TMI事故

原子力の安全

原子力安全における蒸気爆発の理解

- 蒸気爆発とは蒸気爆発は、まるで高温の金属を水に落とした時に起こるような、激しい現象です。 高温で溶けた金属のような物質が、水などの冷たい液体と触れ合った瞬間に、凄まじい勢いで蒸気が発生します。 この蒸気の発生は、一瞬と言っても良いほどの速さで起こるため、周りの水は急激な圧力変化と衝撃波に襲われます。そして、この圧力変化と衝撃波が、爆発的な膨張を引き起こし、激しい爆発現象となるのです。これが蒸気爆発と呼ばれる現象です。蒸気爆発は、原子力発電所などで事故が起きた際に、特に懸念される現象の一つです。 例えば、原子炉内で溶け落ちた核燃料が冷却水と接触すると、大規模な蒸気爆発が起こる可能性があります。このような蒸気爆発は、原子炉格納容器に深刻な損傷を与え、放射性物質の外部への放出につながる可能性もあるため、大変危険です。そのため、原子力発電所の設計や運転においては、蒸気爆発の発生を防止するための様々な対策が講じられています。
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スリーマイル島事故:教訓と未来への影響

- 事故の概要1979年3月28日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所2号炉で、原子力発電所の歴史を大きく変える深刻な事故が発生しました。 この事故は、原子炉の冷却水喪失に端を発し、炉心の一部が溶融する炉心溶融に至るという、危機的な状況となりました。 事故の背景には、設計上の問題点と人間の操作ミスが複雑に絡み合っていたことが、後の調査によって明らかになっています。事故当日、原子炉内の冷却水の循環が何らかの原因で停止し、蒸気発生器への熱供給が途絶えました。 この影響で原子炉内の圧力と温度が急上昇し、自動的に原子炉が緊急停止する事態となりました。 しかし、緊急時に作動するはずの冷却システムにも不具合が発生し、事態はさらに悪化しました。 冷却機能を失った原子炉内では、核燃料が高温状態に晒され続け、一部が溶融してしまったのです。 この事故による放射性物質の放出量は比較的少量に抑えられましたが、周辺住民は一時的に避難を余儀なくされました。 スリーマイル島原子力発電所事故は、原子力発電が孕む潜在的な危険性を世界に知らしめ、その後の原子力発電所の設計や安全基準、そして人々の原子力に対する意識に大きな影響を与えることになりました。
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原子炉の安全性と崩壊熱

原子力発電所では、ウランなどの核燃料が中性子を吸収して核分裂を起こし、膨大なエネルギーを放出します。このエネルギーの大部分は熱として取り出され、発電に利用されます。しかし、核分裂反応後も、原子炉内では目に見えない熱源である「崩壊熱」が発生し続けています。 原子炉内で核分裂を起こした物質は、新たな放射性物質に変化します。これらの放射性物質は不安定な状態にあり、時間経過とともに放射線を放出しながらより安定な状態へと変化していきます。この過程を「放射性崩壊」と呼びます。放射性崩壊の過程では、放射線だけでなく熱も発生します。これが「崩壊熱」です。 崩壊熱は、原子炉の運転中にも発生していますが、運転停止後も発生し続けます。その量は時間とともに減衰していきますが、完全に消失するまでには非常に長い時間がかかります。そのため、原子炉の運転停止後も、崩壊熱を除去し続ける冷却システムが不可欠となります。冷却が適切に行われない場合、燃料が高温になり、炉心損傷などの深刻な事故につながる可能性もあるのです。
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運転管理専門官:過去に存在した原子力発電所の安全確保の要

1979年3月28日、アメリカのスリーマイル島原子力発電所で発生した事故は、世界中に衝撃を与え、原子力発電の安全性を根底から揺るがす大惨事となりました。この事故は、原子力発電は決して安全とは言い切れないという厳しい現実を突きつけ、各国に原子力安全に対する意識の抜本的な改革を迫るものでした。 日本も、この事故の教訓を重く受け止め、二度と同様の事故を起こさないという強い決意のもと、原子力発電所の安全確保に向けた取り組みを強化しました。その具体的な施策の一つとして、原子力発電所が立地する地域に、国の運転管理専門官を常駐させるという画期的な制度が導入されることになりました。 運転管理専門官は、原子力発電所の運転状況を24時間体制で監視し、原子炉の出力や温度、圧力などを始めとする様々な運転データをチェックし、安全基準を満たしているかを常に確認していました。そして、万が一、異常な兆候や安全上の問題点が発見された場合には、ただちに発電所の運転員に対して、適切な是正措置を講じるように指示するなど、迅速かつ的確な対応を行う重要な役割を担っていました。