航空機利用時の宇宙放射線被ばく線量を計算するCARIコード

航空機利用時の宇宙放射線被ばく線量を計算するCARIコード

電力を見直したい

先生、「CARI」って原子力発電の用語で出てきましたけど、どんなものですか?

電力の研究家

実は「CARI」は原子力発電の用語ではなくて、航空機に乗っている時に受ける宇宙からの放射線を計算するコードのことなんだ。原子力発電所から出る放射線とは関係がないんだよ。

電力を見直したい

え、そうだったんですか?てっきり原子力発電に関係あるものだと思っていました。

電力の研究家

確かに、放射線という言葉が出てくるから、原子力発電と関係があると思ってしまうのも無理はないね。でも、放射線は原子力発電以外にも、宇宙や自然界など、様々なところから出ているんだよ。

CARIとは。

『CARI』は、原子力発電ではなく、飛行機の乗客や乗務員が浴びる宇宙からの放射線の量を計算するためのものです。アメリカの航空機関が作ったもので、地球を球に見立てて、世界中のどの空港からどの空港まで飛んでも、その間の放射線の量を計算できます。計算には、毎月の地球の磁場の状態と、飛行機の飛ぶ高さや経路を使います。この計算では、放射線の影響を強く見積もるように設定されていて、昔からの太陽の活動データと組み合わせることで、約50年分の毎月の放射線量を計算できます。この計算方法は、アメリカの航空機関のホームページで公開されていて、誰でも使えるようになっています。また、パソコンにプログラムをダウンロードして使うこともできます。2006年時点では、『CARI−6』というバージョンが使われています。

はじめに

はじめに

– はじめ

現代社会において、飛行機は人や物を運ぶ上で欠かせない乗り物となっています。空高く飛ぶ飛行機は、地上よりも宇宙からの放射線を多く浴びます。この放射線は、人体に影響を及ぼす可能性があるため、その量を適切に管理することが重要です。

宇宙放射線は、太陽や銀河系外の宇宙からやってくるエネルギーの高い粒子線です。地上では、大気や地球の磁場が私たちを守ってくれていますが、高度が高いところを飛ぶ飛行機の中では、地上よりも多くの宇宙放射線を浴びることになります。

人体が過剰に宇宙放射線を浴びると、健康への影響が懸念されます。そのため、航空機に携わる乗務員や頻繁に飛行機を利用する人々にとって、宇宙放射線の影響を評価し、対策を講じることが重要です。

そこで開発されたのが、CARIコードと呼ばれる計算方法です。CARIコードを使うことで、航空機利用時の宇宙放射線による被ばく線量を推定することができます。

この文章では、航空機利用と宇宙放射線被ばくの関係について、CARIコードを用いた被ばく線量の計算方法を中心に詳しく解説していきます。

CARIコードとは

CARIコードとは

– CARIコードとはCARIコード(Civil Aerospace Radiation Initiative code)は、飛行機が地球上のどの2つの空港間を飛行する際に、銀河から降り注ぐ宇宙放射線によって乗員や乗客がどれだけの放射線量を受けるかを計算するプログラムです。このプログラムは、アメリカの航空当局である米国連邦航空局(FAA)のフリードベルグ氏らの研究グループによって開発されました。宇宙からは、常にエネルギーの高い粒子が地球に降り注いでいます。これを宇宙線と呼びますが、飛行機は大気圏に近い高度を飛行するため、地上にいるよりも多くの宇宙線にさらされます。CARIコードは、出発地と目的地の空港、飛行日、飛行時間、飛行経路、航空機の機種などの情報を入力することで、その飛行における宇宙線による被ばく線量を計算することができます。CARIコードは、航空機の乗員や乗客が受ける宇宙放射線の被ばく線量を評価するために広く利用されています。航空会社は、このコードを用いることで、乗員乗客の被ばく線量を管理し、国際的な安全基準を満たすための対策を講じることができます。また、妊娠中の乗務員や放射線感受性の高い乗客に対して、より安全な飛行経路やスケジュールを提案するためにも役立てられています。

項目 内容
定義 飛行機が地球上の2地点間を飛行する際に、銀河から降り注ぐ宇宙放射線によって乗員や乗客がどれだけの放射線量を受けるかを計算するプログラム
開発者 米国連邦航空局(FAA)のフリードベルグ氏らの研究グループ
目的 航空機の乗員や乗客が受ける宇宙放射線の被ばく線量を評価する
入力情報 出発地と目的地の空港、飛行日、飛行時間、飛行経路、航空機の機種など
出力情報 飛行における宇宙線による被ばく線量
利用者 航空会社など
利用用途 乗員乗客の被ばく線量管理、国際的な安全基準を満たすための対策、妊娠中の乗務員や放射線感受性の高い乗客への安全な飛行経路やスケジュールの提案

計算方法

計算方法

– 計算方法

CARIコードを用いた線量計算では、まず始めに、毎月の地球磁場の状態を考慮した上で、大気中の放射線量率の分布を計算します。この計算には、放射線の動きを表す輸送方程式を解析的に解くという高度な手法が用いられます。

次に、得られた大気中の線量率分布と、航空機の飛行計画に基づいた航路や高度といった飛行条件を組み合わせることで、乗客が実際に受ける放射線量を計算します。この計算では、放射線の種類やエネルギーの違いによる人体への影響の違いを考慮するため、放射線荷重係数という値を用います。

CARIコードでは、陽子の放射線荷重係数として、米国放射線審議会(NCRP)の提言に基づき2という値を採用しています。これは、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告で示されている値(5)とは異なる値であるため、注意が必要です。

計算ステップ 内容 備考
大気中線量率分布計算 毎月の地球磁場の状態を考慮し、大気中の放射線量率分布を計算。放射線の動きを表す輸送方程式を解析的に解く。
乗客が受ける線量計算 計算された大気中の線量率分布と、航空機の飛行計画に基づいた航路や高度といった飛行条件を組み合わせる。放射線の種類やエネルギーの違いによる人体への影響の違いを考慮するため、放射線荷重係数を用いる。
放射線荷重係数 陽子の放射線荷重係数として、米国放射線審議会(NCRP)の提言に基づき2を採用。 国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告で示されている値(5)とは異なる値であるため、注意が必要。

太陽活動の影響

太陽活動の影響

私たちが暮らす地球は、常に太陽から放射されるエネルギーの影響を受けています。特に、太陽活動は地球を取り巻く宇宙環境に大きな変化をもたらし、航空機乗務員や乗客が浴びる宇宙放射線の量にも影響を与えます。

宇宙放射線は、太陽活動が活発になると、太陽から吹き出す高エネルギー粒子の増加に伴い、その強度を増します。このため、太陽活動の変動を把握することは、航空機乗務員や乗客の被ばく線量を正確に評価する上で非常に重要となります。

CARIコードは、航空機乗務員や乗客の宇宙放射線被ばく線量を計算するために開発されたシステムですが、このシステムでは、太陽活動の指標である「ヘリオセントリック・ポテンシャル」の月別平均データを用いることで、過去50年近くにわたる月単位での航路線量を計算することができます。

アメリカ連邦航空局(FAA)は1958年から継続してヘリオセントリック・ポテンシャルのデータを収集しており、この長期にわたるデータの利用により、航空機乗務員や乗客に対する宇宙放射線の影響を、より高い精度で評価することが可能となっています。

項目 内容
太陽活動の影響 宇宙環境に変化をもたらし、航空機乗務員や乗客が浴びる宇宙放射線の量に影響を与える。太陽活動が活発になると、宇宙放射線の強度が増加する。
CARIコード 航空機乗務員や乗客の宇宙放射線被ばく線量を計算するシステム。太陽活動の指標である「ヘリオセントリック・ポテンシャル」の月別平均データを用いる。
ヘリオセントリック・ポテンシャルデータ アメリカ連邦航空局(FAA)が1958年から収集。長期データにより、航空機乗務員や乗客に対する宇宙放射線の影響を高精度で評価可能。

誰でも利用可能

誰でも利用可能

– 誰でも利用可能

宇宙放射線被ばく線量を計算するツールであるCARIコードは、アメリカ連邦航空局(FAA)の民間航空医療研究所(CAMI)のウェブサイト上で公開されており、誰でもインターネットを通じて利用できます。このコードはダウンロードして、Windows搭載のパソコン上で動かすことも可能です。最新バージョンは2006年公開のCARI-6です。

CARIコードは、航空会社や旅行者はもちろんのこと、研究者や学生など、宇宙放射線被ばく線量に関心のある人なら誰でも簡単に利用できるように設計されています。そのため、世界中で広く活用されています。宇宙放射線は、高度や緯度、太陽活動などによって変化するため、航空機に搭乗する機会が多い人や、高緯度地域に住む人などにとっては、被ばく線量を把握しておくことが重要です。CARIコードは、こうした人々が自身の被ばく線量を把握し、健康リスクを管理するのに役立つツールと言えるでしょう。

項目 説明
ツール名 CARIコード
機能 宇宙放射線被ばく線量を計算する
開発元 アメリカ連邦航空局(FAA)民間航空医療研究所(CAMI)
入手方法 CAMIのウェブサイトからダウンロード (最新バージョン: CARI-6)
対応OS Windows
対象ユーザー 航空会社、旅行者、研究者、学生など宇宙放射線被ばく線量に関心のある人
特徴 誰でも簡単に利用できるように設計
用途 航空機搭乗や高緯度地域居住による被ばく線量の把握、健康リスク管理