
原子力発電の安全確保:MBRとは?
原子力発電は、発電時に二酸化炭素を排出しないという利点がある一方で、核物質が兵器やテロに利用される可能性も孕んでいます。そのため、国際社会は、原子力発電を行う国に対して、核物質が平和利用の目的にのみ使用されていることを証明することを求めています。この証明において中心的な役割を果たすのが物質収支報告、すなわちMBRです。
MBRとは、国内に存在するすべての核物質について、その種類や量、そして所在地などの情報を正確に記録し、国際原子力機関(IAEA)に報告する仕組みです。この報告には、ウランやプルトニウムといった核物質の採掘から、発電のための燃料の製造、使用済み燃料の保管に至るまで、すべての段階が含まれます。
IAEAは、提出されたMBRを詳細に分析し、核物質の数量に不一致がないか、また、申告されていない動きがないかを厳格に検査します。そして、すべての核物質が平和的な原子力活動の範囲内で適切に管理されているという確証が得られた場合に限り、国際社会は、その国の原子力発電が安全かつ平和的に運営されていると判断します。このように、MBRは、国際的な信頼を維持し、原子力発電を安全に推進していくために不可欠な制度と言えるでしょう。