マルクール: 放射性廃棄物をガラスで閉じ込める技術

マルクール: 放射性廃棄物をガラスで閉じ込める技術

電力を見直したい

『マルクール商用廃棄物ガラス固化施設』って、どんな施設のことかよくわからないんだけど…

電力の研究家

簡単に言うと、原子力発電で出た高レベル放射性廃液を、安全なガラスに閉じ込めてしまう施設だよ。フランスで開発されて、今も実際に動いているんだ。

電力を見直したい

へえ~!ガラスにしちゃうんだ!どうやって閉じ込めるの?

電力の研究家

回転する炉で廃液を乾燥させてから、さらに高温で溶かしてガラスと混ぜるの。そして、それを容器に入れて冷やすと、固まったガラスの中に廃液が閉じ込められるんだよ。

マルクール商用廃棄物ガラス固化施設とは。

「マルクール商用廃棄物ガラス固化施設」は、フランスで開発された、高レベル放射性廃液をガラスで固めるための施設です。この施設は1978年から稼働していて、現在も1000立方メートル以上の高レベル放射性廃液を処理した実績があります。施設は大きく分けて、回転する炉と、電気の力で熱する炉の二つからなります。回転する炉の中では、廃液を乾燥させてから、熱に強いガラスと混ぜて溶かします。溶けたガラスは容器に流し込まれ、固まると最終的な処理済み廃棄物となります。

フランスにおける革新的な廃棄物処理施設

フランスにおける革新的な廃棄物処理施設

フランスのマルクールという街に、世界から注目される特別な施設があります。それは、「マルクール商用廃棄物ガラス固化施設」、略してAVMと呼ばれる施設です。1978年から稼働しているこの施設の目的は、原子力発電などで発生する、高レベル放射性廃液(HALW)を安全な形で処理し、保管することです。

高レベル放射性廃液は、強い放射能を持つため、環境や人体への影響が懸念される物質です。AVMでは、この危険な廃液をガラスと混ぜ合わせて固化し、安定した状態に変えます。こうして作られたガラス固化体は、ステンレス製の容器に封入され、最終的には地下深くの安定した岩盤層に保管されます。

AVMは、長年にわたり、世界各国から高レベル放射性廃棄物を受け入れ、処理してきました。これは、フランスが原子力発電の技術だけでなく、廃棄物処理においても世界をリードする存在であることを示しています。AVMの技術は、世界中の原子力発電所を抱える国々にとって、安全な廃棄物処理を実現するためのモデルケースとなっています。

施設名 所在地 稼働開始年 目的 処理対象 処理方法 保管方法 備考
マルクール商用廃棄物ガラス固化施設(AVM) フランス マルクール 1978年 高レベル放射性廃液の安全な処理と保管 高レベル放射性廃液(HALW) ガラス固化体化 (ガラスと混ぜて固化) ステンレス製容器に入れ、地下深くの岩盤層に保管 世界各国からの廃棄物処理を受託。フランスの廃棄物処理技術の優位性を示す。

ガラス固化: 長期安全性を確保する技術

ガラス固化: 長期安全性を確保する技術

原子力発電所からは、運転に伴い放射性廃棄物が発生します。特に、使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃液は、強い放射能を持つため、環境への影響を最小限に抑えるために、安全かつ長期的に保管する必要があります。

この高レベル放射性廃液の処理に用いられるのが、ガラス固化技術です。ガラス固化技術は、高レベル放射性廃液を高温で溶かし、ホウケイ酸ガラスと混ぜ合わせて固化する処理方法です。ガラスは、化学的に安定しており、放射性物質を閉じ込める能力が高いため、長期にわたる保管に適しています。

具体的には、高レベル放射性廃液を乾燥させ、粉末状にした後、1100℃以上の高温で溶融炉で溶かします。そこに、ホウケイ酸ガラスの原料を混ぜ合わせて、均一に溶かし込みます。その後、溶けた混合物をステンレス製の容器に流し込み、冷却して固化させます。こうしてできたガラス固化体は、ステンレス製の容器に密閉され、さらにコンクリート製の容器に入れて厳重に保管されます

ガラス固化技術によって、高レベル放射性廃液は、安定した固体として長期にわたり安全に保管することが可能となります。日本原子力研究開発機構のガラス固化技術を用いた施設では、すでに1000立方メートル以上の高レベル放射性廃液が安全に処理されており、その安全性は国際的にも高く評価されています。

処理方法 概要 工程 保管方法
ガラス固化技術 高レベル放射性廃液を高温で溶かし、ホウケイ酸ガラスと混ぜ合わせて固化する処理方法
  1. 高レベル放射性廃液を乾燥、粉末化
  2. 1100℃以上の高温で溶融炉で溶かす
  3. ホウケイ酸ガラスの原料を混ぜ合わせて溶かし込む
  4. 溶けた混合物をステンレス製の容器に流し込み、冷却して固化
ステンレス製の容器に密閉し、コンクリート製の容器に入れて厳重に保管

ロータリーキルン仮焼炉: 廃棄物を処理する心臓部

ロータリーキルン仮焼炉: 廃棄物を処理する心臓部

原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物の処理には、高度な技術と厳重な安全対策が求められます。その処理プロセスの中心的な役割を担うのが、ロータリーキルン仮焼炉です。この炉は、その名の通り回転する炉であり、内部に高レベル放射性廃液を供給しながら、乾燥と仮焼という重要なプロセスを行います。

ロータリーキルン仮焼炉は、毎分約330回転という速度で回転しながら、内部に供給された廃液を均一に熱処理します。炉内は温度帯の異なる4つの加熱ゾーンに分けられており、それぞれのゾーンで最適な温度設定を行うことで、効率的かつ確実な処理を実現しています。

処理プロセスは、まず廃液を乾燥させることから始まります。回転する炉の中で、廃液は徐々に水分を失い、固体へと変化していきます。その後、より高温のゾーンに進むと、今度は仮焼と呼ばれる処理が行われます。ここでは、廃液に含まれる有機物が分解され、最終的にはガラスの原料となる安定した状態へと変化します。

このように、ロータリーキルン仮焼炉は、高レベル放射性廃棄物を安全かつ効率的に処理するために、無くてはならない重要な設備と言えるでしょう。

プロセス 説明
乾燥 回転する炉内で廃液の水分を蒸発させ、固体化する。
仮焼 高温ゾーンで有機物を分解し、ガラス原料となる安定した状態にする。

誘導加熱溶融炉: ガラスを溶かす高温の溶鉱炉

誘導加熱溶融炉: ガラスを溶かす高温の溶鉱炉

ロータリーキルン仮焼炉と呼ばれる炉で一定時間熱処理された廃棄物は、誘導加熱溶融炉と呼ばれる別の炉へと送られます。この炉は、非常に高い温度を作り出すことができる特別な炉です。
誘導加熱溶融炉の中には、熱に非常に強い特別なガラスが用意されています。廃棄物は炉の中でこのガラスと混ぜ合わされ、誘導加熱という方法を使って加熱されます。誘導加熱は、電気を流すと磁場が発生する性質を利用して、金属などを加熱する方法です。この方法を使うことで、炉全体を均一に温めることができ、廃棄物とガラスをしっかりと溶かし混ぜることができます。
こうして、廃棄物は高温で溶けたガラスの中に閉じ込められます。このガラスは、再び冷やされて固まり、安全な状態になります。誘導加熱溶融炉は、高品質なガラスを作り出すことができるため、廃棄物を安全かつ有効に処理する方法として注目されています。

工程 装置 処理内容 備考
仮焼 ロータリーキルン仮焼炉 廃棄物を一定時間熱処理する
溶融 誘導加熱溶融炉 廃棄物を特殊なガラスと混ぜ合わせ、誘導加熱で溶融する 誘導加熱:電気を流すことで発生する磁場を利用した加熱方法
炉全体を均一に温め、廃棄物とガラスをしっかりと溶かし混ぜることができる
冷却・固化 溶融したガラスを冷却し、固化させる 高品質なガラスを生成できる

キャニスターへの封入: 永久保管に向けた最終段階

キャニスターへの封入: 永久保管に向けた最終段階

使用済み核燃料から取り出された高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体と呼ばれる安定した形で永久保管するために、いくつかの工程を経て処理されます。まず、高レベル放射性廃棄物はガラス原料とともに高温で溶かし混ぜられ、均一な溶融状態にされます。この溶融状態の混合物は、キャニスターと呼ばれる特別な容器に注ぎ込まれます。キャニスターは、極めて高い耐久性と耐腐食性を備えた金属製容器であり、長期間にわたって放射性物質を封じ込めるための重要な役割を担います。
キャニスターに注ぎ込まれた高温の混合物は、冷却とともに徐々に固化し、最終的にはガラスと同様の安定した状態へと変化します。こうして生成されたガラス固化体は、放射性物質をガラスの中に閉じ込めることで、環境中への拡散を効果的に防ぎます。ガラス固化体が封入されたキャニスターは、最終的には地下深くに建設された厳重に管理された施設内へと輸送され、永久に保管されます。この最終的な保管場所の選定にあたっては、地質学的調査や環境影響評価など、多岐にわたる厳しい基準に基づいて、長期的な安全性が確保されるように慎重に進められます。

工程 説明
ガラス固化体生成 高レベル放射性廃棄物をガラス原料と溶融・冷却し、放射性物質をガラス中に閉じ込める。
キャニスター封入 ガラス固化体を、耐久性・耐腐食性に優れた金属製容器であるキャニスターに封入する。
最終処分場の選定 地質学的調査や環境影響評価に基づき、長期的な安全性を確保できる地下深くに保管場所を選定する。
永久保管 選定された最終処分場内の厳重に管理された施設内へ輸送し、永久に保管する。