原子力発電の安全性:出力暴走とその対策
- 出力暴走とは原子力発電所では、ウラン燃料の核分裂反応を利用して熱を作り出し、その熱で水を沸騰させて蒸気を発生させます。この蒸気の力でタービンを回し、発電機を動かすことで電気を生み出しています。 この核分裂反応は、中性子と呼ばれる粒子がウランの原子核にぶつかると、ウランが分裂し、さらに中性子が飛び出すという連鎖反応によって起こります。この連鎖反応がどれくらい活発に起こるかを示す指標が実効増倍率です。 実効増倍率が1よりも大きい状態は臨界超過状態と呼ばれ、この状態では連鎖反応が活発になりすぎて、原子炉内の熱や圧力が急激に上昇する可能性があります。 反対に、1よりも小さい状態は臨界未満状態と呼ばれ、連鎖反応は次第に収束していきます。ちょうど1の状態は臨界状態と呼ばれ、原子炉の出力を一定に保つことができます。 通常運転時、原子炉は臨界状態もしくは臨界未満状態に保たれており、制御棒と呼ばれる中性子を吸収する物質を炉内に挿入したり、引抜いたりすることで、実効増倍率を調整し、出力を制御しています。 出力暴走とは、何らかの原因で実効増倍率が1を超え、臨界超過の状態となり、原子炉の出力が制御できないほど急激に増大してしまう現象のことを指します。 出力暴走は、炉心の損傷や放射性物質の放出に繋がりかねない、非常に危険な現象です。