EU拡大の礎となったニース条約
2000年代初頭、ヨーロッパ統合を掲げる欧州連合(EU)は、大きな変革期に直面していました。冷戦終結後、旧東側諸国を含む中東欧諸国が次々とEUへの加盟を希望し始めたのです。これは、EUにとって新たな発展の機会となる一方で、多くの課題も同時に突きつけました。
加盟国の増加は、これまで以上に多様な意見や利害を調整する必要性を生み出し、意思決定の遅延や非効率化を招きかねませんでした。また、EUの主要な政策決定機関である欧州委員会や欧州議会の規模が大きくなりすぎると、組織が複雑化し、運営が非効率になる懸念もありました。
これらの課題を解決し、円滑なEU拡大を実現するために、2003年に発効したのがニース条約です。この条約では、欧州議会の議席配分や投票方法の見直し、欧州委員会の委員数の削減、特定の政策分野における多数決の導入など、EUの意思決定プロセスを効率化するための様々な改革が盛り込まれました。これらの改革は、拡大後のEUが効率的かつ効果的に機能するために不可欠なものであり、ニース条約はEU拡大に向けた重要な一歩となったのです。