電子対生成

放射線について

電子対生成:エネルギーから物質への変換

エネルギーと物質は、切っても切り離せない関係にあります。特に原子力の分野においては、その相互作用が顕著に現れます。その中でも、電子対生成は、まるでSF小説の世界のような現象と言えるでしょう。 原子番号の高い原子核の近傍で、高いエネルギーを持った光子、すなわちガンマ線が物質と衝突すると、驚くべきことが起こります。エネルギーが物質へと転換し、電子とその反粒子である陽電子が、文字通り何もない空間から対になって生成されるのです。 この現象を理解するには、アインシュタインが提唱した特殊相対性理論とエネルギーと質量の等価性を表す有名な式 -E=mc²- が欠かせません。高いエネルギーを持つガンマ線は、そのエネルギーを質量に変換し、電子と陽電子を作り出すための材料とするのです。 電子対生成は、宇宙線が大気中の原子と衝突する際など、自然界でも観測されますが、原子力発電や医療分野でも利用されています。例えば、陽電子断層撮影法(PET)は、この現象を利用して体内の様子を画像化する技術です。 このように、電子対生成は、エネルギーと物質の相互作用が織りなす、摩訶不思議で奥深い現象の一つと言えるでしょう。
放射線について

電子対生成:エネルギーから物質へ

- ガンマ線と物質の相互作用原子力発電所や病院、工場など、様々な場所で活躍するガンマ線。目には見えないものの、物質を透過する能力が非常に高いことで知られています。しかし、ガンマ線といえども物質の中を通り抜ける際に、そのエネルギーは徐々に弱まっていきます。これは、ガンマ線が物質と相互作用を起こすためです。ガンマ線が物質とどのように関わり合うのか、そのメカニズムには、光電効果やコンプトン効果など、いくつか種類があります。今回は、その中でも「電子対生成」と呼ばれる現象について詳しく見ていきましょう。電子対生成とは、エネルギーの高いガンマ線が原子核の近くを通過する際、そのエネルギーが電子と陽電子という、互いに反対の電荷を持つ粒子ペアに変換される現象です。まるで、エネルギーという名の種から、電子と陽電子という双子の粒子が芽吹くように生成されます。この現象が起こるには、ガンマ線のエネルギーが少なくとも電子と陽電子の質量エネルギーの和(約1.02 MeV)以上である必要があります。エネルギーが足りない場合は、電子対生成は起こりません。電子対生成が起こると、物質はガンマ線のエネルギーを受け取り、電子と陽電子が新たに生み出されます。生まれた電子と陽電子は、物質の中で様々な反応を引き起こし、最終的には周囲の原子と結合したり、消滅したりして、その姿を消していきます。このように、ガンマ線は物質と相互作用することで、自身のエネルギーを失いながら進んでいきます。この性質を利用することで、私たちはガンマ線を様々な分野で安全かつ有効に利用することができるのです。