原子炉の安全を守る:格納容器圧力抑制系の役割

原子炉の安全を守る:格納容器圧力抑制系の役割

電力を見直したい

『格納容器圧力抑制系』って、原子炉の安全装置の一つだって聞いたんですけど、どんなものなんですか?

電力の研究家

そうだね。『格納容器圧力抑制系』は、原子炉で万が一、配管の破損などで高温高圧の冷却水が流れ出てしまった場合に備えた安全装置の一つだよ。原子炉の格納容器内の圧力が上がりすぎるのを抑える役割があるんだ。

電力を見直したい

格納容器内の圧力が上がりすぎるのを抑えるって、具体的にはどうやってやるんですか?

電力の研究家

簡単に言うと、大量の水を使って、流れ出た高温の蒸気を冷やして水に戻すんだ。蒸気が水に戻ると体積が大きく減るので、格納容器内の圧力上昇を抑えられるんだよ。

格納容器圧力抑制系とは。

原子力発電所にある原子炉は、高い熱と圧力で動くため、万が一、配管が壊れてしまうと、大量の熱い蒸気が漏れ出てしまいます。これを防ぐため、”格納容器圧力抑制系”という安全装置があります。

この装置は、熱い蒸気を水や氷で冷やして水に戻し、原子炉を囲う格納容器内の圧力や温度が上がりすぎるのを防ぎます。

原子炉の種類によって、蒸気の冷やし方が違います。沸騰水型原子炉では、蒸気をプールに導き、そこに大量の水を貯めておくことで冷やします。プールや蒸気を導く管の設計の違いによって、MarkIからIIIまでの種類があります。加圧水型原子炉では、格納容器内に氷を貯蔵しておき、蒸気を氷に当てて冷やす方法をとっています。

原子炉と格納容器

原子炉と格納容器

原子炉は、ウラン燃料の核分裂反応を利用して莫大なエネルギーを生み出す施設です。ウランの原子核が中性子を吸収すると、より軽い原子核に分裂し、このとき莫大なエネルギーが熱として放出されます。この現象が連鎖的に起こることで、原子炉は熱エネルギーを継続的に生成します。 この核分裂反応は、高温高圧の環境下で制御されながら行われます。そのため、原子炉は極めて頑丈な構造を持つ必要があります。
原子炉を覆う格納容器は、まさにその頑丈さを体現する構造物です。厚さ数メートルにも及ぶ鉄筋コンクリートと鋼鉄の層で構成され、内部は気密性を高めるために特殊な塗装が施されています。 格納容器は、原子炉で万が一、配管の破損や制御装置の故障などが発生した場合でも、放射性物質の外部への漏洩を何重にも防ぐための最後の砦としての役割を担っています
原子炉と格納容器は、安全に原子力エネルギーを利用するために、高度な技術と厳格な安全基準に基づいて設計・建設されています。

項目 説明
原子炉
  • ウラン燃料の核分裂反応を利用して熱エネルギーを生成する。
  • 高温高圧の環境下で制御された核分裂反応を継続的に起こす。
  • 極めて頑丈な構造を持つ。
格納容器
  • 原子炉を覆う、厚さ数メートルの鉄筋コンクリートと鋼鉄の層で構成された構造物。
  • 気密性を高めるための特殊な塗装が施されている。
  • 配管の破損や制御装置の故障など、万が一の事故発生時に、放射性物質の外部への漏洩を何重にも防ぐ最後の砦。

冷却材喪失事故と圧力抑制系

冷却材喪失事故と圧力抑制系

原子力発電所では、核分裂反応で発生する熱を利用して電気を作っています。この熱を取り出すために、原子炉の中では常に冷却材が循環しています。冷却材は原子炉内の熱を奪い、蒸気発生器へと運びます。しかし、もしも配管の破損などにより、この冷却材が外部に漏れ出てしまうとどうなるでしょうか?このような事故を冷却材喪失事故と呼び、原子力発電所における最も重大な事故の一つと考えられています。

冷却材が失われると、原子炉を冷やすことができなくなり、炉心内の温度が急上昇してしまいます。そして、高温高圧になった冷却水が大量に格納容器内に流出すると、格納容器内の圧力が急激に上昇し、最悪の場合、格納容器自体が破損してしまう可能性も考えられます。このような事態を防ぐため、原子炉には圧力抑制系と呼ばれる安全装置が設置されています。圧力抑制系は、格納容器内の圧力が異常上昇した場合に作動し、大量の水蒸気を冷却することで格納容器内の圧力を下げ、格納容器の破損を防ぐ役割を担っています。圧力抑制系は、原子力発電所の安全を確保するための最後の砦と言えるでしょう。

原子力発電所の仕組みと冷却材喪失事故 対策
核分裂反応の熱を利用して発電
冷却材が原子炉内の熱を蒸気発生器へ運ぶ
冷却材喪失事故:配管破損等で冷却材が外部へ漏れ出す
→原子炉を冷却できず炉心温度が上昇
→高温高圧の冷却水が格納容器内に流出
→格納容器内の圧力が上昇し、破損する可能性
圧力抑制系
・格納容器内の圧力異常上昇時に作動
・大量の水蒸気を冷却し、格納容器内の圧力低下
・格納容器の破損を防ぐ

圧力抑制系の仕組み:沸騰水型原子炉

圧力抑制系の仕組み:沸騰水型原子炉

沸騰水型原子炉は、その名の通り水を沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電する仕組みです。安全に運転するために、原子炉には様々な安全装置が備わっていますが、その中でも重要な役割を担うのが圧力抑制系です。

圧力抑制系は、主にベント管圧力抑制プールという二つの要素で構成されています。もし、冷却材喪失事故が発生すると、原子炉内の圧力が急上昇します。これを放置すると、格納容器が損傷してしまう可能性があります。そこで、圧力抑制系が作動します。

原子炉内の圧力が設定値を超えると、ベント管が開き、高温高圧の蒸気が圧力抑制プールへと導かれます。圧力抑制プールには大量の水が貯められており、高温の蒸気は水と接触することで急激に冷却され、凝縮されます。これにより、格納容器内の圧力上昇が抑えられ、原子炉の安全が確保されます。圧力抑制プールは、いわば原子炉の安全弁の役割を果たしていると言えます。

構成要素 役割
ベント管 原子炉内の圧力が設定値を超えると開き、高温高圧の蒸気を圧力抑制プールへ導く
圧力抑制プール 大量の水で高温の蒸気を冷却・凝縮し、格納容器内の圧力上昇を抑える

圧力抑制系の種類:マークIからマークIII

圧力抑制系の種類:マークIからマークIII

沸騰水型原子炉は、水の沸騰を利用してタービンを回し、発電を行う仕組みです。しかし、万が一、冷却材喪失事故などが発生すると、原子炉内の圧力が急上昇し、格納容器の破損に繋がる恐れがあります。これを防ぐために、沸騰水型原子炉には圧力抑制系と呼ばれる安全装置が備わっています。
圧力抑制系は、原子炉内で発生した蒸気を、圧力抑制プールと呼ばれる巨大な水のプールに導き、急冷凝縮させることで、原子炉内の圧力を抑制する役割を担います。
この圧力抑制プールには、設計の違いにより、マークI、マークII、マークIIIの三つのタイプが存在します。マークIは、トーラス型と呼ばれるドーナツ状の形をしたプールが特徴です。マークIIは、マークIを改良し、ベント管を複数設置することで圧力抑制効果を高めたタイプです。マークIIIは、円筒形のプールを採用し、地震に対する耐震性を向上させています。
このように、圧力抑制プールの設計は、事故時の圧力抑制効果や耐震性などを考慮して、時代と共に進化してきました。それぞれのタイプは、安全性向上のための工夫が凝らされており、原子力発電所の安全運転に大きく貢献しています。

タイプ 形状 特徴
マークI トーラス型(ドーナツ状)
マークII マークIを改良 ベント管を複数設置し、圧力抑制効果向上
マークIII 円筒形 耐震性を向上

加圧水型原子炉の圧力抑制系

加圧水型原子炉の圧力抑制系

加圧水型原子炉は、原子炉で発生した熱を水で取り除き、その熱を利用してタービンを回し発電する仕組みです。この型の原子炉には、万が一の事故に備えて、圧力抑制系と呼ばれる安全装置が備わっています。

圧力抑制系は、原子炉内で冷却材の喪失事故が発生した場合に、格納容器内の圧力上昇を抑える重要な役割を担います。加圧水型原子炉の場合、格納容器内には大量の氷を貯蔵しておくタイプの圧力抑制系が用いられます。

冷却材喪失事故が発生すると、原子炉内の圧力が高まり、高温の蒸気が発生します。この蒸気が格納容器内に放出されると、格納容器内の圧力が急上昇する可能性があります。これを防ぐために、圧力抑制系が作動します。

高温の蒸気は、圧力抑制系の氷と直接接触することで、冷却され水へと変化します。氷は蒸気から大量の熱を吸収するため、格納容器内の圧力上昇を効果的に抑制することができます。このように、加圧水型原子炉の圧力抑制系は、氷を利用することで、原子炉の安全性を高める上で重要な役割を果たしているのです。

項目 説明
加圧水型原子炉の仕組み 原子炉で発生した熱を水で取り除き、その熱を利用してタービンを回し発電する。
圧力抑制系の役割 冷却材喪失事故発生時に、格納容器内の圧力上昇を抑える。
圧力抑制系の仕組み 高温の蒸気を氷と直接接触させることで冷却し、水へ変化させる。氷が蒸気から大量の熱を吸収することで、格納容器内の圧力上昇を抑制する。

多重防護による安全性向上

多重防護による安全性向上

原子力発電所では、万が一の事故発生時にも、放射性物質の放出を抑制し、周辺環境と人々の安全を守るため、多重防護と呼ばれる安全対策がとられています。これは、異なる原理に基づいた複数の安全装置を組み合わせることで、たとえ一つの装置に不具合が生じても、他の装置が機能することで安全性を確保する考え方です。

記事で紹介されている圧力抑制系も、この多重防護の一つです。原子炉内で蒸気が発生した場合、圧力抑制室と呼ばれる巨大なプールに導き、冷却することで圧力を下げる役割を担っています。しかし、原子力発電所の安全は、圧力抑制系だけに頼っているわけではありません。例えば、緊急炉心冷却系は、炉心冷却水の喪失を検知すると、自動的に大量の水を炉心に注入し、燃料の過熱を防ぐシステムです。また、原子炉を格納する格納容器は、万が一、放射性物質が漏えいした場合でも、その拡散を抑制する、堅牢な構造となっています。

このように、原子力発電所は、多重防護という考え方に基づき、様々な安全装置を組み合わせることで、高い安全性を確保しています。原子力発電は、私たちの生活を支える重要なエネルギー源の一つです。その安全性を支える技術について、正しく理解することが大切です。

安全対策 説明
多重防護 異なる原理に基づいた複数の安全装置を組み合わせることで、たとえ一つの装置に不具合が生じても、他の装置が機能することで安全性を確保する考え方。
圧力抑制系 原子炉内で蒸気が発生した場合、圧力抑制室と呼ばれる巨大なプールに導き、冷却することで圧力を下げる。
緊急炉心冷却系 炉心冷却水の喪失を検知すると、自動的に大量の水を炉心に注入し、燃料の過熱を防ぐ。
格納容器 原子炉を格納する、万が一、放射性物質が漏えいした場合でも、その拡散を抑制する、堅牢な構造。