「返還廃棄物」:原子力発電の課題
電力を見直したい
先生、「返還廃棄物」って、海外に頼んだものを日本に戻すって意味ですよね? なんか、ゴミを押し付け合っているみたいで嫌な感じがします…
電力の研究家
確かに、そう感じるのも無理はないね。でも、もう少し詳しく見てみよう。そもそも、日本はなぜ燃料の再処理を海外に頼んでいるんだと思う?
電力を見直したい
うーん、日本だけではできないから…?
電力の研究家
そう、日本は再処理に必要な施設や技術を十分に持っていないんだ。そこで、技術を持つ国に頼んでいるんだけど、その際に発生する廃棄物は責任を持って引き取るという約束になっているんだよ。
返還廃棄物とは。
原子力発電所で使われた燃料を再処理すると、使い物にならないゴミが出てきます。このゴミは外国に処理を頼んだ場合、日本に送り返されますが、これを「返還廃棄物」と呼びます。日本は、イギリスとフランスの会社に燃料の再処理を依頼しており、その際に発生する様々な放射線を出すゴミを日本が引き取る約束になっています。このうち、強い放射線を出すゴミは、ガラスで固めて返されるので、「返還ガラス固化体」とも呼ばれます。この返還は1995年からすでに始まっており、青森県六ヶ所村の保管施設に運び込まれています。弱い放射線を出すゴミについては、フランスからは固形物収納体やガラスで固めた形で返される予定です。また、イギリスからは、弱い放射線を出すゴミの代わりに、同じ影響がある強い放射線を出すゴミを受け取ることになっています。
返還廃棄物とは
– 返還廃棄物とは原子力発電所で使われた燃料(使用済み燃料)は、再処理という工程を経て、まだ使える資源と放射線を出す廃棄物に分けることができます。日本で出る使用済み燃料は、再処理をイギリスとフランスに頼んでいますが、その際にどうしても放射線を出す廃棄物が出てしまいます。このうちの一部は、日本が責任を持って引き取ることになっており、これを「返還廃棄物」と呼びます。返還廃棄物は、ガラスと混ぜて固めるなど、厳重な処理を施した上で、人が住んでいない地下深くに保管する計画が進められています。これは、放射線が十分に弱まるまでの長い期間、安全を確保するためです。返還廃棄物の保管は、原子力発電の恩恵を受けた私たちが、将来世代に対して責任を果たすために、避けて通れない重要な課題といえます。
項目 | 内容 |
---|---|
返還廃棄物の由来 | 使用済み燃料を再処理(イギリス・フランス)する際に発生する放射性廃棄物の一部 |
保管方法 | ガラス固化体にして人が住んでいない地下深くに保管 |
保管の目的 | 放射線が十分に弱まるまでの安全確保 |
返還廃棄物問題の意義 | 原子力発電の恩恵を受けた世代の将来世代への責任 |
返還廃棄物の種類
– 返還廃棄物の種類
原子力発電で使用された燃料を再処理した後に発生する廃棄物は、返還廃棄物と呼ばれ、日本に持ち帰ることになっています。この返還廃棄物は、その放射能レベルの高低によって、大きく二つに分けられます。
一つは、放射能レベルの高い高レベル廃棄物です。これは、使用済み燃料からウランやプルトニウムを取り出した後に残る、非常に強い放射能を持つ廃液を、ガラスと混ぜて固めたものです。この固めたものを「ガラス固化体」と呼びます。ガラス固化体は、厳重な安全基準を満たした特別な輸送容器に入れられ、船で日本まで運ばれてきます。
もう一つは、放射能レベルが比較的低い低レベル廃棄物です。これは、再処理工場で使われた機器や作業服、フィルターなどから発生します。低レベル廃棄物は、その性状も様々で、固体状のものもあれば、液体状のものもあります。また、高レベル廃棄物と同様にガラス固化体になっているものもあります。
このように、返還廃棄物は、その放射能レベルや性状が様々であるため、それぞれの特性に応じた適切な保管方法が求められます。
廃棄物の種類 | 放射能レベル | 内容 | 輸送方法 |
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高レベル廃棄物 | 高 | 使用済み燃料からウラン、プルトニウムを取り出した後に残る廃液をガラスと混ぜて固めたもの(ガラス固化体) | 特別な輸送容器に入れられ、船で輸送 |
低レベル廃棄物 | 比較的低い | 再処理工場で使われた機器、作業服、フィルターなど (固体、液体、ガラス固化体など) |
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返還廃棄物の保管
日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っており、その中でも原子力発電は重要な役割を担ってきました。原子力発電は、火力発電と比べて二酸化炭素排出量が少ないという利点がある一方、使用済み燃料から発生する高レベル放射性廃棄物の処理が課題として残ります。使用済み燃料は再処理を行うことで、資源として有効活用できるウランやプルトニウムを取り出すことができますが、同時に高レベル放射性廃棄物が発生します。この高レベル放射性廃棄物は、日本国外で再処理された後、日本に返還されます。返還された高レベル放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村にある「返還廃棄物貯蔵施設」において、厳重に管理されています。この施設では、高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜ合わせて固化体にし、ステンレス製の容器に封入した上で、さらに容器を厚さ約1メートルのコンクリートで覆うことで、放射線を遮蔽し、外部への影響を最小限に抑えています。また、ガラス固化体から発生する熱を取り除くため、冷却空気を通して施設内の温度を一定に保つなど、安全性の確保に万全を期しています。このように、返還廃棄物の保管は、高度な技術と厳格な管理体制のもとで行われていますが、将来世代に負担を残さないよう、より安全かつ長期的な保管方法の確立が求められています。そのため、地下深くに保管する地層処分についても、研究開発が進められています。
項目 | 内容 |
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原子力発電の現状 | エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本において重要な役割を担う。 |
メリット | 火力発電と比べて二酸化炭素排出量が少ない。 |
課題 | 使用済み燃料から発生する高レベル放射性廃棄物の処理。 |
使用済み燃料の再処理 | ウランやプルトニウムを取り出し資源として有効活用できるが、高レベル放射性廃棄物が発生する。 |
高レベル放射性廃棄物の保管 | – 日本国外で再処理後、日本に返還。 – 青森県六ヶ所村の「返還廃棄物貯蔵施設」で厳重に管理。 |
保管方法 | – 高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜ合わせて固化体にし、ステンレス製の容器に封入。 – 容器を厚さ約1メートルのコンクリートで覆い放射線を遮蔽。 – 冷却空気を通して施設内の温度を一定に保ち、ガラス固化体から発生する熱を除去。 |
今後の展望 | – より安全かつ長期的な保管方法の確立。 – 地下深くに保管する地層処分に関する研究開発。 |
課題と今後の展望
原子力発電は、地球温暖化対策の切り札として期待されていますが、その一方で、放射性廃棄物の問題は、解決すべき重要な課題として認識されています。
原子力発電所から発生する使用済み燃料は、再処理によって有用なウランやプルトニウムを抽出することができます。しかし、再処理を行う過程で、放射能レベルの高い廃液が発生します。この廃液は、ガラスと混ぜ合わせて固化処理を行い、ステンレス製の容器に封入したのち、厳重に管理する必要があります。
最終処分場選定の問題も、国民の理解と協力が不可欠です。放射性廃棄物は、人が住んでいない場所に、何万年もの間、環境への影響を遮断する形で保管しなければなりません。適切な場所を選定し、安全性を確保するために、長期的な視点に立った議論と、国民全体で考え方を共有していくことが求められます。
原子力発電は、エネルギー源としての利点がある一方で、これらの課題を克服し、将来世代に負担を残さない形で利用していくことが、私たちに課せられた責任です。
項目 | 内容 |
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メリット | 地球温暖化対策の切り札として期待 |
課題 | 放射性廃棄物の問題
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廃棄物処理 | ガラス固化、ステンレス容器への封入、厳重管理 |
最終処分場 | 人が住んでいない場所、環境への影響を遮断、長期的な安全確保 |
必要な取り組み | 国民の理解と協力、長期的な視点に立った議論、考え方の共有 |
私たちにできること
原子力発電所から出る使用済み燃料から再処理されるウランやプルトニウムを取り出した後に残るのが、返還廃棄物と呼ばれるものです。この返還廃棄物は、強い放射能を持つため、人が近づいたり触れたりすることは大変危険です。また、その毒性は、長い年月を経ても減少しないという特徴も持ち合わせています。そのため、地下深くの安全な場所に、人の生活圏から完全に隔離して処分する、いわゆる地層処分を行う必要があります。
しかしながら、この返還廃棄物の処分は、技術的にも、社会 的にも容易ではありません。地下深くに安全に保管するための技術開発もさることながら、将来世代に負担を先送りすることになるという倫理的な問題、そして最終処分場の選定を巡る地域社会との合意形成など、解決すべき課題は山積しています。
このような状況の中、私たち一人ひとりができることは何でしょうか?まずは、返還廃棄物問題について正しく理解することから始めましょう。そして、原子力発電の利用やエネルギー問題全体について、積極的に意見交換や議論に参加し、自分たちができることを考えていきましょう。未来を担う子供たちのために、安全で持続可能な社会を築き上げていくために、私たち一人ひとりの行動が求められています。
項目 | 内容 |
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返還廃棄物とは | 使用済み燃料からウランとプルトニウムを取り出した後に残る、強い放射能を持つ廃棄物 |
危険性 | 人が近づいたり触れたりすることが危険なレベルの高い放射能を持ち、長期間にわたって毒性が減少しない |
処分方法 | 地下深くの安全な場所に、人の生活圏から完全に隔離して処分する「地層処分」 |
課題 |
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私たちにできること |
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