材料試験炉ETRとその役割
電力を見直したい
先生、「ETR」って原子力発電の用語で出てきたんですけど、何の略か教えてください!
電力の研究家
ETRはね、「Engineering Test Reactor」の略で、日本語では「工学試験炉」って言うんだよ。アメリカにあって、材料の試験に使われていた原子炉なんだ。
電力を見直したい
材料の試験をする原子炉って、具体的にどんなことをしていたんですか?
電力の研究家
例えば、原子炉で使う燃料がどれくらいもつかとか、新しい材料がどれくらい熱に強いかなどを調べるために使われていたんだよ。日本のJMTRっていう原子炉の設計の参考にもなったんだよ。
ETRとは。
「ETR」は「技術試験炉」の略称で、原子力発電に関する言葉です。アメリカにあるアイダホ国立工学試験所に設置された、熱出力175メガワットの材料試験を行うための炉のことです。1957年に稼働を開始し、1981年に停止しました。この炉は、日本の材料試験炉「JMTR」を作る際に設計のモデルとなったものです。燃料には、ウランとアルミニウムの合金をアルミニウムで覆った、熱を逃がしやすい板状のものを使用し、高い中性子束密度を得られるようにしました。この炉は、発電炉に使う燃料の開発試験や、放射性同位元素の製造などに使われました。
ETRの概要
– ETRの概要ETRとは、Engineering Test Reactorの略称で、原子炉で使用される材料や燃料が、高温や強い放射線にさらされた時にどのように変化するかを調べるための試験炉です。原子炉は、莫大なエネルギーを生み出すと同時に、内部の材料は非常に過酷な環境に置かれます。そこで、原子炉の安全性を高め、より長く運転できるように、材料の耐久性を事前に調べる必要があり、ETRはそのような試験を行うために作られました。ETRは、アメリカ合衆国のアイダホ国立工学試験所に設置され、1957年から1981年までの24年間、実際に稼働していました。 その出力は175MWと、当時の試験炉としては非常に高い出力を持っていました。これは、当時の一般的な発電炉に匹敵する規模で、より現実に近い環境で材料試験を行うことを可能にしました。ETRは、その高い性能と長年の運用実績から、原子力開発の歴史において重要な役割を果たしたと言えます。現在、ETRは停止していますが、その跡地は歴史的な遺産として保存され、原子力の平和利用の象徴として、人々に語り継がれています。
項目 | 内容 |
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名称 | ETR (Engineering Test Reactor) |
目的 | 原子炉で使用される材料や燃料が高温や強い放射線にさらされた時の変化を調べる |
設置場所 | アメリカ合衆国アイダホ国立工学試験所 |
稼働期間 | 1957年 – 1981年 (24年間) |
出力 | 175MW (当時の一般的な発電炉に匹敵) |
意義 | 原子力開発の歴史において重要な役割を果たした |
現状 | 停止 (跡地は歴史的な遺産として保存) |
ETRの燃料と構造
実験試験炉(ETR)は、その名の通り、原子力技術の発展のために、材料試験に特化して設計された原子炉です。その心臓部である炉心には、ウランとアルミニウムの合金を薄いアルミニウムで覆った板状の燃料が採用されていました。この燃料は、従来の燃料と比べて熱を水に伝える能力が高いため、原子炉内で発生する熱を効率良く除去することができました。その結果、ETRは、高温で運転される原子炉内部でも燃料の溶融を防ぎ、安定して稼働することが可能となりました。
ETRの大きな特徴の一つに、中性子を炉心に効率的に集める工夫が挙げられます。ETRは、炉心の周りに反射材を配置することで、炉心から外に飛び出してしまう中性子を反射し、再び炉心内部へと導く構造が採用されていました。これにより、ETRは、材料試験を行うために必要な高い密度の熱中性子を得ることができました。ETRは、燃料の設計と炉心の構造において、高い性能と安全性を両立させるための工夫が凝らされていました。
項目 | 内容 |
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原子炉名 | 実験試験炉(ETR) |
目的 | 原子力技術の発展のための材料試験 |
燃料 | ウランとアルミニウムの合金を薄いアルミニウムで覆った板状 |
燃料の特徴 | 従来の燃料と比べて熱伝導率が高く、効率良く熱除去が可能 |
炉心構造 | 炉心の周りに反射材を配置し、中性子を反射させて炉心内部へ導く構造 |
炉心構造の特徴 | 高い密度の熱中性子を得ることが可能 |
ETRの主な用途
実験用試験炉(ETR)は、原子力発電の黎明期において、その発展に大きく貢献しました。特に、発電炉の心臓部と言える燃料の開発において、ETRは重要な役割を担いました。ETRを用いることで、過酷な環境に晒される原子炉内で、燃料がどのように振る舞い、どれだけの期間、安定してエネルギーを生み出すことができるのかを、実際に近い条件下で評価することが可能となりました。 具体的には、燃料の組成や形状、被覆材の種類などを変えながら、多岐にわたる試験が行われました。 これらの試験で得られたデータは、より安全で効率の高い燃料の開発に直接的に活かされました。
さらに、ETRは原子炉の材料の耐久性を評価するためにも利用されました。原子炉内部は、高温・高圧に加え、強い放射線が飛び交う過酷な環境です。そのため、原子炉を構成する材料には、長期間にわたってその性能を維持することが求められます。ETRを用いることで、実際に近い環境下で材料の強度や耐食性などを評価することができました。 これらの試験の結果は、より過酷な条件にも耐えうる、新しい材料の開発を促進させました。 ETRで得られた貴重な実験データは、原子力発電の安全性と信頼性の向上に大きく貢献したと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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燃料開発への貢献 | – 燃料の組成、形状、被覆材の種類などを変えながら試験を行い、燃料の振る舞いを評価 – より安全で効率の高い燃料の開発に貢献 |
材料評価への貢献 | – 高温・高圧、強い放射線環境下での材料の強度や耐食性を評価 – より過酷な条件に耐えうる、新しい材料の開発を促進 |
ETRと日本の原子力開発
– ETRと日本の原子力開発アメリカのアイダホ国立研究所に建設された実験炉ETR(Engineering Test Reactor)は、その名の通り、原子炉の設計や材料開発のために実験を行うことを目的としていました。1957年から1982年まで稼働し、数々の貴重なデータを提供しました。 このETRは、海を越えて日本の原子力開発にも大きな影響を与えました。当時、日本は本格的な原子力開発に乗り出した時期であり、材料開発のための研究炉の建設が急務でした。そこで、世界最高水準の性能を誇るETRをモデルとすることとなり、1965年、茨城県東海村に材料試験炉JMTR(Japan Materials Testing Reactor)が完成しました。JMTRは、ETRで培われた技術を基盤として設計・建設され、日本の原子力開発に必要不可欠な実験炉として、燃料や材料の開発、放射性同位体の製造などに貢献してきました。現在もなお、JMTRは稼働を続けており、50年以上にわたって日本の原子力研究の中核を担っています。このように、ETRは、JMTRの設計の基となっただけでなく、日本の原子力技術者の育成にも貢献し、日本の原子力開発の礎を築く上で重要な役割を果たしました。ETRの設計思想は、JMTRを通じて日本の原子力開発に受け継がれ、現在も日本の原子力技術を支えています。
項目 | 内容 |
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実験炉ETR | – アメリカ・アイダホ国立研究所 – 原子炉設計・材料開発のためのデータ取得が目的 – 1957年~1982年稼働 |
日本の原子力開発への影響 | – 当時、本格的な原子力開発に乗り出した日本は材料開発のための研究炉の建設が急務だった – 世界最高水準のETRをモデルに、JMTRを建設 |
材料試験炉JMTR | – 茨城県東海村に1965年完成 – ETRで培われた技術を基盤に設計・建設 – 燃料・材料開発、放射性同位体の製造などに貢献 – 50年以上稼働し、日本の原子力研究の中核を担う |
ETRの役割 | – JMTRの設計の基 – 日本の原子力技術者の育成に貢献 – 日本の原子力開発の礎を築く上で重要な役割 |
ETRの遺産
– ETRの遺産ETR(試験炉)は、1981年にその役割を終えましたが、原子力開発における功績は今も色褪せることなく、様々な分野に影響を与え続けています。 ETRは、原子炉の心臓部と言える炉心の設計や、燃料の開発、そして原子炉内における物質の変化など、多岐にわたる研究に利用されました。その過程で得られた膨大なデータや知見は、現在の原子炉の設計や運転にも活かされています。例えば、ETRで実施された実験によって、原子炉の出力調整や安全な運転に欠かせない制御棒の性能に関する理解が深まりました。また、燃料の開発においても、ETRは重要な役割を担い、燃料の燃焼特性や高温・高放射線環境下における挙動を調べることで、より安全で効率的な燃料の開発に貢献しました。ETRの功績は、原子力分野以外にも広く及びます。ETRで開発された技術は、医療分野における放射線治療や、工業分野における非破壊検査など、様々な分野に応用され、人々の生活に役立っています。このように、ETRは、原子力開発の歴史において、その発展に大きく貢献した重要な試験炉と言えます。そして、ETRで培われた技術や知見は、現在も様々な形で受け継がれ、未来の原子力開発、そして科学技術の発展に貢献していくことでしょう。
分野 | ETRの貢献 | 具体例 |
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原子力開発 | 炉心の設計、燃料の開発、原子炉内における物質の変化など、多岐にわたる研究 | 制御棒の性能向上、燃料の燃焼特性や高温・高放射線環境下における挙動の解明 |
医療分野 | ETRで開発された技術の応用 | 放射線治療 |
工業分野 | ETRで開発された技術の応用 | 非破壊検査 |