原子力発電の未来を切り拓く: ATRとは
電力を見直したい
「原子力発電に関する用語『ATR』について説明を見つけたのですが、2つの説明があって、違いがよく分かりません。教えてください。」
電力の研究家
なるほど。『ATR』には確かに2つの意味があって紛らわしいよね。それぞれ、(1)は新型転換炉、(2)は新型試験炉の略称なんだ。で、君はどちらのATRについて知りたいのかな?
電力を見直したい
日本の「ふげん」について書かれていたので、(1)の新型転換炉について教えてください。
電力の研究家
良いところに気がついたね。「ふげん」は新型転換炉の1つだよ。新型転換炉は、従来の原子炉よりも核燃料を有効活用できて、資源の少ない日本で注目されている技術なんだ。
ATRとは。
「原子力発電に関する用語『ATR』には、二つの意味があります。一つ目は、『改良型熱中性子炉』の略称です。この炉は、現在広く使われている軽水炉やマグノックス炉よりも経済的に優れており、核燃料をより効率的に使うことができ、さらに様々な種類の核燃料を利用できる新型の転換炉のことを指します。日本の動力炉・核燃料開発事業団が開発した『ふげん』はこの炉を目指したものであり、日本ではこのタイプの炉を『新型転換炉』と呼んでいます。二つ目は、『新型試験炉』の略称です。これは、アメリカのEG&Gアイダホ社が所有する大型の試験研究炉で、軽水を減速材と冷却材に使うタンク型の炉です。熱出力は250メガワット、熱中性子束は8.5×10の14乗n/cm2/s、高速中性子束は1.5×10の14乗n/cm2/sで、1967年7月2日に初めて臨界に達しました。
ATR: 新型転換炉という革新
– ATR 新型転換炉という革新
ATRは、「新型転換炉」を意味する「Advanced Thermal Reactor」の頭文字をとったものです。従来の原子炉と比較して、経済性、燃料の効率性、そして燃料の種類の豊富さという点で優れた、次世代の原子力発電技術として期待されています。
ATRが注目される大きな理由の一つに、ウラン燃料の使用効率の高さがあります。従来の原子炉よりも多くのエネルギーを取り出すことができるため、資源の有効活用に繋がります。さらに、プルトニウムを燃料として使用できるという点も大きな特徴です。プルトニウムはウラン燃料の使用済み燃料から取り出すことができ、これを燃料として活用することで、核燃料資源をより有効に活用することが可能となります。
このように、ATRは高い安全性と経済性を両立し、資源の有効活用にも貢献する、将来性のある原子力発電技術として、更なる研究開発が進められています。
項目 | 内容 |
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炉型 | 新型転換炉 (ATR: Advanced Thermal Reactor) |
特徴 | – 経済性が高い – 燃料効率が良い – 使用可能な燃料の種類が豊富 |
メリット | – ウラン燃料の使用効率が高く、資源の有効活用に繋がる – プルトニウムを燃料として使用できるため、核燃料資源の有効活用が可能 |
日本のATR開発:新型転換炉「ふげん」
– 日本のATR開発新型転換炉「ふげん」日本は、エネルギー資源の乏しい島国という地理的条件から、エネルギー自給率の向上を目指し、早くから原子力発電の開発に取り組んできました。その中でも特に注目されたのが、「新型転換炉(ATR)」と呼ばれる、ウラン資源を有効活用できる原子炉の開発です。そして、この新型転換炉の開発において、中心的な役割を担ったのが「ふげん」という実験炉でした。「ふげん」は、福井県敦賀市に建設され、1978年から2003年までの25年間、運転されました。この原子炉は、通常の原子炉とは異なり、ウラン燃料をより効率的に利用できるだけでなく、使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、再び燃料として利用する「プルサーマル」技術の実証炉としての役割も担っていました。「ふげん」の運転実績は極めて高く、大きなトラブルもなく、安全かつ安定的に運転を続けることに成功しました。これにより、新型転換炉の高い安全性と信頼性が実証され、日本の原子力技術の進歩に大きく貢献しました。「ふげん」で得られた貴重なデータや経験は、その後の新型転換炉の実用化に向けた研究開発に活かされています。現在、「ふげん」は運転を終了し、解体の作業が進められています。しかし、「ふげん」が日本の原子力開発の歴史に残した功績は大きく、将来のエネルギー問題解決への道筋を示したと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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炉型 | 新型転換炉(ATR) |
炉名 | ふげん |
設置場所 | 福井県敦賀市 |
運転期間 | 1978年~2003年(25年間) |
主な特徴 | – ウラン燃料をより効率的に利用可能 – プルサーマル技術の実証炉 |
運転実績 | 大きなトラブルもなく、安全かつ安定的に運転 |
功績 | – 新型転換炉の高い安全性と信頼性を実証 – 日本の原子力技術の進歩に貢献 – 将来のエネルギー問題解決への道筋を示した |
ATR:新型試験炉という側面
新型試験炉という側面からATRを見ていきましょう。ATRはAdvanced Test Reactorの略称で、アメリカ合衆国アイダホ州に位置する世界最大級の試験研究炉です。1967年の運転開始以来、原子力技術の発展に欠かせない役割を担ってきました。
ATRは、主に材料試験や燃料の照射試験を目的としています。具体的には、新型の原子炉で使用する材料が、高温や強い放射線に長期間さらされた際にどのような変化を見せるのかを調べるために利用されています。また、燃料の耐久性や安全性を評価する試験にも活用されています。
ATRの特徴は、軽水を冷却材と減速材の両方に用いている点と、タンク型の構造をしている点です。軽水は、中性子を減速させ、核分裂反応を維持する役割を担っています。タンク型は、原子炉の炉心部と冷却材を貯蔵する部分を一体化した構造で、安全性が高いとされています。
このように、ATRは、その性能と特徴から、新型炉の開発に必要不可欠な試験研究炉として、世界中で高く評価されています。
項目 | 内容 |
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名称 | ATR (Advanced Test Reactor) |
場所 | アメリカ合衆国アイダホ州 |
運転開始年 | 1967年 |
目的 | 材料試験、燃料の照射試験 |
特徴 | – 軽水を冷却材と減速材の両方に使用 – タンク型の構造 |
役割 | 新型原子炉の開発に必要不可欠な試験研究炉 |
未来への展望:ATRの技術革新
未来への展望ATRの技術革新
原子力技術の中でも、ATR(新型転換炉)は資源の有効利用、高い安全性、優れた経済性など、多くの利点を持つことから、将来の原子力発電を担う技術として期待されています。
日本では、過去に新型転換炉「ふげん」の開発や、試験研究炉ATRでの長年の研究を通じて、ATRに関する豊富な経験と世界トップレベルの技術を蓄積してきました。これらの貴重な財産を基盤として、さらなる技術革新が期待されています。
ATRは、ウラン資源をより効率的に利用できるだけでなく、プルトニウムを燃料として利用できるという特徴も持っています。そのため、ウラン資源が乏しい日本において、エネルギー自給率の向上やエネルギー安全保障の観点から非常に重要な選択肢となり得ます。
将来に向け、ATRの技術開発をさらに推進していくことで、より安全で持続可能な社会の実現に貢献できると期待されています。
項目 | 内容 |
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技術 | ATR (新型転換炉) |
利点 |
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特徴 |
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日本における現状と展望 |
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期待される効果 |
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