
原子力と慢性リンパ性甲状腺炎
原子力発電所などで事故が起こると、私たちが大量の放射線を浴びてしまうことがあります。その結果、私たちの健康に様々な悪影響が生じることが知られていますが、これらの影響には、被曝してから数年から数十年経ってから現れるものがあります。こうした影響を晩発性影響と呼び、慢性リンパ性甲状腺炎はその代表的な病気の一つです。
慢性リンパ性甲状腺炎は、放射線被曝から数年経ってから、甲状腺に炎症が起こる病気です。放射線は細胞の遺伝子を傷つけるため、被曝した人の細胞では、長い年月を経て遺伝子の傷が蓄積していくことがあります。その結果、細胞の働きが変化し、本来起こるはずのない異常な細胞増殖を引き起こし、がんや慢性リンパ性甲状腺炎などの病気を発症すると考えられています。
晩発性影響は、被曝から時間が経ってから症状が現れるため、放射線の影響と気づかずに治療が遅れてしまうことがあります。また、放射線の影響は、生涯にわたって続く可能性があります。そのため、放射線被曝の影響を理解し、健康診断などを定期的に受けるなど、自身の健康に注意を払うことが重要です。