高分子

放射線について

物質の性質を操る架橋の力

- 架橋とは物質には、たくさんの小さな分子が鎖のように長くつながってできているものがあります。 この鎖のことを高分子鎖と呼びますが、架橋とは、この高分子鎖同士が新たに化学結合で結びつく現象を指します。身近な例として、ゴムを思い浮かべてみましょう。 ゴムの原料である天然ゴムは、弾力性が低く、変形しやすく、実用性に乏しい物質です。 しかし、ここに硫黄を加えて加熱すると、私たちがよく知る弾力性のあるゴムへと変化します。この変化の鍵となるのが、まさに架橋です。 加熱によって硫黄の原子が活性化し、ゴムの分子鎖の間に入り込んで橋渡しをするように結合します。 すると、ゴムの分子鎖は網目状の構造を形成し、強度や弾性が増し、元の形状を保つ力が強くなるのです。 このように、硫黄を加えてゴムに架橋構造を形成させることを「加硫」と呼びます。架橋は、ゴム以外にもプラスチックや塗料など、様々な物質の性質を変化させるために利用されています。 架橋によって物質の強度や弾性、耐熱性などを向上させることができるため、工業的に非常に重要な技術となっています。
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植物の鍵、リグニン:エネルギー源としての可能性

木は、私たちの生活に欠かせない存在です。家屋の柱や梁、家具、紙など、様々なものに形を変えて、私たちの暮らしを支えています。木の主成分はセルロースですが、実は、セルロースに次いで多く含まれる「リグニン」という物質も、木の重要な役割を担っています。 リグニンは、細胞と細胞の間を接着する、言わば「木質の接着剤」です。コンクリートの建物をイメージすると分かりやすいでしょう。鉄筋がセルロースだとすると、リグニンは鉄筋と鉄筋を結び付けるコンクリートの役割を果たします。リグニンがあるおかげで、木は高い強度と硬さを持ち、風や雨に耐え、私たちの家を守ることができるのです。 さらに、リグニンは、木の腐敗を防ぐ役割も担っています。細菌や菌類などの微生物は、木材を分解して栄養を得ようとしますが、リグニンはこれらの微生物の侵入を防ぎ、木の寿命を延ばします。木の成長には長い年月がかかりますが、リグニンによって長持ちするおかげで、私たちは貴重な木材資源を有効に活用することができるのです。 このように、リグニンは、木材の強度と耐久性を支える、まさに「陰の立役者」と言えるでしょう。
その他

素材に新たな機能を!グラフト重合とは

- グラフト重合とは グラフト重合とは、既存の高分子鎖に、まるで植物に枝を接ぎ木するように、異なる種類の高分子鎖を結合させる手法です。身近な例では、繊維やプラスチックなどの高分子材料に、このグラフト重合を用いることで、さらに優れた特性を持たせることができます。 私たちが普段使用している繊維やプラスチックなどの高分子材料は、そのままでは、撥水性や耐熱性などが十分ではない場合があります。しかし、グラフト重合によって、これらの特性を向上させることが可能になります。 具体的には、元の高分子鎖に別の種類の高分子鎖を結合させることで、元の材料にはなかった撥水性や耐熱性などを付与することができます。この技術は、繊維やプラスチック製品だけでなく、塗料、接着剤、医用材料など、幅広い分野で応用されています。 例えば、ある種の繊維にグラフト重合を施すことで、水を弾く撥水性を持たせることができます。また、熱に弱いプラスチックにグラフト重合を施すことで、高い温度でも変形しにくい耐熱性を持たせることもできます。 このように、グラフト重合は、既存の材料に新たな機能や特性を付与することができる画期的な技術と言えるでしょう。今後、さらに技術開発が進むことで、私たちの生活をより豊かにする新しい素材が生まれることが期待されています。
放射線について

放射線重合とモノマー:未来への技術

- モノマーとはモノマーとは、私たちの身の回りにあるプラスチックやゴム、繊維など、様々な製品に形を与える高分子と呼ばれる巨大な分子を作るための、いわば「小さな building block (レンガ)」のようなものです。 例えば、たくさんのレゴブロックを組み合わせて家や車などを作れるように、小さなモノマー分子がたくさん結合することで、糸のように細長いものや、シート状の薄いもの、硬いものや柔らかいものなど、様々な形や性質を持つ高分子が作り出されます。モノマーには、エチレンやプロピレン、スチレンなど、様々な種類があります。 これらのモノマーは、それぞれ異なる形や性質を持っており、どのモノマーをどのように組み合わせるかによって、最終的にできる高分子の種類が決まります。 つまり、モノマーは高分子の性質を決める上で、非常に重要な役割を担っていると言えます。例えば、エチレンというモノマーが鎖のように長くつながると、ポリエチレンという高分子になります。ポリエチレンは、スーパーマーケットのレジ袋や、食品を包むラップなどに使われる、柔軟で水に強いという性質を持った素材です。一方、プロピレンというモノマーからできるポリプロピレンは、透明で丈夫なことから、食品容器や文房具など、幅広い用途に利用されています。このように、モノマーの種類によって、私たちの身の回りにある様々な製品が作られているのです。