
原子炉材料の安全性:遷移温度とは?
原子炉は、莫大なエネルギーを生み出すと同時に、ひとたび事故が起きれば深刻な被害をもたらす可能性を秘めています。そのため、原子炉の建設には、安全性を確保することが何よりも重要視されます。特に、原子炉の心臓部である燃料集合体を格納し、高温・高圧に耐える原子炉圧力容器には、過酷な環境下でも容易に破壊しない頑丈な材料が求められます。
原子炉圧力容器の材料は、大きく分けて「延性破壊」と「脆性破壊」という二つの破壊現象を示します。延性破壊は、材料に力が加えられ、ある程度変形した後に最終的に破壊に至る現象です。この破壊は、事前に変形などの兆候がはっきりと現れるため、比較的安全な破壊とされています。
一方、脆性破壊は、延性破壊のように大きな変形を伴わずに、突発的に破壊する現象です。脆性破壊は、事前に予兆を捉えることが難しいため、予期せぬタイミングで原子炉圧力容器の破壊に繋がり、深刻な事故を引き起こす可能性があります。原子炉の安全性を確保するためには、材料の脆性破壊を抑制し、延性破壊を促すことが非常に重要となります。