
放射線計測の立役者:NaIシンチレータ
原子力発電所や医療現場、研究機関など、様々な分野で放射線を扱う際には、安全確保のために目に見えない放射線を正確に計測することが不可欠です。そのために活躍するのがNaIシンチレータと呼ばれる装置です。
NaIシンチレータは、微量のタリウムを含んだヨウ化ナトリウムの結晶を用いて放射線を計測します。物質に放射線の一種であるガンマ線が当たると、物質中の電子はエネルギーを受けて励起状態になります。励起された電子は、元の安定した状態に戻る際に、エネルギーを光として放出します。この現象をシンチレーションと呼びます。
NaIシンチレータは、このシンチレーション現象を利用してガンマ線を計測します。ヨウ化ナトリウム結晶にガンマ線が当たると、結晶はシンチレーション光を発します。この微弱な光を光電子増倍管で増幅し、電気信号に変換することで、ガンマ線のエネルギーや量を測定することができます。
NaIシンチレータは、高い検出効率とエネルギー分解能を備えているため、放射線の測定に広く利用されています。また、比較的小型で取り扱いが容易であることも利点の一つです。ただし、中性子線やベータ線などの他の放射線に対しては感度が低いため、測定対象となる放射線の種類に応じて適切な測定器を選択する必要があります。