電子線

放射線について

放射線による変化:照射とは?

- 照射の概要物質に放射線を当てることを「照射」と言います。これは、太陽の光を浴びることに似ていますが、照射に用いられる放射線は、太陽光よりも遥かに高いエネルギーを持っている場合があります。物質は、原子と呼ばれるごく小さな粒子が集まってできています。そして、原子は中心にある原子核とその周りを回る電子から構成されています。照射はこの原子核や電子に直接作用し、物質の状態を変化させます。高いエネルギーを持った放射線が物質に照射されると、原子はエネルギーを受け取って不安定な状態になることがあります。これを「励起状態」と呼びます。励起状態になった原子は、エネルギーを放出して元の安定した状態に戻ろうとします。この時、光や熱、あるいは別の放射線などを放出します。このように、照射は物質に様々な変化をもたらす可能性を秘めています。例えば、物質の強度を高めたり、新しい性質を付与したり、殺菌や医療など様々な分野で応用されています。
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放射線利用:生活を支える見えない力

- 放射線利用とは放射線と聞くと、人体に有害なイメージを持つ方も多いかもしれません。確かに、高線量の放射線は人体に悪影響を及ぼしますが、適切な管理と防護のもとで使用すれば、私たちの生活に大きく貢献する技術となります。これを放射線利用と呼びます。放射線利用とは、放射線が物質に当たると透過・散乱・吸収などの反応を示す性質や、放射性物質が時間の経過とともに別の物質に変化する性質を利用し、医療、工業、農業など、様々な分野で役立てる技術です。放射線利用の一例として、医療分野ではレントゲン撮影が挙げられます。レントゲン撮影では、放射線の一種であるエックス線を人体に照射し、その透過の度合いの差を利用して骨や臓器の画像を映し出します。これにより、骨折や腫瘍などの診断に役立てることができます。工業分野では、製品の内部の傷や欠陥を検査するために利用されます。また、食品分野では、食品に照射することで殺菌を行い、食中毒のリスクを低減したり、保存期間を延長したりする技術に利用されています。このように、放射線利用は私たちの生活の様々な場面で役立っています。放射線は正しく理解し、適切に利用することで、より安全で豊かな社会の実現に貢献できるのです。
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放射線殺菌:薬品や熱を使わない滅菌方法

- 放射線殺菌とは? 食品や医療現場で使用される器具などを安全に利用するため、製品に付着した細菌やウイルスなどの微生物を完全に取り除く、または数を減らす操作を「滅菌」や「殺菌」と呼びます。その方法の一つに「放射線殺菌」という技術があります。 放射線殺菌とは、文字通り、放射線の持つエネルギーを利用して製品を滅菌する方法です。 放射線には、物質を構成する原子をイオン化する力があります。細菌やウイルスなどに放射線を照射すると、その細胞内の遺伝子(DNAやRNA)が破壊され、増殖できなくなります。 このような放射線の性質を利用して、食品や医薬品、医療機器などを滅菌し、安全性を高めているのです。 放射線殺菌は、加熱や薬品を使用する従来の滅菌方法と比べて、いくつかの利点があります。例えば、常温に近い温度で行うことができるため、熱に弱い製品でも変質させることなく滅菌できます。また、ガスや薬品を使用しないため、環境への負荷が低く、残留ガスの心配もありません。そのため、熱に弱い医薬品やプラスチック製の医療器具など、従来の方法では滅菌が難しかった製品にも利用が広がっています。
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電子線硬化:未来を照らすクリーンな技術

- 硬化とは何か硬化とは、物質がその状態を変化させ、固体になる現象のことを指します。特にプラスチックや樹脂などの分野において、この言葉は頻繁に用いられます。例えば、液体の状態であるエポキシ樹脂やアクリル樹脂に硬化剤と呼ばれる物質を混ぜると、化学反応によって液体から固体へと変化します。この固体への変化を硬化と呼びます。硬化は、物質内部で起こる分子の結合の変化によって起こります。 液体状態では自由に動き回っていた分子が、硬化剤の作用によって互いに結びつき、網目状の構造を形成することで、物質は固体へと変化します。 この網目構造が密になるほど、物質はより硬くなります。硬化は、製品に最終的な形を与えるだけでなく、強度や耐久性を向上させる上でも重要な役割を担っています。 例えば、スマートフォンに使われているプラスチック部品や、飛行機の機体に使われている炭素繊維強化プラスチックなどは、硬化というプロセスを経て、必要な強度と耐久性を得ています。このように、硬化は様々な分野で利用されている重要な現象と言えるでしょう。
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原子力の基本:ベータ線とは?

原子力の仕組みを理解する上で、放射線に関する知識は基礎となります。放射線には、アルファ線、ガンマ線など、いくつか種類がありますが、その中でも重要なもののひとつにベータ線があります。 原子の中心にある原子核は、不安定な状態になると、より安定した状態になろうとして、放射線を放出します。これを放射性崩壊と呼びます。ベータ線は、この放射性崩壊に伴って放出される電子の流れのことを指します。 ベータ線には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、原子核内の中性子が陽子に変化する際に放出されるβ(−)粒子で、もう一つは陽子が中性子に変化する際に放出されるβ(+)粒子です。私たちが普段「ベータ線」と呼んでいるのは、ほとんどの場合、前者のβ(−)粒子を指します。
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開創照射:がん治療における新たな選択肢

- 開創照射とは開創照射とは、外科手術の最中に、がん病巣に対して集中的に放射線を照射する治療法です。一般的に「術中照射」とも呼ばれ、近年、がん治療の新たな選択肢として注目されています。従来の放射線治療では、体の外から病巣に向けて放射線を照射するため、どうしても周囲の正常な組織にも影響が及んでしまう可能性がありました。しかし、開創照射では、手術で患部を切開した状態で、腫瘍に直接照射筒を挿入します。これにより、ピンポイントで放射線を照射することができるため、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えつつ、高い治療効果を期待することができます。開創照射は、特に進行したがんや、手術で取り切ることが難しい場所にできたがんに対して有効と考えられています。また、従来の放射線治療と比較して、治療期間が短縮されることも大きなメリットです。開創照射は、まだ新しい治療法であり、保険適用外の医療機関もあるため、治療を受ける際には事前に医療機関に相談する必要があります。