日英共同研究:MOZART計画

日英共同研究:MOZART計画

電力を見直したい

先生、「MOZART計画」って、どんな計画だったんですか?原子力発電の勉強をしていて出てきたんですが、よく分からなくて…

電力の研究家

良い質問だね。「MOZART計画」は、日本が高速炉「もんじゅ」を作る際に、イギリスと協力して炉心の性能を事前に確かめるための実験計画だったんだよ。

電力を見直したい

なるほど。それで、どんな実験をしたんですか?

電力の研究家

二つの国で分担して実験を行ったんだ。イギリスでは、実物に近い大きさの模擬実験を、日本の「FCA」という装置では「もんじゅ」の一部分を模擬した実験を行ったんだよ。そして、これらの実験結果をもとに「もんじゅ」の炉心設計が進んでいったんだ。

MOZART計画とは。

「MOZART計画」は、原子力発電に使われる、実物と同じくらいの大きさの高速増殖炉の安全性を確かめるための研究のことです。この研究は、日本とイギリスが協力して行いました。昭和46年から1年半の間は、イギリスのウィンフリス研究所にあるZEBRAという実験装置を使って、実物に近い形で実験を行いました。その後、さらに詳しく調べるために、昭和47年から5年間かけて、日本のFCAという実験装置を使って、一部を模倣した実験を行いました。これらの実験を通して、高速増殖炉の設計に必要なデータを集めることができました。

高速増殖炉開発の要

高速増殖炉開発の要

高速増殖炉は、資源の乏しい我が国にとって、エネルギー問題解決の切り札として期待されています。その実現のためには、炉心内部で起こる核分裂反応を精密に制御し、安全性を確保することが何よりも重要です。この核分裂反応の特性を「炉心の核特性」と呼びますが、これを正確に把握することは、高速増殖炉の開発・運転において避けて通れない課題です。

MOZART計画は、日英両国が協力して実施した高速増殖炉の炉心の核特性に関する先駆的な研究計画でした。この計画では、実験とシミュレーションを組み合わせた革新的な手法を用いることで、炉心内の複雑な現象の解明に挑みました。具体的には、実験用の高速炉を用いて実際に核分裂反応を起こし、その際に得られる膨大なデータを詳細に分析しました。同時に、コンピュータを用いた高度なシミュレーションを実施することで、実験では観測が困難な現象までをも詳細に再現しようと試みました。

MOZART計画で得られた成果は、その後の高速増殖炉の設計や安全性の評価に大きく貢献しました。日英両国の研究者の協力によって生まれたこの計画は、高速増殖炉開発における国際協力の成功例としても高く評価されています。

項目 内容
高速増殖炉の課題 炉心内部の核分裂反応(炉心の核特性)を精密に制御し、安全性を確保すること
MOZART計画 日英協力による高速増殖炉の炉心の核特性に関する研究計画
– 実験とシミュレーションを組み合わせた革新的な手法
– 実験炉によるデータ分析とコンピュータシミュレーション
– 高速増殖炉の設計や安全性の評価に貢献
– 国際協力の成功例

日英の頭脳と技術の結集

日英の頭脳と技術の結集

1971年から一年半にわたり、日本とイギリスは「モーツァルト計画」という共同研究プロジェクトを進めました。これは、当時両国が開発を目指していた高速増殖炉の実現に向けて、極めて重要なものでした。舞台となったのは、イギリスのウィンフリス研究所に設置された高速臨界実験装置「ZEBRA」です。この実験装置は、実際に稼働する原子炉と同じような核分裂の連鎖反応を安全に制御しながら模擬できるため、高速増殖炉の開発に不可欠なものでした。特に「ZEBRA」は、当時構想されていた実用規模の大型高速炉を模擬した大規模な実験が可能な、世界でも数少ない装置の一つでした。
日英の研究者たちは、この「ZEBRA」を用いた共同研究において、それぞれの持ち味を生かした貢献をしました。イギリス側は、長年にわたり高速炉の研究開発で培ってきた豊富な経験と高度な実験技術を提供しました。一方、日本側は、独自の解析技術や新しい実験手法を駆使することで、実験データの精度向上に大きく貢献しました。このように、日英の研究者たちは、互いの知識と経験を共有し、緊密な連携体制のもとで実験データの取得と解析に取り組みました。その結果、高速増殖炉の開発に必要な貴重なデータを得ることができ、両国の高速炉開発は大きく前進しました。

項目 詳細
プロジェクト名 モーツァルト計画
期間 1971年から一年半
参加国 日本、イギリス
目的 高速増殖炉の開発
使用装置 高速臨界実験装置「ZEBRA」(イギリス・ウィンフリス研究所)
「ZEBRA」の特徴 – 実際に稼働する原子炉と同じような核分裂の連鎖反応を安全に制御しながら模擬できる
– 当時構想されていた実用規模の大型高速炉を模擬した大規模な実験が可能な、世界でも数少ない装置の一つ
イギリス側の貢献 長年の高速炉研究開発で培った豊富な経験と高度な実験技術の提供
日本側の貢献 独自の解析技術や新しい実験手法による実験データの精度向上
成果 高速増殖炉の開発に必要な貴重なデータの取得、両国の高速炉開発の進展

ZEBRA実験装置を用いた大規模模擬実験

ZEBRA実験装置を用いた大規模模擬実験

– ZEBRA実験装置を用いた大規模模擬実験原子力発電の中でも、高速炉はウラン資源の有効利用や高い安全性など、多くの利点を持つ次世代の原子炉として期待されています。高速炉の開発においては、炉心の設計が極めて重要となります。炉心は、核分裂反応が生じる心臓部であり、その設計には中性子の振る舞いを正確に把握することが不可欠です。従来、炉心の設計には計算機シミュレーションが広く用いられてきましたが、高速炉のように複雑な構造を持つ炉心では、計算だけでは予測が困難な現象も存在します。そこで、実物に近い環境で実験を行い、核分裂反応の連鎖反応を詳細に調べる必要がありました。この課題を解決するために活躍するのが、ZEBRA実験装置です。ZEBRA実験装置は、高速炉の炉心を模擬した大規模な実験施設であり、実寸大に近い炉心を再現することができます。この装置では、ウランやプルトニウムなどの核燃料を模擬した材料を組み合わせて炉心を構成し、実際に中性子を照射することで、核分裂反応の連鎖反応を制御しながら実験を行うことができます。MOZART計画では、このZEBRA実験装置を用いて、様々な条件下における高速炉の炉心の核特性を詳細に測定しました。具体的には、燃料の種類や組成、炉心の温度や冷却材の流量などを変化させながら、中性子の増倍率や反応度などの重要なパラメータを測定しました。これらの実験データは、それまで計算に頼っていた部分を補完し、大型高速炉の設計に必要な貴重なデータとなりました。ZEBRA実験装置を用いた大規模模擬実験は、高速炉の開発に大きく貢献しました。得られた実験データは、計算コードの検証や改良に活用され、より高精度な炉心設計を可能にするための基盤となっています。

項目 内容
背景 – 高速炉は、ウラン資源の有効利用や高い安全性など、多くの利点を持つ次世代の原子炉として期待
– 炉心の設計には、中性子の振る舞いを正確に把握することが不可欠
– 計算だけでは予測が困難な現象も存在するため、実物に近い環境での実験が必要
ZEBRA実験装置の特徴 – 高速炉の炉心を模擬した大規模な実験施設
– 実寸大に近い炉心を再現可能
– ウランやプルトニウムなどの核燃料を模擬した材料を使用
– 中性子を照射し、核分裂反応の連鎖反応を制御しながら実験を実施
MOZART計画におけるZEBRA実験装置の役割 – 様々な条件下における高速炉の炉心の核特性を詳細に測定
– 燃料の種類や組成、炉心の温度や冷却材の流量などを変化させながら、中性子の増倍率や反応度などの重要なパラメータを測定
成果 – 計算に頼っていた部分を補完し、大型高速炉の設計に必要な貴重なデータの取得
– 計算コードの検証や改良に活用され、より高精度な炉心設計が可能に

FCAにおける補足実験

FCAにおける補足実験

– FCAにおける補足実験1972年から5年間、イギリスのZEBRA実験装置を用いたMOZART計画を終えた後、日本の高速臨界集合体FCAを用いた、より詳細な実験が実施されました。FCAとは、高速中性子増殖炉の炉物理特性を調べるために、動力炉とほぼ同じ中性子エネルギーを持つ炉心を、ウランやプルトニウムなどの燃料と、ナトリウムなどの冷却材を組み合わせて構成した実験装置です。ZEBRA実験では、高速増殖炉の一般的な炉心構成を模擬して実験が行われましたが、FCA実験では、日本で開発が進められていた高速増殖炉「もんじゅ」の炉心を部分的に模擬し、特定の条件下での核特性を重点的に調べました。具体的には、「もんじゅ」の炉心設計に必要な核データのうち、特に重要なものについて、より高い精度で測定することを目的としました。FCA実験では、「もんじゅ」の炉心設計に特に重要な核特性として、中性子の増倍比や反応度係数、制御棒の反応度価値などが測定されました。これらの核特性は、炉心の安全性や運転性能を評価する上で非常に重要です。FCA実験で得られたデータは、MOZART計画で得られたデータと比較検討され、その結果、MOZART計画で得られたデータの精度をさらに高めることができました。具体的には、FCA実験によって得られた高精度な核データを用いることで、「もんじゅ」の炉心設計の安全裕度をより正確に評価することが可能となりました。FCA実験は、MOZART計画を補完する形で、「もんじゅ」の炉心設計に重要な貢献を果たしました。FCA実験によって得られた高精度な核データは、「もんじゅ」の炉心設計に反映され、その後の運転開始に大きく貢献しました。

項目 内容
実験装置 FCA (高速臨界集合体) – ウラン、プルトニウム、ナトリウム等を用いて高速中性子増殖炉の炉物理特性を調べる実験装置
期間 1972年から5年間
背景 イギリスのZEBRA実験装置を用いたMOZART計画後の、より詳細な実験
目的 – 日本の高速増殖炉「もんじゅ」の炉心を部分的に模擬し、特定の条件下での核特性を重点的に調べる
– 「もんじゅ」の炉心設計に必要な核データのうち、特に重要なものについて、より高い精度で測定する
測定対象 – 中性子の増倍比
– 反応度係数
– 制御棒の反応度価値
結果 – MOZART計画で得られたデータの精度をさらに高めることができた
– 「もんじゅ」の炉心設計の安全裕度をより正確に評価することが可能となった
意義 – MOZART計画を補完する形で、「もんじゅ」の炉心設計に重要な貢献を果たした
– FCA実験によって得られた高精度な核データは、「もんじゅ」の炉心設計に反映され、その後の運転開始に大きく貢献した

「もんじゅ」の炉心設計への貢献

「もんじゅ」の炉心設計への貢献

– 「もんじゅ」の炉心設計への貢献日本が世界に誇る高速増殖炉「もんじゅ」の開発において、実験炉「常陽」を用いた「MOZART計画」は極めて重要な役割を果たしました。この計画で取得された膨大な実験データは、「もんじゅ」の心臓部である炉心の設計に大きく貢献したのです。「もんじゅ」の炉心設計においては、出力分布、反応度係数、増殖比といった核特性値を正確に把握することが不可欠でした。出力分布は、炉心内で発生する熱エネルギーの分布を示し、均一なエネルギー発生と燃料の安全確保に繋がります。反応度係数は、外部からの操作や炉心内の変化に対する出力の応答性を示し、原子炉の安定運転に欠かせない要素です。そして、増殖比は、消費する核燃料よりも多くの核燃料を生み出す高速増殖炉の最大の特徴であり、将来のエネルギー問題解決への鍵を握っています。MOZART計画では、「もんじゅ」の炉心と類似の炉心を持つ「常陽」を用いて、長期間にわたる運転と様々な実験を実施しました。これにより、実際の運転状況に近い環境下で、出力分布、反応度係数、増殖比といった重要な核特性値に関するデータを取得することができたのです。そして、これらの貴重なデータは、「もんじゅ」の炉心設計に直接的に反映され、その性能と安全性の向上に大きく貢献しました。MOZART計画は、「もんじゅ」の開発を大きく前進させただけでなく、日本の高速増殖炉技術の進歩に大きく貢献した重要なプロジェクトとして、科学技術史にその名を刻んでいます。

項目 説明 重要性
出力分布 炉心内で発生する熱エネルギーの分布 均一なエネルギー発生と燃料の安全確保
反応度係数 外部からの操作や炉心内の変化に対する出力の応答性 原子炉の安定運転
増殖比 消費する核燃料よりも多くの核燃料を生み出す高速増殖炉の能力 将来のエネルギー問題解決の鍵