
原子炉の安全を守る自然の力:自然循環
原子力発電所では、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こす際に膨大な熱エネルギーが発生します。この熱は原子炉の中に閉じ込められており、高温高圧の蒸気を作り出すために利用されます。この蒸気がタービンを回し、発電機を動かすことで電気が生み出されます。
原子炉で安全に発電を行うためには、発生した熱を適切に取り除き、原子炉内の温度を常に一定に保つことが重要です。この重要な役割を担うのが冷却材です。冷却材は原子炉内を循環し、核燃料から熱を吸収します。そして、その熱は蒸気発生器へと運ばれ、タービンを回すための蒸気を作り出すために使われます。
通常、冷却材の循環はポンプによって行われます。しかし、地震などの自然災害や事故により、ポンプが停止してしまうことも考えられます。このような事態に備えて、原子炉には自然循環と呼ばれる安全機構が備わっています。これは、ポンプの力に頼らずとも、冷却材が自然の法則に従って循環する仕組みです。
自然循環は、温められた冷却材は密度が低くなり上昇し、冷えた冷却材は密度が高く下降するという原理を利用しています。原子炉内で温められた冷却材は蒸気発生器へと上昇し、そこで熱を放出して冷やされます。そして、冷えた冷却材は再び原子炉へと下降し、再び熱を吸収します。このように、自然循環はポンプが停止した場合でも、冷却材を循環させ続け、原子炉を冷却し続けることができるのです。