熱輸送

その他

未利用熱エネルギーの救世主?「トランスヒートコンテナシステム」

現代社会は、工場や発電所など、様々な施設から大量の熱を排出しています。この排熱は、貴重なエネルギー源として活用できる可能性を秘めている一方で、その有効活用には大きな課題が存在します。 特に、200℃以下の低い温度の排熱は、従来の方法では利用が難しく、多くが未利用のまま大気中に放出されています。 この低温排熱を有効活用するために、近年では、熱を他の場所や用途に移動させる「熱輸送」技術や、低温排熱でも発電可能な技術など、様々な技術開発が進められています。 例えば、熱輸送技術としては、工場から排出される熱を近隣の住宅地や商業施設に送って暖房に利用する取り組みなどが始まっています。 また、発電技術としては、沸点の低い物質を用いて低温排熱から電力を取り出すなど、従来の発電方法では利用できなかった熱エネルギーを活用する試みが行われています。 低温排熱の有効活用は、エネルギー効率の向上、二酸化炭素排出量の削減、新たな産業の創出など、多くのメリットをもたらすと期待されています。 しかしながら、これらの技術を普及させるには、コストの削減や、安全性・信頼性の向上など、克服すべき課題も少なくありません。 そのためには、企業、研究機関、行政などが連携し、技術開発を促進するとともに、導入を支援する体制を構築していくことが重要です。
原子力発電の基礎知識

原子力と物質移動

物質移動とは、物質が移動する現象を指しますが、ただ漫然と移動するのではなく、異なる状態にある物質が濃度の差によって自発的に移動することを言います。例えば、空気中に漂う香水の香りが部屋中に広がったり、コップに入れたインクが水に溶けて均一に広がる様子が挙げられます。 物質の状態は、気体、液体、固体の3つに大きく分けられ、物質移動はこれらの状態間、あるいは同じ状態間でも起こります。 私たちの身の回りには、物質移動の例が数多く存在します。例えば、洗濯物が乾く現象も、空気中の水蒸気濃度と、洗濯物に含まれる水分の濃度差によって、水分が移動している現象です。また、コーヒーに砂糖が溶け広がるのも、砂糖の濃度差によって起こる物質移動の一例です。 物質移動は、原子力発電においても重要な役割を担っています。原子炉内で核分裂反応によって生じた熱を、冷却水に伝える過程や、使用済み燃料から有用な物質を分離する過程など、様々な場面で物質移動の現象が利用されています。