原子力発電の要: 臨界質量とは

原子力発電の要: 臨界質量とは

電力を見直したい

先生、『臨界質量』って、核物質の量のことですよね?どれくらいの量があれば必ず核分裂が起こるんですか?

電力の研究家

いい質問だね!ただ、「必ず」起こるわけではないんだ。臨界質量は、核分裂が持続的に起こるために必要な最小の量なんだよ。少ないと、連鎖反応が続かずに止まってしまうんだ。

電力を見直したい

そうなんですね。じゃあ、ウラン235なら、どんな形でも20kg集めれば臨界に達して、核分裂は続くんですか?

電力の研究家

そこが重要なんだ!実は、形や周りの環境によって大きく変わるんだ。20kgというのは、周りに何もない状態の球形の場合。例えば、中性子を反射しやすい物質で周りを囲むと、もっと少ない量でも臨界に達してしまうんだ。

臨界質量とは。

「臨界質量」っていうのは、原子力発電で使う言葉で、ウランとかプルトニウムっていう、われてすごく大きなエネルギーを出す物質がある量以上集まると、勝手に核分裂っていう反応を起こし続ける状態になるんだけど、その状態になるために最低限必要な量のことをいうんだ。この量は、物質の種類だけじゃなくて、形や密度、周りの物質によっても変わるんだ。例えば、周りに核分裂で出たものを遅くしたり、反射させたりするものがない場合は、球の形が最も少ない量で反応を起こし続ける状態になる。ウラン235っていう物質だと球の形でだいたい20キログラム、プルトニウム239だとだいたい5キログラムでその状態になるんだ。

臨界質量:核分裂連鎖反応の鍵

臨界質量:核分裂連鎖反応の鍵

原子力発電は、物質の根源的な性質を利用して膨大なエネルギーを生み出す技術です。その中心となるのが核分裂反応と呼ばれる現象です。ウランやプルトニウムといった、原子核が分裂しやすい性質を持つ物質に中性子と呼ばれる粒子が衝突すると、原子核は不安定な状態になり、二つ以上の原子核に分裂します。これが核分裂です。

核分裂の際に特筆すべきは、単に原子核が分裂するだけでなく、新たな中性子が複数放出される点です。この放出された中性子が、周囲の他の原子核に衝突すると、さらに核分裂が引き起こされます。これが繰り返されることで、莫大な数の原子核が連鎖的に分裂し、膨大なエネルギーが放出されるのです。この現象こそが、核分裂連鎖反応です。

臨界質量とは、この核分裂連鎖反応を持続的に起こすために必要な、核分裂性物質の最小量を指します。核分裂性物質の量が臨界質量に達しない場合、放出された中性子は系外に逃げてしまい、連鎖反応は持続しません。しかし、核分裂性物質の量が臨界質量以上になると、放出された中性子は高確率で他の原子核と衝突し、連鎖反応が持続するようになります。原子力発電所では、この臨界質量を厳密に制御することで、安全かつ安定的にエネルギーを生み出しているのです。

用語 説明
核分裂 ウランやプルトニウムといった物質に中性子が衝突することで、原子核が分裂し、エネルギーが放出される現象。
核分裂連鎖反応 核分裂により放出された中性子が、さらに他の原子核と衝突して核分裂を引き起こし、連鎖的に反応が続く現象。
臨界質量 核分裂連鎖反応を持続的に起こすために必要な、核分裂性物質の最小量。

様々な要因が影響する臨界質量

様々な要因が影響する臨界質量

原子核が核分裂を起こす際に、新たな核分裂を引き起こす中性子が発生します。この中性子が次の原子核に衝突し、さらに核分裂が起きる連鎖反応が起こるためには、核分裂性物質がある一定量以上存在する必要があります。この量を臨界質量と呼びます。
臨界質量は、様々な要因によって変化します。まず、核分裂を起こしやすい物質ほど、臨界質量は小さくなります。これは、物質によって中性子を吸収しやすさが異なるためです。例えば、ウラン235とプルトニウム239では、プルトニウム239の方が少ない量で連鎖反応を起こすことができます。
次に、核分裂性物質の形も臨界質量に影響を与えます。同じ質量でも、平べったい形よりも球形に近づくほど臨界質量は小さくなります。これは、球形の方が表面積が小さいため、発生した中性子が外部に逃げにくく、核分裂の効率が良くなるためです。
さらに、周囲の環境も臨界質量に影響を与えます。中性子を反射する物質、例えば水や黒鉛などを核分裂性物質の周りに置くと、外部に逃げるはずの中性子が反射され、再び核分裂を起こすために利用されます。そのため、反射材があると、臨界質量はさらに小さくなります。
このように、臨界質量は物質の種類や形状、周囲の環境によって大きく変化します。原子力発電など、安全に原子力を利用するためには、これらの要素を考慮して、厳密に管理する必要があります。

要因 詳細 臨界質量への影響
核分裂性物質の種類 物質によって中性子を吸収しやすさが異なるため、核分裂の起こりやすさが異なる。 核分裂しやすい物質ほど、臨界質量は小さくなる。
例: ウラン235よりもプルトニウム239の方が臨界質量は小さい。
核分裂性物質の形状 同じ質量でも、形状によって中性子の逃げやすさが変わる。 球形に近づくほど臨界質量は小さくなる。
理由: 表面積が小さいため、中性子が外部に逃げにくい。
周囲の環境 中性子を反射する物質があると、核分裂の効率が変わる。 反射材があると臨界質量は小さくなる。
例: 水や黒鉛

原子力発電における臨界質量の制御

原子力発電における臨界質量の制御

原子力発電所では、ウランなどの核燃料物質が核分裂を起こす際に膨大なエネルギーが放出されます。このエネルギーを電気として利用するためには、核分裂反応を安全に制御する必要があります。その鍵となるのが臨界質量の制御です。

臨界質量とは、核分裂の連鎖反応が持続的に起こるために必要な核燃料物質の最小量を指します。原子炉内では、核燃料物質をペレットと呼ばれる小さな円柱状に加工し、ジルコニウム合金製の燃料棒に封入しています。さらに、これらの燃料棒を束にして原子炉内に配置することで、核分裂の連鎖反応を制御しやすい状態にしています。

原子炉内には、核分裂反応の速度を調整するための制御棒も挿入されています。制御棒は、中性子を吸収しやすい材料で作られており、炉心に挿入する深さを調整することで、核分裂の連鎖反応を加速させたり、減速させたりすることができます。緊急時には、制御棒を完全に炉心に挿入することで、核分裂の連鎖反応を停止させることができます。

このように、原子力発電所では、核燃料物質の形状や量、制御棒の操作などを緻密に制御することによって、安全かつ安定的に発電を行っています。臨界質量を常に監視し、適切に制御することは、原子力発電の安全確保において極めて重要な要素と言えるでしょう。

項目 説明
核燃料物質 ウランなど、核分裂を起こす物質
臨界質量 核分裂の連鎖反応が持続的に起こるために必要な核燃料物質の最小量
燃料ペレット 核燃料物質を小さな円柱状に加工したもの
燃料棒 燃料ペレットをジルコニウム合金製の容器に封入したもの
制御棒 中性子を吸収しやすい材料で作られており、核分裂の速度を調整する