アイスコンデンサ型原子炉の仕組み

アイスコンデンサ型原子炉の仕組み

電力を見直したい

先生、アイスコンデンサ型プラントって、普通の原子力発電所と何が違うんですか?

電力の研究家

良い質問だね!アイスコンデンサ型プラントは、原子炉が入っている格納容器に、たくさんの氷を常備している点が特徴なんだ。

電力を見直したい

氷ですか? なんで、氷があるんですか?

電力の研究家

万が一、原子炉で事故が起きた時に、そこから蒸気がたくさん出てしまうんだけど、その蒸気を氷で冷やすことで、格納容器の中が過度に高温になったり、圧力が上がりすぎたりするのを防ぐことができるんだ。だから、格納容器を小さく、頑丈に作ることができるんだよ。

アイスコンデンサ型プラントとは。

「アイスコンデンサ型プラント」っていうのは、原子力発電で使われる言葉で、簡単に言うと、原子炉が入っている建物の周りに、いつも氷がいっぱい詰まった場所があるような発電所のことを指します。もしも、事故が起きて原子炉を冷やす水が漏れてしまっても、そこから出る蒸気を氷の詰まった場所に送って冷やすことで、建物の圧力や温度が上がりすぎるのを防ぐことができるんです。そのため、このタイプの建物は、他のタイプのものと比べて、圧力に耐えるための強度は約25%低くても大丈夫ですし、大きさも約50%小さくできるというメリットがあります。この「アイスコンデンサ型プラント」は、実は大飯発電所の1号機にも使われているんですよ。

アイスコンデンサ型原子炉とは

アイスコンデンサ型原子炉とは

– アイスコンデンサ型原子炉とはアイスコンデンサ型原子炉は、万が一の原子炉の事故に備え、格納容器内に大量の氷を貯蔵しておくという特徴を持つ原子炉です。原子炉で作り出された熱は、通常運転時には一次冷却材と呼ばれる水によって運び出され、蒸気発生器で二次冷却水を蒸気に変えることで、タービンを回し発電を行います。しかし、配管の破損などにより一次冷却材が失われてしまうと、原子炉で発生した熱を十分に冷やすことができなくなり、炉心の温度が急上昇する可能性があります。このような事態を一次冷却材喪失事故と呼びます。アイスコンデンサ型原子炉では、この一次冷却材喪失事故が発生した場合でも、格納容器内に設置された大量の氷によって原子炉から発生する高温高圧の蒸気を冷却し、格納容器内の圧力と温度の上昇を抑制することで、格納容器の破損を防ぎ、放射性物質の外部への漏洩を防ぎます。 アイスコンデンサは、この大量の氷を貯蔵しておくための設備です。アイスコンデンサ型原子炉は、安全性が高いと考えられていますが、氷の維持管理にコストがかかることや、格納容器が大型化するという点が課題として挙げられます。

項目 内容
原子炉の種類 アイスコンデンサ型原子炉
特徴 格納容器内に大量の氷を貯蔵
目的 一次冷却材喪失事故時の炉心温度の上昇抑制と放射性物質の漏洩防止
通常運転時の熱の運び出し方 一次冷却材(水)→蒸気発生器で二次冷却水を蒸気に変換→タービンを回し発電
アイスコンデンサの役割 一次冷却材喪失事故時に、高温高圧の蒸気を冷却し、格納容器内の圧力と温度の上昇を抑制
メリット 安全性が高い
デメリット 氷の維持管理コストがかかる、格納容器が大型化する

仕組みと利点

仕組みと利点

– 仕組みと利点原子力発電所では、万が一の事故時に放射性物質が外部に漏れることを防ぐため、原子炉を頑丈な格納容器で包み込んでいます。アイスコンデンサ型原子炉は、この格納容器内に設置された「アイスコンデンサ」と呼ばれる特別な区画を用いることで、高い安全性を確保しています。アイスコンデンサには、大量の氷が常に凍結状態で保管されています。事故発生時に原子炉から高温高圧の蒸気が発生した場合、この蒸気はアイスコンデンサへと導かれます。蒸気は、アイスコンデンサ内で氷と直接接触することで急速に冷却され、水へと変化します。この冷却効果により、格納容器内の圧力と温度の上昇は大幅に抑えられます。結果として、格納容器にかかる負担を軽減し、破損を防ぐことができるのです。従来型の格納容器では、蒸気を冷却するために大量の水を使用する「ドライ型」と呼ばれる方式が一般的でした。アイスコンデンサ型は、このドライ型に比べて、格納容器の設計圧力を約25%低く、容積を約50%小さくすることができます。これは、建設コストの削減や敷地面積の縮小に繋がるという大きな利点となります。加えて、必要な水の量も減らせるため、環境負荷の低減にも貢献します。

項目 アイスコンデンサ型 従来型(ドライ型)
冷却方法 氷と蒸気を直接接触させる 大量の水を使用
格納容器の設計圧力 約25%低い
格納容器の容積 約50%小さい
建設コスト 低い 高い
敷地面積 小さい 大きい
環境負荷 低い 高い

大飯1号原子力発電所での採用

大飯1号原子力発電所での採用

我が国では、関西電力が運営する大飯発電所1号機に、氷を用いた冷却システムを持つ原子炉が採用されています。この原子炉は、1979年に運転を開始した、加圧水型と呼ばれる種類のものです。

氷を用いた冷却システムを持つ原子炉は、従来の原子炉と比較して安全性が高いと言われており、深刻な事故発生時の影響を大幅に抑制することが期待されています。例えば、炉心冷却水が喪失するような深刻な事故が発生した場合でも、原子炉格納容器内にあらかじめ設置された大量の氷が溶け出すことで、蒸気を冷却し格納容器内の圧力上昇を抑えることができます。

一方で、このシステムには、大量の氷を長期間にわたって適切な状態で保管・管理するための特別な設備や運用手順が必要となるなどの課題も存在します。具体的には、氷の保管庫の巨大化や、保管中の氷の品質維持のための定期的な検査などが挙げられます。これらの課題を克服し、氷を用いた冷却システムの安全性を最大限に活かすためには、更なる技術開発や運用経験の蓄積が不可欠です。

項目 内容
原子炉の種類 加圧水型原子炉
運転開始年 1979年
特徴 氷を用いた冷却システムを採用
メリット – 従来の原子炉より安全性が高い
– 事故発生時の影響抑制 (炉心冷却水喪失時でも、氷が溶けて蒸気を冷却し圧力上昇を抑える)
課題 – 大量の氷を長期間保管・管理する設備や運用手順が必要
– 氷の保管庫の巨大化
– 保管中の氷の品質維持のための定期的な検査

安全性と今後の展望

安全性と今後の展望

– 安全性と今後の展望アイスコンデンサ型原子炉は、その名の通り、炉心の周囲に大量の氷を蓄えた格納容器を持つ原子炉です。事故発生時、炉心で発生した蒸気がこの氷と接触することで急激に冷却され、格納容器内の圧力上昇が抑えられます。この仕組みにより、アイスコンデンサ型原子炉は、従来型の原子炉に比べて、事故時の圧力抑制効果が非常に高く、安全性が高い原子炉であると言えます。しかしながら、国内では、1978年に運転を開始した大飯発電所1号機のみがアイスコンデンサ型原子炉を採用しているに留まり、現在、新規建設の計画は存在しません。これは、アイスコンデンサ型原子炉が、従来型原子炉に比べて、建設コストが高額であること、また、大量の氷を常に冷却しておくための維持管理が複雑で費用がかさむことなどが要因として考えられます。世界的に見ると、アイスコンデンサ型原子炉は、アメリカの一部の原子力発電所で稼働しています。しかし、新規建設は限定的であり、近年は、より建設コストが抑えられ、維持管理も容易な新型原子炉の開発が進んでいます。今後、原子力発電所の安全性に対する社会からの要求はますます高まることが予想されます。このような状況下において、高い安全性を有するアイスコンデンサ型原子炉の技術が見直され、再び脚光を浴びる可能性も考えられます。

項目 内容
特徴 炉心の周囲に大量の氷を蓄えた格納容器を持つ。事故発生時、炉心で発生した蒸気が氷と接触することで急激に冷却され、格納容器内の圧力上昇が抑えられる。
メリット 従来型原子炉に比べて、事故時の圧力抑制効果が非常に高く、安全性が高い。
デメリット – 建設コストが高額
– 大量の氷を常に冷却しておくための維持管理が複雑で費用がかさむ
現状 – 国内では大飯発電所1号機のみ稼働、新規建設計画なし
– 世界的にはアメリカの一部の原子力発電所で稼働、新規建設は限定的
今後の展望 原子力発電所の安全性に対する社会からの要求の高まりを受け、高い安全性を有するアイスコンデンサ型原子炉の技術が見直され、再び脚光を浴びる可能性もある。