルギー源として期待が高まっている核融合ですが、一体どのようなものなのでしょうか。核融合とは、軽い原子核同士が融合し、より重い原子核へと変化する反応のことを指します。この時、莫大なエネルギーが放出されることが知られており、私たちにとって身近な太陽も、この核融合によって膨大なエネルギーを生み出しています。 核融合反応を起こすためには、原子核同士が持つ電気的な反発力に打ち勝って融合する必要があります。そのため、超高温のプラズマを用いる高温核融合反応が現在主流となっています。この超高温プラズマは、原子核が自由に飛び回る状態を作り出すために必要不可欠です。核融合は、従来の原子力発電とは異なり、高レベル放射性廃棄物が発生するリスクが極めて低い点や、資源が豊富に存在する点など、多くの利点を持つエネルギー源として期待されています。しかし、実用化には、超高温プラズマの生成と制御など、技術的な課題も残されています。現在も世界中で研究開発が進められており、近い将来、核融合が私たちの社会に新たなエネルギーをもたらす日が来るかもしれません。
原子力発電の基礎知識

プラズマ閉じ込めの鍵!極小磁界とは

核融合発電は、未来のエネルギー源として期待されています。太陽の内部で起きている核融合反応を地上で再現し、膨大なエネルギーを取り出すという壮大な計画です。 しかし、核融合の実現には、1億度を超える超高温のプラズマを長時間安定して閉じ込めるという、極めて高いハードルが立ちはだかっています。プラズマは不安定な性質を持つため、容易に拡散してしまうからです。 そこで近年注目されているのが、「極小磁界」という概念です。これは、プラズマを閉じ込めるために使われる磁気ミラー型装置において、磁場の形状を工夫することでプラズマの不安定性を抑制するという画期的なアイデアです。 従来の磁気ミラー型装置では、プラズマを閉じ込めるために強い磁場を生成していましたが、プラズマは不安定になりがちでした。一方、極小磁界では、磁場の強さを中心部で最も弱くし、周辺部に向かって徐々に強くなるように設計します。この結果、プラズマはまるで谷底に集まるように、磁場の弱い中心部に安定して閉じ込められるのです。 極小磁界は、核融合発電の実現に向けて、大きな期待が寄せられています。将来的には、極小磁界を用いた核融合炉が、安全でクリーンなエネルギーを私たちにもたらしてくれるかもしれません。
その他

凝集系核科学:未来のエネルギーを探る

- 凝集系核科学とは物質は原子や分子が集まって構成されており、その集まり方によって気体・液体・固体の状態に変化します。 凝集系核科学とは、このうち固体や液体のように物質が密に集まった状態、すなわち凝集状態における原子核反応を研究する新しい学問分野です。 従来の核物理学では、原子核反応は主に真空中やプラズマのように原子がまばらに存在する環境で起こると考えられてきました。しかし近年、物質が凝集した状態では原子核同士の距離が非常に近くなるため、従来とは異なるメカニズムで原子核反応が起こる可能性が示唆され始めました。特に、水素を非常に多く吸収する性質を持つ金属(水素吸蔵金属)に注目が集まっています。 水素吸蔵金属には、パラジウムやチタンなどが挙げられます。これらの金属に大量の水素を吸蔵させると、金属内部で水素の原子核同士が極めて近距離で接触し、低いエネルギー状態でも核反応が起こる可能性があると考えられています。凝集系核科学は、新しいエネルギー源の開発や、元素合成の謎の解明など、様々な分野への応用が期待される最先端の研究分野です。
その他

プラズマを操るポロイダル磁場コイル

- 核融合エネルギー実現のための磁場閉じ込め 核融合エネルギーは、未来のエネルギー源として期待されています。太陽が莫大なエネルギーを生み出している原理である核融合反応を、地球上で人工的に実現しようという試みです。 しかし、核融合反応を起こすためには、太陽の中心部にも匹敵する超高温・高密度状態を作り出す必要があります。地球上でそのような極限状態を実現するために、物質を高温で電離した状態であるプラズマを、強力な磁場を用いて閉じ込める方法が研究されています。 磁場閉じ込め方式を採用した代表的な装置として、トカマクとステラレータが挙げられます。 トカマクは、ドーナツ型の真空容器内にプラズマを閉じ込める方式です。プラズマ自身が電流を流すことで磁場を発生させ、外部からコイルで磁場を加えることでプラズマを安定して閉じ込めます。一方、ステラレータは、複雑にねじれた形状のコイルを用いることで、外部磁場のみでプラズマを閉じ込める方式です。 現在、世界各国でトカマク型の装置を用いた研究が盛んに行われており、国際協力によって建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)は、核融合エネルギーの実現に向けた重要な一歩となることが期待されています。
核燃料

原子力の鍵!知られざる重水素の世界

私たちの周りにある水や有機物など、ありとあらゆるものを構成している元素といえば、水素です。水素はまさに生命の源と言えるでしょう。この水素には、少し変わった仲間がいます。それが、「重水素」です。 重水素は、水素の安定同位体の一つです。原子は、中心にある原子核とその周りを回る電子からできていますが、原子核を構成する陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子のことを同位体と呼びます。 水素の原子核は陽子1つだけですが、重水素の原子核は陽子1つと中性子1つからできています。そのため、重水素は水素よりも少しだけ重くなります。 自然界に存在する水素のほとんどは陽子1つだけからなるもので、重水素はごくわずかにしか存在しません。 海水の中にわずかに含まれているので、そこから分離・濃縮することで取り出すことができます。 重水素は、原子力発電や核融合反応など、様々な分野で利用されています。私たちの身近なところでは、医療分野で活躍しています。医薬品に重水素を組み込むと、薬の効果が長持ちしたり、副作用を抑えられたりすることが期待されています。 このように、重水素は水素の仲間でありながら、異なる性質を持つ元素です。私たちの生活を支えるために、様々な分野で活躍が期待されています。
原子力発電の基礎知識

重水素-重水素核融合:エネルギーの未来?

- 核融合の夢 人類は長年、エネルギー問題という大きな課題に直面してきました。石油や石炭などの化石燃料は、環境汚染や資源の枯渇といった問題を抱えています。そこで、夢のエネルギーとして期待されているのが核融合です。 核融合とは、軽い原子核同士が融合してより重い原子核になる反応のことです。この反応の際に、莫大なエネルギーが放出されます。太陽が輝き続けるのも、核融合によるものです。 核融合には、様々な種類の反応がありますが、特に重水素-重水素核融合反応は、その燃料となる重水素が海水中に豊富に存在することから、注目されています。重水素は、海水から比較的容易に取り出すことができ、資源としての制約がほとんどありません。 核融合発電が実現すれば、エネルギー問題の解決に大きく貢献することが期待されています。しかし、核融合反応を起こすためには、1億度を超える超高温・高密度状態を人工的に作り出す必要があり、技術的なハードルは非常に高いです。現在も、世界中で研究開発が進められており、早期の実現が待たれています。
原子力発電の基礎知識

原子力発電における重水の役割

私たちにとって欠かせない存在である水。実は、その水の中にごくわずかだけ含まれる「重水」と呼ばれる特別な水が、原子力発電で重要な役割を担っています。 私たちが普段目にしたり、触れたりしている水は、水素原子2個と酸素原子1個が結合してできた「H₂O」という分子でできています。しかし、重水の場合は、この水素原子の代わりに、「重水素」と呼ばれる、少し重い水素の仲間が使われているのです。 では、この重水素は普通の水素と何が違うのでしょうか? 原子の構造を見てみると、違いが分かります。原子の中心には原子核があり、その周りを電子が回っています。 水素の原子核は、陽子と呼ばれる粒子が1個だけですが、重水素の原子核は陽子に加えて中性子と呼ばれる粒子も1個持っています。この中性子が重水素を少し重くしている理由です。 このように、水素原子と重水素原子は、その原子核の構成が異なっています。そのため、重水は普通の水と比べてわずかに重くなり、密度や融点、沸点といった物理的な性質も少しだけ変わってくるのです。
その他

核融合を実現する熱源:ジュール加熱

太陽が輝き続けるエネルギーの源である核融合は、地球のエネルギー問題を解決する可能性を秘めた夢の技術として期待されています。核融合を起こすためには、燃料となる原子核同士が非常に高いエネルギーで衝突し、融合する必要があります。しかし、原子核はプラスの電気を帯びているため、互いに反発し合い、容易には近づけません。そこで、物質を非常に高い温度に加熱し、原子核と電子がバラバラになったプラズマ状態を作り出すことが重要となります。 プラズマは固体、液体、気体に続く物質の第4の状態であり、高温で原子核が自由に動き回る状態を指します。このプラズマ状態を実現し、維持するためには、様々な方法でプラズマを加熱する必要があります。 プラズマ加熱の方法の一つに、ジュール加熱があります。ジュール加熱は、プラズマに電流を流し、電気抵抗によってプラズマを加熱する方法です。電気抵抗とは、物質に電流を流した際に、電流の流れを妨げる性質のことです。ジュール加熱は、比較的シンプルな方法でプラズマを加熱できるため、広く利用されています。 核融合の実現には、プラズマを高温で長時間維持することが不可欠です。ジュール加熱以外にも、高周波加熱や中性粒子ビーム入射加熱など、様々な加熱方法が開発され、より効率的なプラズマ加熱を目指した研究が進められています。
原子力発電の基礎知識

プラズマ閉じ込めの要!トロイダル磁場コイル

核融合発電は、太陽がエネルギーを生み出す仕組みを地上で再現しようとする、夢のエネルギー源として期待されています。太陽の中心部では、超高温高圧の状態下で核融合反応が起こっています。地上で核融合反応を起こすためには、太陽と同様に超高温のプラズマ状態を作り出し、それを一定時間閉じ込めておく必要があります。 このプラズマ閉じ込めのために、様々な方法が研究されていますが、その中でも有力な方法の一つが、磁場を用いた閉じ込めです。トーラス磁場装置は、この磁場閉じ込めを実現する装置の一つです。トーラスとはドーナツ型のことで、トーラス磁場装置は、その名の通りドーナツ状の磁場を作り出すことによってプラズマを閉じ込めます。 では、どのようにしてこのドーナツ型の磁場を作り出すのでしょうか? その答えは、トーラス磁場装置に設置された、トロイダル磁場コイルと呼ばれる電磁石にあります。トロイダル磁場コイルに電流を流すと、電流の周りには磁場が発生します。この磁場の方向は、電流の向きに対して右ネジの法則に従います。つまり電流の向きに右ネジを回した時にネジが進む方向に磁場が発生します。 トーラス磁場装置では、ドーナツ状にトロイダル磁場コイルを配置し、電流を流すことで、ドーナツ型の磁場を作り出しているのです。そして、この強力な磁場によってプラズマを閉じ込め、核融合反応を起こそうとしているのです。
核燃料

トリチウム:核融合の燃料

- トリチウムとは水素は私達の身の回りにありふれた元素ですが、その仲間であるトリチウムは、原子核の中に陽子1個と中性子2個を持つ特別な水素です。私達が普段目にする水素は原子核に陽子を1つだけ持ちますが、トリチウムは中性子を2つも余分に持っているため、その分だけ重くなります。そのため、トリチウムは三重水素とも呼ばれます。通常の元素記号では水素はHと表しますが、トリチウムは3HあるいはTと表記されます。このトリチウムは、放射線を出す性質を持つ放射性同位体として知られています。自然界では、トリチウムは宇宙から飛来する宇宙線と大気中の窒素や酸素が反応することでごく微量ですが生まれています。また、原子力発電所では原子炉の中でウランが核分裂する際に人工的にトリチウムが生成されます。原子力発電所では、使用済み燃料の再処理を行う際に、このトリチウムが環境中に放出されることがあります。
核燃料

トリチウム:核融合の未来を担う元素

- トリチウムとは?水素は、私たちの身の回りにもっとも多く存在する元素の一つです。水素の仲間であるトリチウムも、自然界にごくわずかに存在しています。では、このトリチウムとは一体どんな物質なのでしょうか。トリチウムは、水素の一種ですが、普通の水素とは原子核の構造が異なります。原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子からできています。さらに原子核は、陽子と中性子で構成されています。 水素の原子核は、陽子1つだけでできています。一方、トリチウムは、陽子1つに加えて、中性子を2つも含んでいます。このため、トリチウムは「三重水素」とも呼ばれます。トリチウムは、自然界では、宇宙線と大気の反応によってごく微量ですが生まれています。 また、原子力発電所などでは、原子炉の中でリチウムという元素に中性子をぶつけることで人工的に作られています。トリチウムは、弱いベータ線を出す放射性物質として知られていますが、その放射能は非常に弱く、紙一枚で遮ることができる程度です。また、トリチウムは水と容易に結合する性質があるため、環境中に放出された場合には、水蒸気として拡散したり、雨水に溶け込んだりして薄まります。
その他

核融合の夢: 自己点火条件とは

- 核融合の火を灯す核融合とは、軽い原子核同士が超高温・超高圧状態で衝突し、より重い原子核へと変化する際に膨大なエネルギーを放出する反応です。この反応は、私たちの太陽をはじめとする恒星のエネルギー源となっています。人類にとって、核融合は夢のエネルギー源として長年研究されてきました。なぜなら、核融合は理論上、現在の原子力発電に比べてはるかに多くのエネルギーを生み出すことができ、しかも、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源となりうるからです。しかし、地球上で核融合反応を起こすことは容易ではありません。太陽の中心部では、とてつもない重力によって高温・高圧の状態が自然に作り出されています。しかし、地球上で同じような環境を作り出すには、太陽の中心部よりもさらに高温のプラズマ状態を人工的に作り出す必要があります。プラズマとは、物質が原子核と電子に分かれた状態のことで、核融合反応を起こすためには、このプラズマを1億度以上の超高温で閉じ込めておく必要があるのです。現在、世界中で様々な方法を用いて、核融合反応の実現に向けた研究開発が進められています。中でも、最も有力視されているのが、磁場閉じ込め方式と呼ばれる方法です。これは、強力な磁場を使ってプラズマを閉じ込める方法で、国際共同プロジェクトとして進められているITER(国際熱核融合実験炉)計画などが代表的な例です。核融合の実現には、まだまだ多くの課題が残されていますが、もし実現すれば、人類はエネルギー問題から解放され、より豊かな未来を手にすることができるでしょう。
原子力施設

未来のエネルギー源、トカマクとは?

- トカマクの語源 トカマクという言葉は、単なる名称ではなく、その構造と原理を巧みに表現した名前です。実はロシア語の「電流」「容器」「磁場」「コイル」の頭文字を組み合わせた造語なのです。 トカマクは、核融合反応を起こすために超高温のプラズマを閉じ込める必要があります。このプラズマ閉じ込めのために、トカマクは強力な磁場を使います。この磁場を作るのが、電流を流すコイルです。そして、プラズマはこの磁場によってドーナツ状の真空容器の中に閉じ込められます。 つまりトカマクは、「電流」を「コイル」に流し、「磁場」を発生させることで、プラズマを「容器」に閉じ込める装置ということになります。このように、トカマクという言葉は、その構造と原理を見事に表しているのです。
その他

未来のエネルギー源?磁気容器の仕組み

- 磁気容器とは磁気容器は、核融合反応によってエネルギーを生み出す核融合発電を実現するための重要な技術です。核融合反応を起こすためには、燃料となるプラズマを非常に高い温度で閉じ込める必要があります。その温度は太陽の中心部とほぼ同じ、1億度にも達します。磁気容器は、この超高温のプラズマを閉じ込めるための装置です。プラズマは電気を帯びた粒子の集まりであり、磁力によって動きを制御することができます。磁気容器は、強力な磁場を発生させる磁石を用いてプラズマを特定の場所に閉じ込め、外部に接触して冷却されることを防ぎます。磁気容器には、トカマク型、ヘリカル型、ステラレータ型など、様々な種類があります。それぞれの型で磁場を発生させる方法やプラズマの閉じ込め方が異なります。これらの多様な研究開発を通して、より効率的にプラズマを閉じ込め、核融合反応を安定して維持する技術の確立を目指しています。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの鍵、Q値とは?

物質を構成する小さな粒の一つに、原子核と呼ばれるものがあります。原子核は、陽子と中性子という、さらに小さな粒子がぎゅっと集まってできています。 この原子核が分裂したり、逆に合体したりする現象を原子核反応と呼びます。原子核反応は、私たちの身の回りにある様々なエネルギー源に利用されています。 原子核反応が起こると、反応の前後で質量にわずかな差が生じます。このわずかな質量の差が、莫大なエネルギーに変換されるのです。これは、かの有名な物理学者アインシュタインが提唱した、E=mc²という式で表されます。 この式は、エネルギーと質量が密接に関係していることを示しています。つまり、ほんのわずかな質量であっても、莫大なエネルギーに変換できることを意味しているのです。原子力発電は、この原子核反応の原理を利用し、質量をエネルギーに変換することで、膨大な電力を生み出しています。
原子力発電の基礎知識

未来を照らすエネルギー:重水素-重水素反応

人類は、いつまでも使い続けられるエネルギー源を求めて、長い年月をかけて様々な研究に取り組んできました。その中でも、太陽が莫大なエネルギーを生み出す源である核融合は、究極のエネルギー源として期待されています。 核融合とは、軽い原子核同士が融合して、より重い原子核になる際に膨大なエネルギーを放出する反応です。この反応は、原子力発電のようにウランなどの重い原子核を分裂させる反応とは異なり、放射性廃棄物を大量に排出することがありません。そのため、環境への負荷が小さく、安全性が高いエネルギー源として注目されています。 核融合エネルギーの実現には、太陽の中心部と同様の高温・高圧状態を作り出す必要があり、技術的な課題も多く残されています。しかし、核融合反応の制御に成功すれば、現在のエネルギー問題を根本的に解決できる可能性を秘めています。世界中の研究機関が協力して研究開発を進めており、近い将来、核融合発電が実用化されることが期待されています。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源としてのトーラス

- トーラスとはトーラスとは、輪っか状の形をした立体のことを指します。イメージとしては、ドーナツや浮き輪のような形を思い浮かべると分かりやすいでしょう。これらの物体は、中心に穴が開いていて、その周りを囲むように筒状の部分が存在しています。この、中心に穴が開いていて筒状になっている形こそが、トーラスの特徴です。数学的には、トーラスは「閉曲面」の一種として分類されます。閉曲面とは、簡単に言うと、切れ目や端がなく、どこまでも繋がっているような曲面のことです。トーラスの場合、その表面は滑らかで継ぎ目なく続いており、どこまでも触って追っていくことができます。また、トーラスは「円環体」とも呼ばれます。これは、円盤のような形をしたものを、ある軸を中心に回転させたときにできる立体と考えると理解しやすいかもしれません。例えば、円形の板を、その直径を軸として回転させると、トーラスの形が出来上がります。トーラスは、私たちの身の回りにも様々な形で存在しています。例えば、先ほども例に挙げたドーナツや浮き輪だけでなく、タイヤや自転車のチューブなどもトーラスの形をしています。また、建築物などにもトーラスの構造が用いられることがあります。このように、トーラスは私たちの生活において、身近でありながらも重要な役割を果たしている形と言えるでしょう。
原子力発電の基礎知識

未来のエネルギー: 慣性核融合

- 慣性核融合とは 慣性核融合は、未来のエネルギー問題解決の鍵として期待されている、重水素と三重水素の核融合反応を利用した発電方法です。この技術は、太陽が莫大なエネルギーを生み出すメカニズムと同様の原理に基づいており、「地上の太陽」とも呼ばれています。 太陽の中心部では、巨大な重力によって水素原子核同士が超高温、超高圧の状態に置かれ、融合してヘリウム原子核になることで莫大なエネルギーを生み出しています。慣性核融合は、この現象を人工的に再現しようとするものです。 具体的には、重水素と三重水素を封入した小さな燃料カプセルに、レーザーや粒子ビームを四方八方から照射します。すると、燃料カプセルは瞬間的に超高温、超高圧の状態となり、内部で核融合反応が起こります。この反応によって発生するエネルギーを取り出すことで、発電を行うことができます。 慣性核融合は、他の発電方法と比べて多くの利点を持っています。例えば、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであること、燃料となる重水素と三重水素は海水中に豊富に存在するため、資源的にほぼ無尽蔵であることなどが挙げられます。 現在、世界中で慣性核融合の実用化に向けた研究開発が精力的に進められています。実用化にはまだ多くの課題が残されていますが、21世紀後半の実用化を目指して研究が進展中です。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの単位:電子ボルト

- 電子ボルトとは電子ボルトは、原子や分子といった非常に小さな世界におけるエネルギーの大きさを表す単位です。記号は「eV」と表記されます。 私たちが日常生活でよく使うエネルギーの単位にジュール(J)がありますが、これは例えば100グラムの物を1メートル持ち上げるのに必要なエネルギーといった、比較的身近なスケールの大きさを表すのに適しています。一方、原子や電子の世界では、ジュールという単位ではあまりにも大きすぎて使いづらいのです。そこで登場するのが電子ボルトです。電子ボルトは、1つの電子が1ボルトの電圧で加速されたときに得るエネルギーと定義されています。電子は非常に小さな粒子なので、1ボルトの電圧で加速されても得られるエネルギーはごくわずかです。このごくわずかなエネルギーを1電子ボルト(1eV)と定めているため、電子ボルトは原子や分子といったミクロな世界のエネルギーを表すのに最適な単位と言えるのです。例えば、水素原子の電子を最もエネルギーの低い状態から引き離すのに必要なエネルギーは約13.6電子ボルトです。このように、電子ボルトを用いることで、原子や分子が持つエネルギーを分かりやすく表現することができます。
原子力発電の基礎知識

核融合炉の加熱装置:NBI

核融合反応は、軽い原子核同士が融合して重い原子核になる際に膨大なエネルギーを放出する現象です。太陽のエネルギー源としても知られており、未来のエネルギー源として期待されています。しかし、原子核はプラスの電荷を持っているため、近づくと反発し合う性質があります。核融合反応を起こすためには、この反発力に打ち勝って原子核同士を衝突させる必要があります。 そのためには、原子核を非常に高いエネルギー状態、つまり高温にする必要があります。具体的には、1億度を超えるような超高温状態が必要です。このような超高温状態を実現するためには、外部からエネルギーを加えて原子核を加熱する必要があります。 外部からの加熱方法はいくつかありますが、代表的なものとしては磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式があります。磁場閉じ込め方式は、強力な磁場を使ってプラズマを閉じ込め、加熱する方法です。一方、慣性閉じ込め方式は、レーザーや粒子ビームを使って燃料ペレットを爆縮し、高温高密度状態を作り出す方法です。 核融合反応を持続するためには、外部からの加熱を維持し続ける必要があります。これは、核融合反応で発生するエネルギーの一部が、常に周囲に逃げてしまうためです。核融合発電を実現するためには、外部からの加熱エネルギーよりも、核融合反応で発生するエネルギーが大きくなるような、効率的な加熱方法を開発することが課題となっています。
その他

プラズマの閉じ込めとボーム拡散

核融合発電は、太陽がエネルギーを生み出す仕組みを地上で再現し、未来のエネルギー源として期待されています。太陽の中心部では、水素のような軽い原子核同士が融合してヘリウムなどのより重い原子核へと変化し、膨大なエネルギーを放出しています。これを核融合反応と呼びます。核融合発電は、この核融合反応を人工的に起こすことでエネルギーを取り出すことを目指しています。 核融合反応を起こすためには、水素などの燃料を非常に高い温度まで加熱する必要があります。その温度はなんと一億度にも達し、この超高温状態では物質はプラズマと呼ばれる状態になります。プラズマとは、原子核と電子がバラバラになった状態を指します。しかし、一億度という超高温のプラズマを長時間維持することは容易ではありません。プラズマは非常に不安定で、すぐに冷えてしまったり、容器と接触してエネルギーを失ったりしてしまうためです。そこで、プラズマを効率的に閉じ込めておく技術が重要になります。 現在、プラズマを閉じ込める方法として、大きく分けて磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式の二つが研究されています。磁場閉じ込め方式は、強力な磁場を使ってプラズマを空中に浮かせるようにして閉じ込める方法です。一方、慣性閉じ込め方式は、レーザーなどの強力なエネルギービームを燃料に集中的に照射することで、超高温・高密度状態を作り出し、核融合反応を瞬間的に起こす方法です。 核融合発電は、資源が豊富で安全性が高く、環境への負荷も小さいという多くの利点を持つ夢のエネルギーです。実現には、プラズマの閉じ込め技術をはじめ、多くの技術的課題を克服する必要がありますが、世界中で研究開発が進められています。
その他

核融合炉への燃料供給:ペレット入射

核融合反応を起こすためには、まず燃料となる重水素と三重水素を非常に高い温度と圧力の状態にする必要があります。この状態のことを「プラズマ」と呼びます。プラズマ状態では、原子核同士が反発し合う力を超えて衝突し、融合反応が起こります。 しかし、このプラズマ状態を維持するのは容易ではありません。プラズマは非常に不安定で、すぐに冷えてしまったり、拡散してしまったりします。そこで、プラズマを閉じ込めておくために、強力な磁場を用いる方法が開発されました。これが「磁場閉じ込め方式」と呼ばれるものです。 磁場閉じ込め方式では、強力な磁場を使ってプラズマをドーナツ状に閉じ込めます。このドーナツ型の装置が「トカマク型」や「ヘリカル型」といった磁場閉じ込め核融合炉です。これらの炉は、プラズマを高温高密度に保ち、核融合反応を継続的に起こすことを目指しています。