DNBR

原子力の安全

原子炉の安全運転を支えるDNB相関式

原子力発電所の中心部には原子炉が存在し、そこでウラン燃料が核分裂を起こすことで莫大な熱が生み出されます。この熱は、発電の源泉となる一方で、制御を失えば燃料の溶融や深刻な事故につながる可能性も秘めています。そのため、原子炉から発生する熱を適切に除去し、燃料の温度を常に安全な範囲に保つ冷却システムは、原子力発電所の安全確保において最も重要な要素の一つと言えるでしょう。 原子炉の冷却には、一般的に水が使われています。水は熱を吸収する能力が高く、比較的容易に入手できるという利点があります。原子炉で熱せられた水は蒸気へと変化し、その勢いでタービンを回転させることで電気を生み出します。この一連の工程において、燃料が過熱し損傷する事態を防ぐため、冷却水の流量や圧力を緻密に調整することが求められます。冷却水の循環速度を上げればより多くの熱を奪い去ることができますし、圧力を高めれば水の沸点を上げてより高温でも液体状態を維持できるため、効率的な冷却が可能となります。 原子力発電は、二酸化炭素排出量の削減に貢献できる有力なエネルギー源ですが、その安全性を確保するには、原子炉で発生する莫大な熱を適切に制御することが不可欠です。
原子力の安全

原子炉の安全を守る指標:DNBR

- DNBRとは原子力発電所では、ウラン燃料の核分裂反応によって莫大な熱が発生します。この熱を効率的に取り除き、蒸気を発生させるために冷却水が用いられます。燃料棒の表面で冷却水が沸騰し、泡が発生する状態を「核沸騰」と呼びますが、熱伝達率が高く、効率的に熱を除去することができます。しかし、熱の発生量に対して冷却水の流量が少ないなど、特定の条件下では、燃料棒の表面に蒸気の膜が発生し、冷却水の熱の吸収を阻害してしまう現象が起こります。これを「沸騰遷移」と呼びます。DNBR(Departure from Nucleate Boiling Ratio最小限界熱流束比)とは、この沸騰遷移が発生する限界点となる熱流束と、実際に燃料棒に印加されている熱流束の比を表す値です。つまり、DNBRは燃料棒の表面がどの程度沸騰遷移に近い状態にあるかを示す安全指標と言えます。DNBRの値が小さいほど、燃料棒の表面は沸騰遷移に近い状態となり、危険性を孕んでいることを意味します。逆に、DNBRの値が大きいほど、燃料棒は安全に冷却されていることを示します。原子力発電所では、安全性を確保するために、常にDNBRがある一定の値以上になるように運転されています。