VVER-440型原子炉:旧ソ連の技術
電力を見直したい
原子力発電に関する用語『VVER−440』って、どんなものですか?
電力の研究家
『VVER−440』は、旧ソ連で開発された原子炉の一種だよ。電気出力44万キロワットの加圧水型軽水炉で、ロシア型加圧水型原子炉とも呼ばれているんだ。
電力を見直したい
日本の加圧水型軽水炉とは違うんですか?
電力の研究家
そうだよ。例えば、炉心出口温度は日本のものが約343℃なのに対して、『VVER−440』は約296℃と低い。燃料の長さも日本のものが約3.7mなのに対し、『VVER−440』は約2.5mと短いんだよ。
VVER−440とは。
「原子力発電に関する用語『VVER−440』は、電気を44万キロワット発電する、旧ソ連で作られた、水を圧力で熱くして動かす原子炉の一種です。ロシアで作られた水を圧力で熱くして動かす原子炉『VVER』(『WWER』とも書きます)に分類されます。この原子炉の中心部から出る熱湯の温度は296℃で、日本の同じ種類の原子炉の約343℃よりも低いです。お湯を沸かして蒸気を作る装置は横に寝かせた形をしています。核燃料を束ねたものは126本が六角形の外箱に入っていて、燃料として使える部分の長さは約2.5メートルで、日本の同じ種類の原子炉の約3.7メートルよりも短いです。原子炉の圧力容器の中には、原子炉を冷やす水が出るノズルが上下2段に付いています。
旧ソ連の主力炉型
– 旧ソ連の主力炉型旧ソビエト連邦(ソ連)は、独自の原子力技術開発を進め、VVER-440型原子炉を国内の原子力発電の主力炉型としていました。この炉型は、加圧水型軽水炉(PWR)と呼ばれる形式に分類され、水を冷却材と減速材の両方に使用するものです。西側諸国で主流のPWRと同様の原理で運転されますが、設計や構造にはソ連独自の技術が見られます。VVER-440型原子炉は、その名の通り44万キロワットの発電能力を備えており、これは当時のソ連において標準的な規模の原子力発電所の中核を担うのに十分な出力でした。 旧ソ連時代には、東ヨーロッパ諸国を中心に多数のVVER-440型原子炉が建設され、その後の電力供給に大きな役割を果たしました。VVERとは、ロシア語で「水冷却水減速動力炉」を意味する言葉の頭文字を取ったものです。これは、炉心で発生した熱を水で冷却し、同時に水の密度を調整することで核分裂反応の速度を制御するという、この炉型の基本的な仕組みを表しています。VVER-440型原子炉は、冷戦終結後も一部の国で稼働を続けていますが、安全性向上のための近代化改修や、運転期間の延長に関する議論が進められています。
項目 | 内容 |
---|---|
炉型 | VVER-440型原子炉 |
炉型分類 | 加圧水型軽水炉(PWR) |
冷却材/減速材 | 水 |
発電能力 | 44万キロワット |
特徴 | – ソ連独自の技術に基づいた設計・構造 – 東ヨーロッパ諸国を中心に多数建設 |
VVERの意味 | 水冷却水減速動力炉 |
VVERの基本的な仕組み | 炉心で発生した熱を水で冷却し、同時に水の密度を調整することで核分裂反応の速度を制御 |
現状 | 一部の国で稼働中。安全性向上のための近代化改修や、運転期間の延長に関する議論が進められている。 |
低い冷却材温度
– 低い冷却材温度
旧ソ連型加圧水型原子炉であるVVER-440型の特徴の一つに、炉心出口冷却材温度の低さがあります。
原子炉の中で核分裂反応によって発生した熱は、冷却材である水によって炉心外に運ばれます。この時、日本の加圧水型原子炉(PWR)では炉心出口冷却材温度は約343℃で運転されているのに対し、VVER-440型は約296℃と低い温度で設計されています。
この低い冷却材温度は、当時のソ連における技術的な制約や設計思想の違いを反映していると考えられます。例えば、高温高圧の冷却材を扱うには、配管や機器の材料、溶接技術などに高度な技術が必要となります。当時のソ連では、これらの技術が十分に発達していなかったため、低い冷却材温度での運転を選択した可能性があります。
また、VVER-440型は、安全性と信頼性を重視した設計思想を持っていました。低い冷却材温度は、炉心や配管への熱的負荷を軽減し、機器の寿命を延ばす効果があります。これは、当時のソ連の厳しい自然環境や社会情勢を考慮すると、合理的な選択であったと言えるでしょう。
しかし、冷却材温度が低いことは、熱効率の低下に繋がります。そのため、VVER-440型は、日本のPWRと比較して、同じ熱出力に対して発電量が小さくなるという特徴があります。
項目 | VVER-440型 | 日本のPWR |
---|---|---|
炉心出口冷却材温度 | 約296℃ | 約343℃ |
メリット | – 熱的負荷の軽減による機器の長寿命化 – 安全性・信頼性の重視 |
– 熱効率が高い |
デメリット | – 熱効率が低い | – 高温高圧の冷却材を扱う高度な技術が必要 |
横置き蒸気発生器
– 横置き蒸気発生器VVER-440型原子炉は、加圧水型原子炉(PWR)の一種ですが、蒸気発生器の設置方法に特徴があります。多くのPWR、特に日本で稼働しているPWRでは、蒸気発生器は縦置きに設置されています。しかし、VVER-440型では、蒸気発生器が横置きに設置されている点が大きな違いです。この構造の違いは、原子炉の設計や建設に様々な影響を与えます。例えば、原子炉冷却材の配管経路は、横置き型に合わせて設計する必要があります。また、蒸気発生器と圧力容器の接続方法も、縦置き型とは異なり、独自の技術が求められます。横置き型蒸気発生器は、縦置き型に比べて設置面積が大きくなるという側面も持ちます。しかし、VVER-440型が開発された当時、ソビエト連邦では、鉄道輸送の都合上、機器のサイズに厳しい制限がありました。そのため、高さ方向を抑制できる横置き型の蒸気発生器が採用されたと考えられています。このように、横置き蒸気発生器は、VVER-440型原子炉の設計思想や当時の技術的制約を反映した、特徴的な構造と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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原子炉の種類 | 加圧水型原子炉 (PWR) |
蒸気発生器の特徴 | 横置き設置 |
横置き設置の理由 | 鉄道輸送の都合上、機器の高さを抑制する必要があったため |
横置き設置による影響 |
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コンパクトな燃料集合体
原子力発電所の中核である原子炉には、燃料集合体と呼ばれる部品が多数配置されています。この燃料集合体には、ウラン燃料を封入した燃料棒が多数束ねられており、原子炉の種類や設計によってその形状や大きさは異なります。
VVER-440型原子炉は、旧ソ連で開発された加圧水型軽水炉の一種であり、その燃料集合体は、日本の加圧水型軽水炉(PWR)と類似の構造を持っています。具体的には、126本の燃料棒を六角形の外枠に収納する点は共通しています。しかし、VVER-440型原子炉の燃料集合体は、燃料の有効長が約2.5メートルと、日本のPWRの約3.7メートルに比べて短い点が特徴です。燃料の有効長とは、核分裂反応を起こすウラン燃料が充填されている部分の長さのことです。
この燃料有効長の差は、炉心の大きさと出力密度に影響を与えます。VVER-440型原子炉は、燃料有効長が短いため、炉心全体もコンパクトに設計されています。一方、出力密度は、日本のPWRよりも高くなる傾向があります。出力密度は、単位体積当たりの熱出力のことであり、高い出力密度は、より小型の炉で大きな出力を得られることを意味します。
このように、VVER-440型原子炉の燃料集合体は、コンパクトながらも高い出力密度を実現する設計となっています。このことは、燃料設計や炉心管理において重要な考慮事項となります。
項目 | VVER-440型原子炉 | 日本のPWR |
---|---|---|
燃料棒の数 | 126本 | 126本 |
燃料集合体の形状 | 六角形 | 六角形 |
燃料有効長 | 約2.5メートル | 約3.7メートル |
炉心の大きさ | コンパクト | 大型 |
出力密度 | 高 | 低 |
上下2段ノズル配置
原子炉圧力容器の中には、原子炉の運転に欠かせない冷却材を循環させるためのノズルが設けられています。このノズルは、原子炉の種類によって形状や配置が異なります。旧ソ連で開発されたVVER-440型原子炉では、他の原子炉とは異なり、ノズルが上下2段に配置されているという特徴があります。
では、なぜこのような設計が採用されているのでしょうか?それは、冷却材の流れを最適化し、原子炉の心臓部である炉心の冷却効率を最大限に高めるためです。
上段のノズルからは高温の冷却材が取り出され、蒸気発生器へと送られます。一方、下段のノズルからは低温の冷却材が炉心へと送り込まれ、再び加熱されるという循環サイクルを形成しています。
このように、上下2段ノズル配置は、VVER-440型原子炉において、効率的かつ安全な運転を実現するための重要な設計と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
原子炉圧力容器内のノズル | 原子炉の種類によって形状や配置が異なる |
VVER-440型原子炉のノズル配置 | 上下2段に配置 |
上下2段ノズル配置の目的 | 冷却材の流れを最適化し、炉心の冷却効率を最大限に高める |
上段ノズルの役割 | 高温の冷却材を取り出し、蒸気発生器へと送る |
下段ノズルの役割 | 低温の冷却材を炉心へと送り込む |
上下2段ノズル配置の意義 | VVER-440型原子炉において、効率的かつ安全な運転を実現するための重要な設計 |