原子力発電と低レベル廃棄物

原子力発電と低レベル廃棄物

電力を見直したい

『低レベル廃棄物』って、原子力発電で出るゴミのことですよね?どんなゴミなんですか?

電力の研究家

そうね。『低レベル廃棄物』は原子力発電所で出るゴミのことで、放射能レベルが比較的低いものを指します。具体的には、作業員の使った手袋や靴、原子炉の周りの水などが当てはまります。

電力を見直したい

じゃあ、低レベルと言っても放射能は出ているんですよね?危険じゃないんですか?

電力の研究家

もちろん放射能は出ていますが、健康に影響がないレベルのものなんです。とはいえ、そのまま捨ててしまうわけではなく、きちんと管理して処分する必要があります。

低レベル廃棄物とは。

「低レベル廃棄物」とは、原子力発電で使われたもので、高い放射能を持つもの(核燃料を再処理した後に残る液体やそれを固めたもの)以外の、放射能を持つゴミ全体を指す言葉です。この低レベル廃棄物は、どこで発生したかや、どんな放射性物質が含まれているかによって、「発電所から出るゴミ」、「TRU廃棄物」、「ウラン廃棄物」の3つに分けられます。

さらに、「発電所から出るゴミ」は、放射能の強さによって、「炉心等廃棄物」(放射能が比較的強い)、「低レベル廃棄物」(放射能が比較的弱い)、「極低レベル廃棄物」(放射能が非常に弱い)に分けられます。日本では、このうち「発電所から出るゴミ」の中で、「低レベル廃棄物」は、既に浅い地中に埋める方法で処分が始まっています。一方、「TRU廃棄物」と「ウラン廃棄物」については、まだどのように処分するか検討中です。

低レベル廃棄物とは

低レベル廃棄物とは

– 低レベル廃棄物とは原子力発電所では、日々の運転や設備の点検、そして最終的な解体作業など、様々な工程で廃棄物が発生します。これらの廃棄物の中には、放射線を出すものがあり、放射性廃棄物と呼ばれます。放射性廃棄物は、その放射能の強さによって、大きく高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物の二つに分類されます。高レベル放射性廃棄物は、主に使用済み核燃料を再処理する過程で生じる廃液などが該当します。非常に高い放射能レベルを持つため、人の健康や環境への影響を考慮し、厳重な管理と処分が必要となります。一方、低レベル放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物以外のものを指し、原子力発電所の運転や保守、施設の解体作業などで発生します。具体的には、作業員の被爆を防ぐために着用した作業服や手袋、放射性物質を除去するために使用したフィルター、施設内の配管の一部などが挙げられます。これらの廃棄物は、放射能レベルが比較的低いため、適切な処理を施すことで、環境への影響を抑制できます。低レベル放射性廃棄物は、その性状や放射能レベルに応じて、さらに細かく分類され、それぞれに適した処理方法が選択されます。例えば、放射能レベルの低いものは、圧縮や焼却などによって減容化し、保管しやすいように処理されます。また、放射能レベルの高いものは、コンクリートなどを使って固め、ドラム缶などに封入した後、厳重に管理された施設で保管されます。

廃棄物レベル 発生源 特徴 処理方法
高レベル放射性廃棄物 使用済み核燃料の再処理 放射能レベルが非常に高い
人の健康や環境への影響大
厳重な管理と処分が必要
低レベル放射性廃棄物 原子力発電所の運転、保守、施設解体など
(例:作業服、手袋、フィルター、配管の一部)
放射能レベルが比較的低い
適切な処理で環境への影響抑制可能
– 放射能レベルが低いもの:圧縮・焼却などによる減容化
– 放射能レベルが高いもの:コンクリート固化、ドラム缶封入、厳重管理施設での保管

低レベル廃棄物の分類

低レベル廃棄物の分類

原子力発電所からは、運転や施設の解体に伴い、様々な放射性廃棄物が発生します。これらのうち、放射能レベルが比較的低いものを低レベル廃棄物と呼びますが、その発生源や含まれる放射性物質の種類によって、さらに細かく分類されます。

主な分類としては、発電所から発生する「発電所廃棄物」、プルトニウムなどの人工放射性物質を含む「TRU廃棄物」、ウラン濃縮などから生じる「ウラン廃棄物」の3つに分けられます。

このうち、発電所廃棄物は、さらに放射能のレベルに応じて細かく分類されます。具体的には、原子炉の炉心などから発生する放射能レベルの高い「炉心等廃棄物」、配管や工具など、放射能レベルが比較的低い「低レベル廃棄物」、作業服や靴など、放射能レベルがきわめて低い「極低レベル廃棄物」に分けられます。

このように、低レベル放射性廃棄物は一括りに扱われるのではなく、その種類や放射能レベルに応じて、保管方法、期間、そして最終的な処分方法が異なります。それぞれの特性に応じた適切な管理・処分を行うことが、環境や人体への影響を最小限に抑え、原子力発電を安全に利用していく上で非常に重要となります。

廃棄物分類 説明
発電所廃棄物 原子力発電所の運転に伴い発生する放射性廃棄物
– 炉心等廃棄物 原子炉の炉心などから発生する、放射能レベルの高い廃棄物
– 低レベル廃棄物 配管や工具など、放射能レベルが比較的低い廃棄物
– 極低レベル廃棄物 作業服や靴など、放射能レベルがきわめて低い廃棄物
TRU廃棄物 プルトニウムなどの人工放射性物質を含む廃棄物
ウラン廃棄物 ウラン濃縮などから生じる廃棄物

低レベル廃棄物の処理と処分

低レベル廃棄物の処理と処分

– 低レベル廃棄物の処理と処分原子力発電所などから発生する放射性廃棄物は、その放射能の強さや性質によって、処理・処分方法が異なります。

まず、発生源となる施設では、廃棄物の量を減らす「減容処理」や、化学的に安定な状態にする「安定化処理」などを行います。その後、適切な容器に封入して、保管・管理されます。

放射能レベルが比較的低い「低レベル廃棄物」は、セメントやアスファルトなどを混ぜて固める「固化処理」を行った後、ドラム缶に封入します。そして、地下深くではなく、比較的浅い場所に設けられた施設に埋め立てる「浅地中処分」という方法が一般的です。日本でも、すでにこの浅地中処分が開始されています。

一方、「TRU廃棄物」と呼ばれるプルトニウムなどの放射性物質を含む廃棄物や、「ウラン廃棄物」などは、低レベル廃棄物よりも長い期間にわたって、厳重に管理する必要があります。そのため、地下深くの安定した岩盤中に処分する「地層処分」という方法が検討されています。地層処分は、世界各国でも研究開発が進められていますが、日本ではまだ処分地の選定段階であり、処分方法の決定や処分施設の建設には、まだ時間がかかる見通しです。

廃棄物レベル 処理方法 処分方法 備考
低レベル廃棄物 減容処理、安定化処理、固化処理 浅地中処分 セメント等で固めてドラム缶に封入し、比較的浅い場所に埋め立てる。日本でも開始済み。
TRU廃棄物、ウラン廃棄物など 減容処理、安定化処理 地層処分(検討中) 長期間の厳重管理が必要。地下深くの安定した岩盤中に処分する方法が検討されている。

安全な管理と処分体制の確保

安全な管理と処分体制の確保

原子力発電は、運転に伴い放射能レベルの低い廃棄物が発生します。この廃棄物は、環境や人体への影響を抑えるため、厳格な管理と処分を行う必要があります。その安全を確保することが、原子力発電の継続的な利用には不可欠です。

まず、廃棄物は、その放射能レベルや性状に応じて適切に分類し、遮蔽性の高い容器に封入するなどして安全に保管しなければなりません。保管場所は、地震や津波などの自然災害の影響を受けにくい場所を選定し、厳重な監視体制を整備する必要があります。

そして、保管場所から処分場への輸送においても、安全確保は最優先事項です。輸送に際しては、頑丈な容器を使用し、落下や衝突などの事故に備えた対策を講じる必要があります。また、輸送ルート周辺の環境や住民への影響を最小限にするため、関係機関との綿密な連携が求められます。

最終的な処分においては、廃棄物を安定した状態で長期間にわたり隔離する必要があります。具体的には、地下深くの地層に処分施設を建設する方法が検討されています。処分施設の建設にあたっては、周辺環境への影響を徹底的に評価し、その結果を踏まえて適切な対策を講じなければなりません。

このように、低レベル放射性廃棄物の管理と処分は、安全確保を最優先に、環境への影響を最小限にするよう、厳格な基準に従って実施していく必要があります。そして、これらの取り組みを国民の理解と協力を得ながら進めていくことが、原子力発電の重要な責務と言えるでしょう。

段階 詳細
発生 放射能レベルの低い廃棄物が発生
保管
  • 放射能レベルや性状に応じて廃棄物を分類
  • 遮蔽性の高い容器に封入
  • 地震や津波などの自然災害の影響を受けにくい場所に保管
  • 厳重な監視体制を整備
輸送
  • 頑丈な容器を使用
  • 落下や衝突などの事故に備えた対策
  • 輸送ルート周辺の環境や住民への影響を最小限にする
  • 関係機関との綿密な連携
処分
  • 廃棄物を安定した状態で長期間にわたり隔離
  • 地下深くの地層に処分施設を建設 (検討)
  • 周辺環境への影響を徹底的に評価し、適切な対策

まとめ

まとめ

原子力発電は、二酸化炭素を排出しないという利点を持つ反面、放射能を持つ廃棄物が発生するという課題も抱えています。発電所からは、ウラン燃料の使用済み燃料以外にも、運転や保守に伴い、様々なレベルの放射性廃棄物が生じます。
特に、放射能のレベルが低く、比較的管理しやすい低レベル放射性廃棄物は、原子力発電の利用を続ける限り、継続的に発生し続けます。
このような廃棄物を安全かつ適切に管理し、最終的に処分することは、環境保護の観点からも、原子力発電を持続可能なエネルギー源としていくためにも、非常に重要な責務です。
そのためには、国や電力会社は、廃棄物に関する正確な情報公開と、国民へ分かりやすく丁寧な説明を積極的に行い、理解と協力を得ることが不可欠です。
また、将来世代への負担を軽減するために、廃棄物の発生量を抑制するための技術開発や、再利用・再処理によるリサイクルの推進なども、重要な課題と言えるでしょう。

項目 詳細
メリット 二酸化炭素を排出しない
課題 放射性廃棄物の発生

  • 使用済みウラン燃料
  • 運転・保守に伴う様々なレベルの放射性廃棄物
    • 特に、低レベル放射性廃棄物は継続的に発生
廃棄物管理の重要性
  • 環境保護
  • 原子力発電の持続可能性
国・電力会社の責務
  • 廃棄物に関する正確な情報公開
  • 国民への分かりやすく丁寧な説明
将来世代への負担軽減
  • 廃棄物の発生量抑制技術開発
  • 再利用・再処理によるリサイクル推進