減速材温度係数

原子力の安全

原子炉の安全: 自己制御性とは?

原子炉は、発電の要となる重要な設備ですが、その出力調整は、単に外部からの操作だけで行われているのではありません。原子炉の内部では、様々な物理現象が複雑に絡み合い、出力を安定させるための重要な役割を担っています。 原子炉の出力調整において、よく知られている外部からの操作としては、制御棒の挿入が挙げられます。制御棒は、中性子を吸収しやすい物質で作られており、炉心に挿入することで核分裂反応を抑制し、出力を低下させることができます。反対に、制御棒を引き抜くことで、核分裂反応は促進され、出力は上昇します。 しかし、原子炉の出力調整は、このような外部からの操作だけで成り立っているわけではありません。炉心内部では、核分裂反応によって生じる熱と、冷却材による熱の吸収が絶えず行われており、この熱バランスが、出力調整において重要な役割を果たします。例えば、原子炉の出力が増加すると、炉心内の温度が上昇し、これに伴って冷却材の温度も上昇します。温度が上昇すると、水分の密度が低下し、中性子の減速効果が減少するため、核分裂反応が抑制され、結果的に出力が安定化します。 このように、原子炉は、外部からの制御と、炉心内部の物理現象による自己制御の両方が組み合わさることで、安定かつ安全に運転されているのです。