電力研究家

核燃料

ホットアトム:原子炉の中の熱い原子

原子力発電は、物質の根源である原子核のエネルギーを利用した発電方法です。原子炉の中心部では、ウランやプルトニウムといった重い原子核が中性子を吸収することで不安定になり、二つ以上の軽い原子核に分裂します。これが核分裂と呼ばれる現象で、この時に膨大なエネルギーが熱として放出されます。 核分裂反応では、熱エネルギーの発生だけでなく、元の原子核よりも軽い様々な原子核も新たに生成されます。これらの原子核は、核分裂の際に大きなエネルギーを受け取り、非常に速い速度で飛び散ります。 この高い運動エネルギーを持った原子を、私たちは「ホットアトム」と呼んでいます。これは、原子炉という高温の炉の中で熱せられたように、高いエネルギー状態にあることから名付けられました。ホットアトムは、周囲の原子や分子と激しく衝突することで、自身のエネルギーを周囲に伝えていきます。この過程は、物質の化学的性質に大きな影響を与えるため、放射線化学の分野で重要な研究対象となっています。
その他

重水電解法:夢のエネルギーへの挑戦

- 重水電解法とは 重水電解法とは、水を電気分解して水素と酸素に分解する技術ですが、ただの水ではなく、「重水」と呼ばれる特殊な水を使用するのが特徴です。 重水とは、通常の水素原子よりも重い「重水素」を含む水のことで、天然の水にもごくわずかに含まれています。この重水を電気分解することで、核融合反応の燃料となる重水素を取り出すことが目的です。 核融合反応は、太陽のエネルギー源でもある反応で、非常に大きなエネルギーを生み出すことができます。もし、この反応を人工的に制御できるようになれば、エネルギー問題を解決する夢の技術となる可能性を秘めています。 重水電解法は、この夢のエネルギー実現に向けた重要な鍵となる技術として期待されています。しかし、実用化にはまだ多くの課題が残されており、現在も世界中で研究開発が進められています。
放射線について

放射線と吸収線量の関係

- 吸収線量とは放射線は私たちの身の回りに存在していますが、目に見えないため、どれくらい浴びているのかを直接知ることはできません。そこで、物質が放射線を浴びた際に、どれだけのエネルギーを吸収したかを数値で表す指標が必要となります。これが吸収線量です。放射線は、物質を構成する原子にエネルギーを与えることで影響を及ぼします。このエネルギー量は放射線の種類や強さによって異なり、エネルギー量が多いほど、物質への影響が大きくなる可能性があります。例えば、私たちの身体も放射線を浴びるとエネルギーを吸収します。吸収するエネルギー量が低い場合は、細胞への影響は軽微ですが、高い場合は細胞が損傷を受け、健康に影響が生じる可能性があります。そのため、放射線による生物への影響を評価する上で、吸収線量は非常に重要な指標となっています。吸収線量は、医療現場での放射線治療や、原子力発電所などにおける放射線管理など、様々な場面で用いられています。
原子力施設

ADS開発を牽引する欧州のXADS計画

エネルギー資源の乏しい我が国において、原子力発電は欠かすことのできない発電方法の一つです。しかし、従来の原子力発電は、安全性や高レベル放射性廃棄物の処理などが課題として挙げられてきました。これらの課題を解決し、より安全でクリーンなエネルギー源として期待されているのが、「加速器駆動システム(ADS)」を用いた次世代原子力発電です。 従来の原子炉では、ウランやプルトニウムなどの核分裂しやすい物質を炉心に配置し、連鎖的に核分裂反応を起こすことで熱エネルギーを生み出しています。一方、ADSは加速器を用いて陽子を光速に近い速度まで加速させ、重金属の標的に衝突させることで中性子を発生させます。この中性子を核燃料に照射することで核分裂反応を制御します。 ADSには、従来の原子炉と比べて次のような利点があります。まず、加速器を停止させることで核分裂反応を瞬時に止めることができるため、安全性に優れています。次に、長寿命の放射性廃棄物を短寿命の物質に変換することができるため、環境負荷を低減できます。さらに、ウラン資源を有効活用できるという点も大きなメリットです。 ADSは、次世代の原子力発電の鍵となる技術として、世界中で研究開発が進められています。実用化にはまだ時間がかかるとされていますが、エネルギー問題や環境問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めた技術として、今後の発展に期待が寄せられています。
原子力の安全

原子炉の安全を守る!補助給水系とは?

原子力発電所では、原子炉の運転が停止した後も、核燃料は熱を出し続けます。この熱を「残留熱」と呼びますが、放置すると原子炉内の温度が過度に上昇し、炉心損傷などの深刻な事故につながる可能性があります。そこで、残留熱を安全に除去するために設けられているのが補助給水系です。 補助給水系は、その名の通り、原子炉に冷却水を供給する役割を担っています。通常運転時、原子炉には主給水ポンプによって冷却水が送り込まれていますが、停電やポンプの故障など、万が一の事態が発生した場合、主給水系が機能しなくなる可能性があります。このような場合に備え、補助給水系は、独立した電源やポンプ、配管などを備え、非常時でも確実に原子炉に冷却水を供給できるよう設計されています。 補助給水系は、原子力発電所の安全性を確保する上で非常に重要なシステムであり、その信頼性は厳しく要求されます。定期的な点検や試験を通して、常に万全の状態に保たれています。
その他

重水電解反応:幻のエネルギー革命?

エネルギー問題は、現代社会にとって大きな課題です。未来に向けて持続可能な社会を実現するためには、環境への負荷が少なく、かつ安定供給が可能なエネルギー源の確保が不可欠です。このような背景のもと、『夢のエネルギー』として期待を集めているのが核融合エネルギーです。 核融合とは、太陽が莫大なエネルギーを生み出す原理と同じ原理を利用したものです。軽い原子核同士が融合してより重い原子核になる際に、膨大なエネルギーが放出されます。核融合反応は、ウランなどの核分裂反応とは異なり、高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しないという大きな利点があります。また、燃料となる重水素は海水中に豊富に存在するため、事実上無尽蔵のエネルギー源とみなすことができます。 核融合を実現する方法の一つとして、重水電解反応があります。これは、特殊な条件下で重水を電気分解することで、核融合反応を誘起しようとするものです。重水は自然界に存在する水の仲間で、通常の電気分解よりも少ないエネルギーで分解することができます。もし、重水電解反応によって核融合エネルギーの実用化に成功すれば、私たちの社会は大きく変貌するでしょう。エネルギー問題は根本的に解決し、クリーンで安全なエネルギーを手に入れることができるかもしれません。 しかしながら、核融合の実現には、まだ多くの課題が残されています。特に、超高温・高圧状態を作り出し、それを長時間維持することが技術的に非常に困難です。現在、世界中の研究機関が協力して、核融合の実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。夢のエネルギーの実現に向けて、挑戦はこれからも続きます。
原子力の安全

原子力発電と世界気象機関(WMO)の連携

世界気象機関(WMO)は、地球全体の大気や海洋、そしてそれらが陸地に与える影響について理解を深め、情報を共有するために設立された国際機関です。第二次世界大戦後、世界規模での気象情報の重要性が高まり、国際的な協力体制を築く必要性から、1950年に国際連合の専門機関として誕生しました。 WMOは、世界193の国と地域からなる組織であり、気象観測や予測、気象災害への備えなど、広範囲な活動を行っています。具体的な活動としては、世界中の気象機関が観測したデータを集約し、各国に提供することで、より精度の高い天気予報や気候予測の実現を支援しています。また、気象災害の危険性がある地域に対して、早期警戒システムの構築や防災訓練の支援なども行っています。 近年、地球温暖化の影響が深刻化する中で、WMOの役割はますます重要になっています。WMOは、気候変動に関する最新の科学的知見を提供し、国際社会が温暖化対策を推進する上で重要な役割を担っています。
放射線について

物質のバリア能力:吸収係数

- 吸収係数とは物質に電磁波や粒子線が照射されると、物質はそのエネルギーを吸収し、その強度が弱まります。これは物質が持つ一種の「遮蔽能力」といえます。この遮蔽能力の強さを表す指標として、「吸収係数」が使われています。たとえば、光を例に考えてみましょう。光が物質を通過するとき、その一部は物質に吸収され、弱くなります。 吸収係数は、物質がどれくらい光を吸収するのかを示す数値です。吸収係数が大きいほど、物質は光をよく吸収し、光の強度は大きく減少します。逆に、吸収係数が小さいほど、物質は光をあまり吸収せず、光の強度はあまり減少しません。吸収係数は、物質の種類によって異なります。これは、物質を構成する原子の種類や配列、密度などが異なるためです。それぞれの物質は、それぞれの物質固有の吸収係数を持っています。この吸収係数は、様々な分野で応用されています。医療分野では、レントゲン撮影において、人体組織におけるX線の吸収の度合いを調整するために利用されます。また、原子力分野では、放射線の遮蔽材の設計に不可欠な要素となっています。 吸収係数の理解は、物質と電磁波や粒子線との相互作用を理解する上で非常に重要です。
原子力の安全

原子力の平和利用を守る仕組み:保障措置とは

- 保障措置の目的 原子力発電をはじめとした原子力の平和利用は、私たちの社会に様々な恩恵をもたらす一方で、軍事転用される可能性も孕んでいます。もしも、発電などに使用されるはずの核物質が、兵器の開発に利用されてしまったら、国際社会の安全が脅かされる事態になりかねません。 そこで、核物質が平和的な目的だけに利用されていることを国際的に確認し、軍事転用を防ぐための仕組みとして、保障措置が設けられています。これは、国際原子力機関(IAEA)による査察などを柱とした、世界共通の監視システムです。 保障措置は、核兵器の拡散を防止するとともに、原子力の平和利用を促進するという、国際社会全体の利益につながる重要な役割を担っていると言えるでしょう。具体的には、各国がIAEAと締結した保障措置協定に基づき、核物質の在庫や移動などをIAEAに報告し、IAEAは報告内容が正しいことを確認するために、査察などを行っています。 このように、保障措置は、国際的な協力と信頼関係のもとに成り立っており、原子力の平和利用を持続可能なものとするために、欠かせないものです。
その他

資源の未来を考える: 究極埋蔵量とは?

地球上に存在する資源には限りがあるという認識は、持続可能な社会を目指す上で非常に重要です。特に、私たちの生活に欠かせないエネルギー資源において、将来的な枯渇の可能性は目を背けられない課題として突きつけられています。 石油や天然ガスといった、いわゆる化石燃料は、現在の社会活動にとって無くてはならないエネルギー源です。しかし、これらの資源は、太古の生物の遺骸が長い年月をかけて変化してできたものであり、地球上に存在する量は限られています。つまり、使い続ければいつかは枯渇してしまうのです。 そこで重要となるのが「究極埋蔵量」という考え方です。これは、地球上に存在する資源の総量を表すものです。資源の枯渇性を理解する上で、この究極埋蔵量を把握することは非常に重要です。 究極埋蔵量は、技術的な進歩や新たな発見によって増減する可能性もあります。しかし、いずれにしても地球上の資源には限りがあるという事実を忘れてはなりません。将来世代に豊かな地球環境を引き継いでいくためにも、資源の有限性を認識し、省エネルギーや再生可能エネルギーの利用など、持続可能な社会を実現するための取り組みを積極的に進めていく必要があります。
原子力施設

WAGR:英国の原子力技術の礎

- WAGRとはWAGRは「Windscale Advanced Gas-Cooled Reactor」の略称で、日本語では「ウィンズケール改良型ガス冷却炉」と訳されます。1962年から1981年まで、イギリスのウィンズケール原子力研究所で稼働していた原子炉です。WAGRは、その名の通り「改良型ガス冷却炉」と呼ばれるタイプの原子炉です。これは、黒鉛を減速材に、二酸化炭素を冷却材に用いる、当時としては最先端の技術でした。この技術は、従来の原子炉よりも高い熱効率と安全性を実現する可能性を秘めており、イギリスの原子力発電技術の進歩を象徴する重要な存在でした。WAGRは、36メガワットの電力を供給していました。これは、当時のイギリスにおける原子力発電所の規模としては比較的小規模でしたが、改良型ガス冷却炉の実用性を示すための重要な実験炉としての役割を担っていました。WAGRで得られた貴重なデータや運転経験は、その後、イギリス国内だけでなく、世界各地で建設された商用規模の改良型ガス冷却炉の設計や建設に活かされました。このように、WAGRは、イギリスにおける原子力発電の未来を拓く先駆的な役割を果たした原子炉と言えるでしょう。
原子力の安全

原子力発電の安全を守る保守管理

原子力発電所は、私たちの暮らしに欠かせない電気を供給する重要な施設です。安全で安定した電力供給のためには、原子力発電所を構成する様々な機器が正常に機能することが不可欠です。巨大かつ複雑な機器を取り扱う原子力発電所において、これらの機器の信頼性を維持し、発電所の安全運転を継続するために、保守管理は極めて重要な役割を担っています。 原子力発電所における保守管理は、機器の点検、修理、交換、そして改良など、多岐にわたる作業を含んでいます。定期的な点検では、機器の状態を詳細に検査し、異常の兆候を早期に発見することで、深刻な事故を未然に防ぎます。また、長年の運転で劣化したり、技術の進歩によってより安全性の高い機器が登場したりした場合には、計画的に修理や交換を実施します。さらに、過去の経験や最新の技術に基づいて、機器の性能や安全性を向上させるための改良工事も行われます。 このように、原子力発電所における保守管理は、発電所の安全性と信頼性を確保するために、欠かすことのできない重要な業務です。原子力発電所は、私たちの社会に欠かせない電力を供給し続けるために、日々、保守管理を含む様々な努力を続けています。
その他

資源の未来を考える:究極量の重要性

私たちが暮らす地球には、様々な資源が存在しますが、その量は無限ではありません。特に、現代社会にとって欠かせない石油や天然ガスといったエネルギー資源は、限りある資源です。この資源の有限性を示す重要な概念が「究極量」です。 究極量とは、地球上に存在する資源の総量を指します。資源がどれくらい存在するのか、その全体量を知ることで、私たちは資源の枯渇性について真剣に考えることができます。 例えば、ある資源の究極量があと100年分と分かれば、その資源に頼り続けることは難しく、代替となる資源の開発や省エネルギー化など、早急な対策が必要となります。このように、究極量は、私たちが資源の有限性を認識し、持続可能な社会を実現するために欠かせない指標と言えるでしょう。 資源の枯渇は、私たちの生活や経済活動に大きな影響を与えます。究極量を理解し、資源を大切に使い、未来に向けて持続可能な社会を築くために、私たち一人ひとりの行動が求められています。
原子力の安全

世界をつなぐ原子力安全の要: WANO

- WANOとはWANOは、World Association of Nuclear Operatorsの略称で、日本語では「世界原子力発電事業者協会」といいます。1986年に発生したチェルノブイル原発事故は、世界に大きな衝撃を与えました。この事故を教訓に、世界中の原子力発電所において、安全性を一層向上させる必要性が強く叫ばれるようになりました。原子力発電所の安全確保は、もはや一国だけの問題ではなく、国際的な連携が不可欠であるという認識が広がっていったのです。そこで、原子力発電事業者が自ら主体となって、安全に関する経験や教訓を共有し、互いに協力し合うことを目的として、1989年にWANOが設立されました。WANOは、世界中の原子力発電事業者を会員とする非営利団体であり、本部はイギリスのロンドンに置かれています。WANOは、原子力発電所の安全性と信頼性を向上させるために、様々な活動を行っています。具体的には、会員である原子力発電所同士が相互に視察を行い、安全性に関する評価や改善提案を行うピアレビュー、安全に関する情報を共有するための国際会議やワークショップの開催、事故・故障情報の分析と共有、安全性向上のためのガイドラインや基準の策定などです。WANOの活動は、世界中の原子力発電所の安全性の向上に大きく貢献しています。
放射線について

体内を照らす光:ポジトロンCTとは

- ポジトロンCTとは何かポジトロンCTは、体内の活動状況を鮮明な画像で捉えることができる、最新の画像診断技術です。 CTやMRIが体の臓器や血管などの構造を主に映し出すのに対し、ポジトロンCTは細胞や組織の機能を可視化できる点が大きな特徴です。検査では、微量の放射性物質を含む薬剤を体内に投与します。この薬剤は、ブドウ糖のように、がん細胞など活発に活動している細胞に集まる性質を持っています。 薬剤が集まった部分からは、「ポジトロン」と呼ばれる微粒子が放出されます。ポジトロンCTはこのポジトロンを検出し、コンピューター処理によって画像化することで、がん細胞など活発な細胞がどこにあるのか、その大きさや形はどうかなどを詳細に把握することができます。ポジトロンCTは、がんの診断だけでなく、心臓病や脳疾患など、様々な病気の診断にも用いられています。 また、治療の効果判定や、病気の進行状況を把握するためにも利用されています。従来の画像診断では分からなかった体の機能を捉えることができるため、病気の早期発見や、より適切な治療法の選択に役立つことが期待されています。
原子力の安全

原子力発電の心臓を守る、キャンドローターポンプ

- キャンドローターポンプとはキャンドローターポンプは、その名の通り、缶詰のような独特な形状をしたポンプです。一般的なポンプは、モーターで軸を回転させ、その回転をポンプ部に伝えることで液体を送り出します。しかし、キャンドローターポンプは、モーターの回転子とポンプの回転部分を一体化し、直接作動液の中に沈めて使用します。一般的なポンプでは、回転を伝えるために軸とポンプ部の間に隙間が必要ですが、キャンドローターポンプにはその隙間がありません。そのため、液漏れのリスクが非常に低く、放射性物質を含む液体を扱う原子力発電所などで広く採用されています。また、軸を介さずに回転を伝えるため、振動や騒音が少なく、静粛性が高いことも特徴です。さらに、シンプルな構造であるため、小型化・軽量化が可能で、設置場所の自由度が高い点もメリットとして挙げられます。一方で、回転部分を作動液に浸す構造上、粘性の高い液体には適さないという側面もあります。このように、キャンドローターポンプは、原子力発電所をはじめ、高い信頼性と安全性が求められる現場で活躍する、特殊なポンプと言えます。
その他

未来を拓くWE-NET:水素エネルギーの展望

世界規模のエネルギーネットワーク、通称WE-NETは、私たちの未来を担う壮大なプロジェクトです。地球温暖化や資源の枯渇といった地球規模の課題を解決するために、世界中で注目されています。WE-NETの核となるのが、水素エネルギーです。水力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーは、場所や時間によって発電量が大きく変動するのが課題でした。そこで、これらのエネルギーを使って水素を作り出し、輸送・貯蔵することで、この問題を解決しようとしています。水素は燃焼しても二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、エネルギーを貯蔵しておくことも可能です。 WE-NETは、再生可能エネルギーが豊富な地域で水素を製造し、パイプラインやタンカーなどを用いて世界中に輸送します。そして、必要な時に必要な場所でエネルギーとして利用できるようにします。このように、時間や場所の制約を超えてエネルギーを共有することで、世界のエネルギー供給を安定化させることが期待されています。 WE-NETの実現には、技術開発や国際協力など、多くの課題を乗り越える必要があります。しかし、地球全体の未来のために、世界が協力してこのプロジェクトを推進していくことが重要です。
原子力の安全

原子炉の制御とポジティブスクラム

- 原子炉の制御原子炉の心臓部では、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こし、莫大なエネルギーを生み出しています。 この反応を安全かつ安定的に継続させるためには、核分裂で発生する中性子の数を精密に制御することが不可欠です。原子炉の出力調整において中心的な役割を担うのが「制御棒」です。制御棒は、中性子を吸収する性質を持つ物質で作られており、炉心に挿入したり引き抜いたりすることで、核分裂反応の速度を調整します。 制御棒を炉心に深く挿入すると、多くの中性子が吸収され、核分裂反応は抑制され、原子炉の出力は低下します。 反対に、制御棒を引き抜くと、中性子を吸収する量が減り、核分裂反応は促進され、原子炉の出力は上昇します。緊急時には、制御棒を完全に炉心に挿入することで、中性子のほとんど全てが吸収され、核分裂反応は連鎖的に停止します。これにより、原子炉は安全な状態へと導かれます。 このように、制御棒は原子炉の出力調整という重要な役割だけでなく、緊急時の安全確保にも欠かせない役割を担っているのです。
その他

世界の指標、WTI原油:価格の鍵握る軽質原油

- アメリカの油田から世界へ「WTI原油」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、アメリカ合衆国の中西部に位置するテキサス州の西部で採掘される原油を指します。「West Texas Intermediate」の頭文字をとって、WTI原油と呼んでいます。テキサス州とニューメキシコ州の州境に広がるパーミアン盆地は、近年、シェールオイルの増産によって、世界中から注目を集めています。この地域で産出されるWTI原油は、硫黄分の含有量が少なく、精製しやすい軽質原油であることが大きな特徴です。WTI原油から精製されるガソリンや灯油は、世界中で需要の高い石油製品です。そのため、WTI原油は世界のエネルギー市場において、主要な指標の一つとして、活発に取引されています。 アメリカの油田から採掘された原油は、海を渡り、世界中の国々へ届けられ、私たちの生活を支えています。
原子力の安全

原子力発電の安全性:キャリオーバー現象

- キャリオーバー現象とは原子力発電所では、原子炉内で発生した熱を冷却水が運び出すことで、安全に運転を続けています。この冷却水は、配管内を流れる際に部分的に沸騰し、水と蒸気が混ざり合った状態になることがあります。このような状況下では、配管内を流れる蒸気の速度が速くなると、「キャリオーバー現象」と呼ばれる現象が発生する可能性があります。キャリオーバー現象とは、本来は配管の下部に存在するはずの水が、蒸気の勢いによって上方に運ばれてしまう現象のことです。例えば、ストローでジュースを飲む際に、勢いよく吸い込むとジュースと一緒に空気が口に入ってきてしまうことがあります。これは、ストロー内を流れる空気の速度が速くなることで、ジュースが空気によって上方に運ばれてしまう、キャリオーバー現象の一種と言えます。原子力発電所において、このキャリオーバー現象は様々な問題を引き起こす可能性があります。例えば、蒸気発生器では、加熱された冷却水から発生した蒸気を利用してタービンを回し、発電を行っています。しかし、キャリオーバー現象によって水が蒸気と共に運ばれてしまうと、タービンの効率が低下したり、設備が損傷したりする可能性があります。このような事態を避けるため、原子力発電所では、配管内の蒸気の流れを制御したり、気水分離器と呼ばれる装置を用いて水と蒸気を分離したりするなど、様々な対策が講じられています。
その他

ホジキン病:放射線治療の効果が高い悪性リンパ腫

ホジキン病は、血液のがんである悪性リンパ腫の一種です。リンパ系は、全身に張り巡らされた免疫システムの一部であり、リンパ節、脾臓、骨髄などが含まれます。このリンパ系にできるがんが、悪性リンパ腫と呼ばれる病気です。 ホジキン病は、悪性リンパ腫の中でも、特徴的な癌細胞であるリード・ステルンベルグ細胞が見られるという点で、他の悪性リンパ腫と区別されます。この細胞は、顕微鏡で観察すると、二つ以上の核を持つ大きな細胞として確認できます。 ホジキン病は、初期には首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れることが多く、痛みを伴わない腫れであることが多いです。病気が進行すると、発熱、体重減少、寝汗、全身倦怠感などの症状が現れることもあります。 ホジキン病は、放射線療法や化学療法、造血幹細胞移植などの治療法によって、多くの場合完治が期待できる病気です。早期発見、早期治療が重要となりますので、気になる症状がある場合は、医療機関への受診をお勧めします。
その他

地球温暖化対策の多様なシナリオ:WREプロファイルとは

地球温暖化は、私たち人類にとって看過できない深刻な問題です。 人間の経済活動が活発になるにつれて、大気中に排出される温室効果ガスの量も増え続けています。 この温室効果ガスが、地球の気温を上昇させる主要な原因と考えられています。 温室効果ガスには様々な種類がありますが、中でも特に影響が大きいのが二酸化炭素です。 二酸化炭素は、石炭や石油などの化石燃料を燃焼させる際に発生します。 私たちの暮らしは、電気やガス、ガソリンなど、多くのエネルギーに支えられていますが、これらのエネルギー源の多くは化石燃料に依存しています。 つまり、私たちの便利な暮らしが、知らず知らずのうちに地球温暖化を加速させていると言えるのです。 地球温暖化の影響は、すでに世界各地で現れ始めています。 異常気象の発生や海面の上昇など、私たちの生活を脅かす深刻な事態も起こっています。 地球の平均気温の上昇を一定レベルに抑えるためには、大気中の温室効果ガスの濃度を安定させることが不可欠です。そのためには、 二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を大幅に削減する必要があります。
原子力の安全

原子炉とキャリアンダー現象

- キャリアンダー現象とは沸騰水型原子炉(BWR)のような、水が沸騰するタイプの原子炉では、冷却水が燃料棒の周りを通る際に蒸気泡が発生します。この蒸気泡は、密度が水よりも軽いため、自然と上昇しようとします。しかし、冷却水の流れが非常に速い場合、上昇しようとする蒸気泡は、流れに逆らえずに下方に押し流されることがあります。この現象をキャリアンダー現象と呼びます。キャリアンダー現象が発生すると、本来、燃料棒から熱を奪い去る役割を持つ冷却水が、蒸気泡によって燃料棒に接触しにくくなるため、熱の伝達が阻害される可能性があります。その結果、燃料棒の温度が異常に上昇し、最悪の場合、燃料棒の損傷に繋がる可能性もあるため、原子力発電所の安全性にとって非常に重要な現象です。キャリアンダー現象は、冷却水の流量や温度、圧力などの運転条件や、燃料集合体の形状など、様々な要因によって発生しやすさが変化します。そのため、原子力発電所では、これらの運転条件を適切に制御することで、キャリアンダー現象の発生を抑制しています。また、キャリアンダー現象が発生した場合でも、速やかに検知し、適切な対応が取れるよう、様々な監視装置が設置されています。
放射線について

保健物理:原子力と放射線を守る学問

現代社会において、原子力発電や医療といった分野で放射線は欠かせないものとなっています。目に見えないエネルギーである放射線は、私たちの生活に様々な恩恵をもたらしてくれる一方で、使い方を誤ると人体や環境に影響を与える可能性も秘めています。 放射線は、レントゲン撮影による病気の診断や、がん細胞を死滅させる放射線治療など、医療分野で広く活用されています。また、工業製品の検査や農作物の品種改良などにも利用され、私たちの生活を支えています。 しかし、放射線は使い方を誤ると、細胞や遺伝子に損傷を与え、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、放射線を取り扱う際には、適切な知識と安全対策が不可欠です。放射線の人体への影響や安全な取り扱い方を研究する学問が、『保健物理』です。保健物理は、放射線から人々と環境を守るために、放射線の測定方法や防護対策、法律や倫理など、多岐にわたる分野を網羅しています。 放射線は、正しく理解し、安全に利用することで、私たちに多くの恩恵をもたらしてくれる強力なエネルギーです。安心安全な社会を実現するために、放射線と安全に付き合っていくことが重要です。