霧箱

放射線について

目に見えない放射線を見る

放射線は、光のように目に見えるものでも、においを感じ取れるものでもありません。そのため、私たちの五感で直接感じることはできません。しかし、放射線は物質を通過する際に、その存在を示す痕跡を残すことがあります。これを飛跡事象と呼びます。 飛跡事象は、飛行機雲のように、放射線が通過した道筋を目に見える形で記録してくれる現象です。放射線が物質中を通過すると、そのエネルギーによって物質を構成する原子に影響を与え、原子をイオン化したり励起したりします。この際に発生するイオンや励起状態の原子は、その後、光を放出したり、化学反応を起こしたりすることで、目に見える変化として現れます。 飛跡事象を観察するために用いられる装置として、霧箱や泡箱などが挙げられます。霧箱は、過飽和状態にした気体中に放射線を入射することで、放射線の飛跡に沿って霧を発生させる装置です。一方、泡箱は、過熱状態にした液体中に放射線を入射することで、放射線の飛跡に沿って気泡を発生させる装置です。 これらの装置を用いることで、目に見えない放射線の軌跡を視覚的に捉え、その種類やエネルギーを調べることが可能になります。飛跡事象は、放射線の研究や教育において重要な役割を果たしており、放射線の性質を理解する上で欠かせない現象と言えるでしょう。
放射線について

霧箱:目に見えない放射線を見る

- 霧箱目に見えない放射線の軌跡を捉える霧箱は、普段目にすることのない放射線の通り道を、飛行機雲のようにくっきりと浮かび上がらせることができる、 ingenious な装置です。一体どのようにして、目に見えないはずの放射線の軌跡を見ることができるのでしょうか?その秘密は、空気中に含まれる水蒸気の状態変化にあります。空気は、温度によって保持できる水蒸気の量が決まっており、限界まで含んだ状態を「飽和状態」と呼びます。飽和状態を超えて水蒸気が存在する状態を「過飽和状態」と言いますが、この状態は非常に不安定です。わずかな刺激が加わると、余分な水蒸気は一気に水滴へと変化します。霧箱はこの現象を利用しています。霧箱内は、過飽和状態になったアルコール蒸気で満たされています。そこに放射線が飛び込むと、そのエネルギーによってアルコール分子が電離され、周りのアルコール蒸気を凝縮させる核となります。すると、放射線が通過した道筋に沿って、まるで飛行機雲のようにアルコールの微小な水滴の軌跡が浮かび上がるのです。霧箱は、放射線の種類によって異なる軌跡の形を見ることができるのも興味深い点です。例えば、アルファ線は太く短い軌跡を、ベータ線は細く曲がりくねった軌跡を描くため、それぞれの放射線の特性を視覚的に理解することができます。