正常組織

放射線について

多分割照射:副作用を抑えつつ効果を高める放射線治療

- 多分割照射とは放射線治療は、がん細胞に放射線を照射して死滅させる治療法ですが、正常な細胞にも影響を与える可能性があります。そこで、治療の効果を高めつつ、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えるために、さまざまな照射方法が開発されてきました。その一つが多分割照射です。従来の一括照射では、必要な放射線量を一度に照射していました。これに対して多分割照射では、1回の照射量を少なくし、照射回数を増やすことで、総治療期間は従来とほぼ同じ期間を維持しながら、腫瘍に多くの線量を照射することが可能となります。具体的には、一括照射では数回で治療を終えていたところを、多分割照射では数週間から数ヶ月に渡って、毎日、あるいは週に数回、照射を行います。この方法の利点は、正常な細胞が放射線のダメージから回復する時間を与えながら、腫瘍細胞へダメージを蓄積できる点にあります。多分割照射では、総線量は一括照射と比較して10〜20%増加しますが、晩期障害と呼ばれる、治療後数年から数十年経ってから現れる副作用のリスクを低減できることが知られています。また、腫瘍によっては、従来の一括照射よりも、多分割照射の方が治療効果が高いという報告もあります。このように、多分割照射は、放射線治療における重要な技術の一つであり、がん患者にとってより安全で効果的な治療を提供するための重要な役割を担っています。