未来への挑戦:石炭ガス化複合発電
電力を見直したい
先生、「石炭ガス化複合発電」って普通の石炭火力発電と比べて何が違うんですか?
電力の研究家
良い質問だね!どちらも石炭を使う発電方法だけど、石炭を燃やす方法が違うんだ。普通の石炭火力発電は石炭をそのまま燃やすけど、「石炭ガス化複合発電」は、まず石炭を高温高圧でガスに変えてから燃やすんだよ。
電力を見直したい
ガスに変えることで何かいいことがあるんですか?
電力の研究家
そうなんだ!ガスに変えることで、燃やす時に出る汚れを減らせて、発電の効率も良くなるんだ。環境にも優しい発電方法として期待されているんだよ。
石炭ガス化複合発電とは。
「石炭ガス化複合発電」は、細かい石炭をとても熱い高圧の炉で燃やしやすいガスに変え、そのガスで発電機を回して電気を作ります。さらに、その時の熱を使って蒸気を作り、別の発電機を回してより多くの電気を作ります。普通の石炭発電の効率が約42%なのに対し、この方法だと約50%になると見込まれており、効率よく電気を起こせるのが利点です。この技術は、石炭を有効活用してエネルギーを安定供給できるだけでなく、効率が良いので地球温暖化対策にもなります。そのため、国と電力会社が協力して開発を進めています。1990年代半ばには、福島県いわき市にある勿来発電所で、1日に200トンの石炭をガスに変える実験設備の運転に成功しました。そして次は、実際の発電所(約600MW)の約半分の規模に相当する、1日に1700トンの石炭を使う実証機(250MW級)の開発が進められています。(2007年建設開始予定)
石炭ガス化複合発電とは
石炭ガス化複合発電(IGCC)は、従来の石炭火力発電とは大きく異なる、環境への負荷を抑えながら高い効率で発電できる、次世代を担う技術です。
従来の石炭火力発電では、石炭を燃やす際に発生する熱を直接水に変えて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電していました。一方、IGCCでは、まず石炭を高温高圧の環境下でガス化します。この工程を経ることで、水素や一酸化炭素を主成分とする、燃えやすいガスを作ることができます。次に、このガスを燃料としてガスタービンを回し発電を行います。さらに、ガスタービンから出る高温の排ガスを利用して蒸気を作り、蒸気タービンでも発電を行います。このようにIGCCは、ガスタービンと蒸気タービンの二つのタービンを組み合わせることで、エネルギーを無駄なく使い、高い効率での発電を可能にしています。
また、IGCCは環境負荷の低減にも大きく貢献します。ガス化の過程で発生する二酸化炭素は、回収しやすく、大気中への放出量を大幅に削減できます。さらに、硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質も、従来の石炭火力発電に比べて発生量が少なく、クリーンな発電方法として期待されています。
項目 | 従来の石炭火力発電 | 石炭ガス化複合発電(IGCC) |
---|---|---|
プロセス | 石炭を燃焼させて水蒸気を生成し、蒸気タービンを回して発電 | 石炭をガス化して水素・一酸化炭素を主成分とする燃料ガスを生成し、ガスタービンと蒸気タービンの両方で発電 |
効率 | 低い | 高い(ガスタービンと蒸気タービンの組み合わせ) |
環境負荷 | 高い(二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量が多い) | 低い(二酸化炭素の回収が容易、大気汚染物質の排出量が少ない) |
従来の発電方法との違い
発電方法として、従来から広く利用されてきた石炭火力発電と、近年注目されている石炭ガス化複合発電(IGCC)は、その仕組みが大きく異なります。
石炭火力発電は、その名の通り石炭を燃焼させることで発生する熱を利用して蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回転させて発電します。火力発電所から排出される煙は、燃焼によって生じたものです。
一方、IGCCでは、石炭を燃焼させるのではなく、ガス化炉と呼ばれる装置を用いて、石炭を高温・高圧の環境下でガスに変換します。このガス化の過程で発生する一酸化炭素や水素を含むガスを燃料としてガスタービンを回し、さらにその排熱を利用して蒸気タービンも回転させることで、より効率的に発電を行います。
このように、IGCCは従来の石炭火力発電と比較して、エネルギー変換効率が高く、発電効率は約42%の石炭火力発電に対し、約50%に達すると期待されています。これは、IGCCが石炭のエネルギーをより有効に活用できることを示しており、地球温暖化対策としても重要な技術と言えるでしょう。
項目 | 石炭火力発電 | 石炭ガス化複合発電(IGCC) |
---|---|---|
仕組み | 石炭を燃焼させて熱で蒸気を生成し、蒸気タービンを回して発電 | 石炭をガス化し、生成したガスでガスタービンを回し、さらに排熱で蒸気タービンも回して発電 |
発電効率 | 約42% | 約50% |
特徴 | 従来型の発電方式、CO2排出量が多い | エネルギー変換効率が高く、CO2排出量削減が可能 |
環境への配慮
– 環境への配慮石炭ガス化複合発電(IGCC)は、従来の石炭火力発電と比較して、環境負荷を大幅に低減できる発電技術として注目されています。IGCCの最大の特徴は、石炭をガス化する過程で発生する硫黄酸化物や窒素酸化物などの有害物質を、ガス化炉内で除去できる点です。従来の石炭火力発電では、これらの有害物質は排ガスとして大気中に放出されていましたが、IGCCではガス化炉内で除去することで、大気汚染の抑制に大きく貢献します。さらに、IGCCは二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)との組み合わせが容易である点も大きなメリットです。CCSは、工場や発電所などから排出される二酸化炭素を回収し、地中深くに貯留することで大気中への放出を抑制する技術です。IGCCとCCSを組み合わせることで、二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、地球温暖化対策としても有効な選択肢となります。このように、IGCCは環境負荷低減に大きく貢献する可能性を秘めた発電技術であり、地球環境の保全に貢献できる技術として、今後の更なる発展が期待されています。
項目 | 内容 |
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技術名 | 石炭ガス化複合発電 (IGCC) |
従来技術と比べたメリット | 環境負荷を大幅に低減できる |
最大の特徴 | 石炭をガス化する過程で発生する硫黄酸化物や窒素酸化物などの有害物質を、ガス化炉内で除去できる |
従来技術と比べた排出ガス処理の違い | 従来の石炭火力発電では有害物質は排ガスとして大気中に放出されていたが、IGCCではガス化炉内で除去することで大気汚染を抑制 |
その他のメリット | 二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)との組み合わせが容易 |
CCS と組み合わせたメリット | 二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、地球温暖化対策としても有効 |
今後の展望 | 地球環境の保全に貢献できる技術として、更なる発展が期待される |
日本の取り組み
我が国は、エネルギー資源に恵まれないという事情を抱えており、エネルギーの安定供給をいかに確保するかは、国家的な重要課題といえます。このような状況下、石炭を有効活用しつつ環境負荷の低減も実現できる技術として、IGCC(石炭ガス化複合発電)が注目されています。IGCCは、石炭をガス化して発電するシステムであり、従来の石炭火力発電に比べて、発電効率が高く、環境負荷が低いという利点があります。
日本は、1990年代からIGCCの技術開発に積極的に取り組んでおり、福島県いわき市において、パイロットプラントを建設し、運転に成功しました。このパイロットプラントでの運転経験は、IGCC技術の実用化に向けた貴重なデータを提供しました。そして、現在では、より大規模な実証機開発が進められています。これらの実証機開発は、IGCC技術の信頼性をさらに高め、コスト削減を実現する上で重要な役割を担っています。
このように、日本は、IGCC技術の実用化に向けて、着実に歩みを進めています。これらの取り組みは、将来のエネルギー供給を支える重要な一歩となるだけでなく、地球温暖化対策にも大きく貢献することが期待されます。
項目 | 内容 |
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背景 |
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IGCCとは |
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日本の取り組み |
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期待される効果 |
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未来への展望
– 未来への展望
現在、地球温暖化をはじめとする様々な環境問題が深刻化し、持続可能な社会の実現に向けて、エネルギー問題の解決は私たち人類にとって喫緊の課題となっています。その中で、従来の火力発電に比べて高効率で環境負荷の低い発電技術として、石炭ガス化複合発電(IGCC)が注目されています。
IGCCは、石炭をガス化してから燃焼させることで、発電効率を高めると同時に、大気汚染物質の排出を大幅に削減できます。さらに、二酸化炭素の回収・貯留技術(CCS)と組み合わせることで、二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、地球温暖化対策にも大きく貢献できます。
IGCCの実用化には、まだ技術的な課題も残されていますが、世界各国で研究開発が進められており、日本でも実証プラントの建設や運転が進められています。近い将来、IGCCがエネルギー問題解決の切り札の一つとして、世界中で広く普及していくことが期待されています。
IGCCは、エネルギーの安定供給と環境保全を両立させることができる、未来の社会を支える重要な技術となる可能性を秘めています。世界的に環境問題への意識が高まる中、IGCCは、日本だけでなく、世界中の国々にとって重要な選択肢となる可能性を秘めています。
項目 | 内容 |
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現状 | – 地球温暖化などの環境問題深刻化 – 持続可能な社会に向け、エネルギー問題解決が課題 |
IGCCの特徴 | – 石炭をガス化して燃焼させる発電技術 – 火力発電より高効率、低環境負荷 – 大気汚染物質排出の大幅削減 – CCSとの組み合わせで二酸化炭素排出削減、地球温暖化対策に貢献 |
現状と展望 | – 実用化には技術的課題残る – 世界各国で研究開発進行、日本でも実証プラント建設・運転 – エネルギー問題解決の切り札として世界普及に期待 |
IGCCの意義 | – エネルギー安定供給と環境保全の両立 – 未来社会を支える重要技術 – 世界的環境意識の高まりの中で重要な選択肢 |