D10値

放射線について

食品照射の指標となるD10値

近年、食品の安全性をより高めるための技術として、放射線を用いた方法が注目を集めています。食品に放射線を照射する、いわゆる放射線照射は、食品の衛生状態を向上させるための有効な手段として期待されています。 放射線は、物質を透過する力を持つエネルギーの高い波や粒子です。食品に放射線を照射すると、そのエネルギーが食品中の微生物、特に食中毒の原因となる細菌などのDNAに損傷を与えます。DNAは生物の設計図とも言える重要な物質であり、損傷を受けると、その修復が追いつかずに微生物は増殖できなくなったり、死滅したりします。 この放射線照射の効果は、D10値という指標で評価されます。D10値とは、特定の種類の微生物数を10分の1に減らすために必要な放射線の量を示すものです。D10値が小さいほど、少ない放射線量で効果が得られることを意味し、より効率的に微生物を減らすことができると言えます。 放射線照射は、従来の加熱処理などと比べて、食品の風味や栄養価への影響が少ないという利点もあります。そのため、将来的には、より安全な食品を提供するための技術として、放射線照射の利用がますます広がることが期待されています。