欧州自由貿易連合:EU とは異なる経済連携
電力を見直したい
先生、『欧州自由貿易連合』って、何ですか?原子力発電について調べていたら出てきたのですが、よくわかりません。
電力の研究家
なるほど。『欧州自由貿易連合』、略してEFTAのことだね。これはヨーロッパの国々が貿易を活発にするために作ったグループなんだ。でも、EFTAは原子力発電そのものとは直接関係がないんだよ。
電力を見直したい
え、そうなんですか?じゃあ、なんで原子力発電について調べていたら出てきたんだろう…?
電力の研究家
もしかしたら、EFTA加盟国の中に原子力発電を推進している国があったり、反対に、原子力発電に頼らないエネルギー政策をとっている国があったりするから、その関連で出てきたのかもしれないね。ヨーロッパの国々は、それぞれ事情が異なるんだよ。
欧州自由貿易連合とは。
「欧州自由貿易連合」は、原子力発電の用語ではありません。これは、ヨーロッパの経済をまとめるために作られた「欧州経済共同体(EEC)」ができた時に、EECに入らなかったヨーロッパの7つの国(イギリス、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、スイス)が集まって作った組織です。この組織は、EECとは違って、工場で作られた製品を自由に売買することを主な目的としており、加盟していない国から輸入される品物に共通の税金をかけることはしませんでした。その後、1972年にEECと自由貿易の約束を結びました。しかし、EECの後継である「欧州共同体(EC)」が大きくなるにつれて、加盟する国は減っていきました。2009年3月時点では、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4つの国だけになっています。1994年には、スイスを除くEFTA諸国が「欧州連合(EU)」と協力して、より広範囲な統一市場を目指して「欧州経済領域(EEA)」を設立しました。EEAは、自由貿易地域であり、商品、人、サービス、資本の自由な移動が保証されていますが、EUの共通通商政策は含まれておらず、関税同盟ではありません。
欧州自由貿易連合の設立背景
1957年、ヨーロッパ統合の動きの中で、フランス、イタリア、西ドイツを中心とした6ヶ国によって欧州経済共同体(EEC)が設立されました。これは、単なる経済的な協力関係を超えて、将来的には政治的な統合をも見据えたものでした。しかし、すべてのヨーロッパの国々が、このような踏み込んだ統合を望んでいたわけではありません。 イギリス、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、スイスの7ヶ国は、EECのような政治的な統合よりも、経済的な自由化を重視し、独自の枠組みを模索することにしました。
こうして1959年、EEC設立のわずか2年後、欧州自由貿易連合(EFTA)が誕生しました。EFTAは、加盟国間における関税や貿易制限を撤廃し、自由貿易を実現することを目的としていました。ただし、EECのような共通域外関税や共通農業政策といった、政治的な統合を強く意識させる政策は採用しませんでした。 EFTAは、あくまでも経済的な結びつきを重視した、より緩やかな協力関係を志向したと言えるでしょう。
組織名 | 設立年 | 加盟国 | 目的 | 政治統合 |
---|---|---|---|---|
欧州経済共同体(EEC) | 1957年 | フランス、イタリア、西ドイツ中心の6ヶ国 | 経済統合、将来的な政治統合 | 積極的 |
欧州自由貿易連合(EFTA) | 1959年 | イギリス、オーストリア、デンマークなど7ヶ国 | 経済的な自由化、自由貿易の実現 | 消極的 |
欧州自由貿易連合の目的
欧州自由貿易連合(EFTA)は、加盟国間の経済的な結びつきを強化し、経済成長を促進することを目指して設立されました。具体的には、加盟国間で工業製品を自由に取引できるようにすることに重点が置かれました。これは、加盟国がお互いの工業製品に課していた関税を撤廃することで実現されました。その結果、EFTA域内での工業製品の流通が活発化し、経済活動の活性化に繋がりました。
しかし、ヨーロッパ経済共同体(EEC)とは異なり、EFTAは農業やサービスといった分野での自由化には取り組みませんでした。農業やサービスは国ごとに事情が異なるため、EFTAとしては踏み込み過ぎずに、各国の判断に委ねる形をとったのです。また、EFTAは加盟国に対して、他の国々との貿易政策を独自に決める自由を認めました。これは、EFTAが加盟国の主権を尊重し、それぞれの国の事情に合わせた柔軟な対応を重視したためです。このように、EFTAは自由貿易の推進と各国の自主性のバランスを重視した組織と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
設立目的 | 加盟国間の経済的な結びつきを強化し、経済成長を促進する |
具体的な取り組み | 加盟国間での工業製品の自由貿易(関税撤廃) |
農業・サービス分野の自由化 | EECとは異なり、取り組みませんでした。各国の判断に委ねる形をとりました。 |
対外貿易政策 | 加盟国は独自に決定可能(加盟国の主権と柔軟な対応を重視) |
EFTAの特徴 | 自由貿易の推進と各国の自主性のバランスを重視 |
欧州共同体との関係
1972年、ヨーロッパの経済統合を推進する重要な一歩として、欧州自由貿易連合(EFTA)と欧州経済共同体(EEC)の間で自由貿易協定が締結されました。この協定により、EFTA加盟国とEEC加盟国の間で工業製品の関税が撤廃され、自由貿易が実現しました。これは、ヨーロッパ全体の経済成長と貿易拡大に大きく貢献しました。
しかしその後、1970年代から1990年代にかけて、EECは拡大路線を歩み、多くのEFTA加盟国がEECに加盟しました。イギリス、デンマーク、アイルランドなどがEECに加盟し、その後もポルトガル、スペイン、ギリシャなどが加盟しました。さらに、1995年にはオーストリア、スウェーデン、フィンランドの3カ国がEUに加盟しました。これらの国々は、EECへの加盟によってより広範な経済統合のメリットを享受できると判断しました。
結果として、EFTAの規模は縮小し、1990年代後半にはスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国のみとなりました。これらの国々は、それぞれ独自の理由でEUへの加盟を見送っています。例えば、スイスは永世中立国としての立場を重視し、ノルウェーは漁業政策などを巡ってEUとの意見調整が難航しました。
このように、EFTAはEEC、そしてEUの拡大に伴い、その役割を変化させてきました。現在でも、EFTAは加盟国間の経済協力を促進する重要な枠組みとして機能しています。
期間 | 出来事 | EFTAとEECの関係の変化 |
---|---|---|
1972年 | EFTAとEECの間で自由貿易協定締結。工業製品の関税撤廃。 | 自由貿易の実現 |
1970年代~1990年代 | EECが拡大路線を歩み、多くのEFTA加盟国がEECに加盟。 | EFTAの規模縮小 |
1990年代後半 | EFTAはスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国のみとなる。 | EFTAは加盟国間の経済協力を促進する枠組みとして機能。 |
欧州経済領域(EEA)の発足
1994年、ヨーロッパ統合の進展の中で、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国の一部と欧州連合(EU)の間で、新たな経済圏が誕生しました。これが欧州経済領域(EEA)です。
EEAは、EU加盟国と、EFTA加盟国のうちスイスを除くノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインによって構成されています。このEEAの設立により、EUの単一市場の枠組みがEFTA諸国にも拡大されることとなりました。これは、モノ、サービス、資本、人の自由な移動をEEA全域で保障する広域経済圏の構築を目指したものでした。
しかし、EEAはEUの単一市場への完全な統合を意味するものではありませんでした。EEAには、EUの共通農業政策や共通漁業政策などは含まれておらず、これらの分野では、EEA加盟国とEUとの間で個別の協定が結ばれています。また、EEA加盟国は、EUの意思決定機関への参加も認められていません。つまり、EEA加盟国は、EUの単一市場へのアクセスと引き換えに、EUの政策決定プロセスへの関与を制限されていると言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
設立年 | 1994年 |
加盟国・地域 | EU加盟国 + ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン |
目的 | EU単一市場の枠組みをEFTA諸国へ拡大 EEA全域でのモノ、サービス、資本、人の自由な移動の保障 |
EEAとEUの違い | EEAはEUの単一市場への完全な統合ではない EEAには、EUの共通農業政策や共通漁業政策などは含まれない EEA加盟国は、EUの意思決定機関への参加は認められていない |
欧州自由貿易連合の現在
欧州自由貿易連合(EFTA)は、現在、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国で構成されています。これらの国々は、かつてヨーロッパ経済共同体(EEC)に加盟していたイギリス、デンマークと共にEFTAを設立しましたが、その後、イギリスとデンマークはEECに加盟し、EFTAは4カ国体制となりました。
EFTAは、EUのような政治統合を目指した組織ではありませんが、ヨーロッパにおける自由貿易の推進と経済統合の深化に貢献しています。具体的には、加盟国間で工業製品の関税撤廃を進め、自由貿易圏を形成しています。また、EUを含む多くの国や地域と自由貿易協定(FTA)を締結することで、世界経済との連携を強化しています。
EFTAは、加盟国の規模は小さいものの、自由貿易を通じて、加盟国の経済発展に貢献しています。EFTA加盟国は、EUと緊密な経済関係を築いており、EU市場へのアクセスを確保することで、経済成長を続けています。また、EFTAは、自由貿易の推進だけでなく、環境保護や社会福祉などの分野でも協力を行っており、加盟国間の連携を深めています。
項目 | 内容 |
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加盟国 | スイス, ノルウェー, アイスランド, リヒテンシュタイン |
目的 | EUのような政治統合は目指さない。ヨーロッパにおける自由貿易の推進と経済統合の深化。 |
具体的な活動 | – 加盟国間で工業製品の関税撤廃 – EUを含む多くの国や地域と自由貿易協定(FTA)を締結 |
貢献 | – 自由貿易を通じて加盟国の経済発展に貢献 – EU市場へのアクセス確保による経済成長 – 環境保護や社会福祉などの分野でも協力 |