殺菌

放射線について

放射線殺菌:薬品や熱を使わない滅菌方法

- 放射線殺菌とは? 食品や医療現場で使用される器具などを安全に利用するため、製品に付着した細菌やウイルスなどの微生物を完全に取り除く、または数を減らす操作を「滅菌」や「殺菌」と呼びます。その方法の一つに「放射線殺菌」という技術があります。 放射線殺菌とは、文字通り、放射線の持つエネルギーを利用して製品を滅菌する方法です。 放射線には、物質を構成する原子をイオン化する力があります。細菌やウイルスなどに放射線を照射すると、その細胞内の遺伝子(DNAやRNA)が破壊され、増殖できなくなります。 このような放射線の性質を利用して、食品や医薬品、医療機器などを滅菌し、安全性を高めているのです。 放射線殺菌は、加熱や薬品を使用する従来の滅菌方法と比べて、いくつかの利点があります。例えば、常温に近い温度で行うことができるため、熱に弱い製品でも変質させることなく滅菌できます。また、ガスや薬品を使用しないため、環境への負荷が低く、残留ガスの心配もありません。そのため、熱に弱い医薬品やプラスチック製の医療器具など、従来の方法では滅菌が難しかった製品にも利用が広がっています。
放射線について

食品照射の指標となるD10値

近年、食品の安全性をより高めるための技術として、放射線を用いた方法が注目を集めています。食品に放射線を照射する、いわゆる放射線照射は、食品の衛生状態を向上させるための有効な手段として期待されています。 放射線は、物質を透過する力を持つエネルギーの高い波や粒子です。食品に放射線を照射すると、そのエネルギーが食品中の微生物、特に食中毒の原因となる細菌などのDNAに損傷を与えます。DNAは生物の設計図とも言える重要な物質であり、損傷を受けると、その修復が追いつかずに微生物は増殖できなくなったり、死滅したりします。 この放射線照射の効果は、D10値という指標で評価されます。D10値とは、特定の種類の微生物数を10分の1に減らすために必要な放射線の量を示すものです。D10値が小さいほど、少ない放射線量で効果が得られることを意味し、より効率的に微生物を減らすことができると言えます。 放射線照射は、従来の加熱処理などと比べて、食品の風味や栄養価への影響が少ないという利点もあります。そのため、将来的には、より安全な食品を提供するための技術として、放射線照射の利用がますます広がることが期待されています。