CO2削減への挑戦:RECOPOLプロジェクト

CO2削減への挑戦:RECOPOLプロジェクト

電力を見直したい

先生、「RECOPOLプロジェクト」って、どんなことを目的としたプロジェクトだったんですか?

電力の研究家

RECOPOLプロジェクトはね、CO2を地下の石炭層に閉じ込めておくことで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを減らすことができるかどうかを調べるためのプロジェクトだよ。

電力を見直したい

地下の石炭層にCO2を閉じ込めておく、んですね!具体的にどうやってCO2を閉じ込めるんですか?

電力の研究家

ポーランドの炭鉱跡にCO2を注入する実験が行われたんだよ。この実験では、CO2を注入することで、石炭層に含まれるメタンガスを回収できる可能性も探っていたんだ。

RECOPOLプロジェクトとは。

「RECOPOLプロジェクト」は、原子力発電ではなく、二酸化炭素を減らすための取り組みの一つです。この取り組みは、石炭層に二酸化炭素を貯留することで、二酸化炭素の排出量を減らすことを目指しています。

RECOPOLは、2001年11月にヨーロッパ連合の事業の一つとして始まりました。ヨーロッパを中心に10ヶ国、15の機関が参加し、日本からも石炭エネルギーセンターがこの取り組みに参加しています。

この取り組みの目的は、石炭層に二酸化炭素を貯留することによって、どれくらい温室効果ガスの排出量を減らせるかを調べることです。2003年12月には、ポーランドの炭鉱で、実際に二酸化炭素を地下に貯留する実験が始まりました。この実験では、もともとガスを採取するために掘られていた二つの穴と、新しく掘られた一つの穴が使われています。

実験では、深さ約1200メートル、幅約750メートルの範囲にある、石炭層に二酸化炭素を注入します。この石炭層は、石炭の中にたくさんのガスを含んでおり、二酸化炭素を注入することで、そのガスを取り出すこともできます。

この実験によって、石炭層に貯留できる二酸化炭素の量は、石炭の古さによって大きく変わるということが分かってきました。

はじめに

はじめに

– はじめに地球全体の気温上昇が深刻化する中、二酸化炭素(CO2)の排出量をいかに減らすかは、世界規模で取り組むべき課題となっています。その解決策として期待されている技術の一つに、CO2を地中に閉じ込めてしまう技術、CCS(Carbon Capture and Storage)があります。CCSは、工場や発電所などから排出されるCO2を回収し、地下深くの地層に貯留することで大気中への放出を防ぐ技術です。

CCSの中でも、CO2を炭素を含む地層に注入し、炭素を地中に固定化する技術を「CO2炭層固定化」と呼びます。この技術は、石炭層から天然ガスを回収する際に用いられる技術を応用したものであり、CO2の貯留と同時にエネルギー資源の回収も期待できます。

今回は、EUが中心となって進めているCO2炭層固定化プロジェクトであるRECOPOLプロジェクトについて詳しく解説します。RECOPOLプロジェクトは、ポーランド国内の炭鉱跡地を利用した大規模な実証実験であり、CO2炭層固定化技術の実用化に向けた重要な一歩となることが期待されています。

技術名 概要 期待される効果 プロジェクト例
CCS (Carbon Capture and Storage) 工場や発電所から排出されるCO2を回収し、地下深くの地層に貯留する技術 CO2の大気中への放出を防ぎ、地球温暖化の抑制に貢献
CO2炭層固定化 CO2を炭素を含む地層に注入し、炭素を地中に固定化する技術。
石炭層から天然ガスを回収する技術を応用。
CO2の貯留と同時にエネルギー資源の回収が可能 RECOPOLプロジェクト (ポーランド)
– 炭鉱跡地を利用した大規模実証実験

RECOPOLプロジェクトの概要

RECOPOLプロジェクトの概要

– RECOPOLプロジェクトの概要RECOPOLプロジェクトは、「Reduction of CO2 emission by means of CO2 storage in coal seams in the Silesian coal basin of Poland(ポーランドのシレジア炭田における石炭層へのCO2貯留によるCO2排出削減)」の略称です。このプロジェクトは、2001年11月に欧州連合(EU)の第5次フレームワーク事業の一環として開始されました。RECOPOLプロジェクトの目的は、二酸化炭素(CO2)を石炭層に貯留することによって、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量をどの程度削減できるのか、その可能性を評価することでした。 これは、オランダにある応用地球科学研究所が中心となって進められましたが、日本を含めた世界10ヶ国、15の機関が参加する国際的な取り組みとして実施されました。

項目 内容
プロジェクト名 RECOPOL
正式名称 Reduction of CO2 emission by means of CO2 storage in coal seams in the Silesian coal basin of Poland(ポーランドのシレジア炭田における石炭層へのCO2貯留によるCO2排出削減)
開始時期 2001年11月
プロジェクトの目的 二酸化炭素(CO2)を石炭層に貯留することによって、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量をどの程度削減できるのか、その可能性を評価する。
主導機関 オランダにある応用地球科学研究所
参加機関 日本を含めた世界10ヶ国、15の機関

世界初の実証実験

世界初の実証実験

世界で初めてとなる二酸化炭素の地中貯留の実証実験は、2003年12月、ポーランドのシレジア炭田で開始されました。この実験は「RECOBOLプロジェクト」と呼ばれ、欧州で初めての試みとして世界中から大きな注目を集めました。シレジア炭田は、かつて石炭の採掘が盛んに行われていた地域です。実験では、石炭からメタンガスを回収する炭層ガス回収技術によって既に掘削されていた二本の孔井を二酸化炭素の回収孔として利用し、新たに掘削した一本の孔井から二酸化炭素を注入しました。そして、注入された二酸化炭素が地層にどのように貯留されていくのか、長期間にわたって観測と分析が行われました。その結果、この実験は二酸化炭素を安全かつ確実に地中に貯留できることを実証し、二酸化炭素回収・貯留技術の実用化に向けた大きな一歩となりました。

項目 内容
プロジェクト名 RECOBOLプロジェクト
実施年 2003年12月〜
場所 ポーランド シレジア炭田 (かつての炭鉱)
概要 炭層ガス回収技術によって掘削済みの孔井2本を二酸化炭素回収孔として利用、新たに掘削した孔井1本から二酸化炭素を注入し、長期観測と分析を実施。
結果 二酸化炭素を安全かつ確実に地中に貯留できることを実証。二酸化炭素回収・貯留技術の実用化に向けた大きな一歩。

石炭層へのCO2貯留

石炭層へのCO2貯留

近年、地球温暖化対策として二酸化炭素の排出削減が急務となっています。その中で注目されている技術の一つに、二酸化炭素を地下深くに貯留する技術、すなわち二酸化炭素回収・貯留技術があります。

この技術は、工場や発電所などから排出される二酸化炭素を回収し、地下深部の帯水層や枯渇した油ガス田などに圧入して貯留するものです。 このような貯留場所の中でも、石炭層は二酸化炭素を吸着する性質を持つため、有望な貯留層として期待されています。

ポーランドのシレジア炭田で行われた実証実験では、累積炭層厚が約50メートル、平均ガス包蔵量が1トン当たり10立方メートルという特徴を持つ石炭層に二酸化炭素が注入されました。シレジア炭田の石炭層は、二酸化炭素の貯留に適した条件を備えていたのです。

さらに、この実験では二酸化炭素を石炭層に注入することで、石炭層に含まれるメタンガスを回収できるという興味深い結果も得られました。 メタンガスは天然ガスと同様に利用できるエネルギー資源です。つまり、二酸化炭素の貯留と同時にエネルギー資源を回収できる可能性も秘めているのです。これは二酸化炭素の排出削減だけでなく、エネルギー資源の確保という観点からも経済的なメリットをもたらす可能性を示唆しており、今後の技術開発が期待されています。

技術 概要 貯留層 メリット 実証実験
二酸化炭素回収・貯留技術 工場や発電所などから排出される二酸化炭素を回収し、地下深部に圧入して貯留する技術。 帯水層、枯渇した油ガス田、石炭層など 二酸化炭素の排出削減、エネルギー資源の確保 ポーランドのシレジア炭田で実施。石炭層に二酸化炭素を注入し、メタンガスを回収。

石炭層貯留の課題

石炭層貯留の課題

– 石炭層貯留の課題

二酸化炭素を地中に閉じ込めて大気中への放出を防ぐ技術、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)は、地球温暖化対策の切り札として期待されています。中でも、石炭層への二酸化炭素貯留は、石炭を燃焼する際に発生する二酸化炭素を再び石炭層へ戻すことで、排出量削減に大きく貢献できる可能性を秘めています。

しかし、石炭層貯留は、その貯留効率に大きなばらつきがあることが課題として挙げられます。近年、ヨーロッパで行われたREOCOLプロジェクトの研究成果により、石炭層に貯留できる二酸化炭素の量は、石炭の年代によって大きく異なることが明らかになりました。これは、石炭層を構成する岩石の隙間や割れ目の量や大きさ、あるいは石炭そのものの化学的性質が、年代を経るにつれて変化するためと考えられています。

この研究成果は、石炭層貯留を行うためには、貯留サイトの地質を詳細に調査し、それぞれのサイトに最適な貯留方法を検討する必要があることを示唆しています。具体的には、貯留層の精密な三次元モデルを作成し、二酸化炭素の圧入による地盤沈下や、周辺環境への影響などを予測する技術の開発が求められています。また、二酸化炭素の漏洩を長期的に監視する技術の開発も不可欠です。

石炭層貯留は、地球温暖化対策として大きな可能性を秘めている一方で、克服すべき技術的な課題も残されています。これらの課題を解決し、安全かつ効率的な石炭層貯留技術を確立することが、持続可能な社会の実現に向けて重要となるでしょう。

項目 内容
技術名 二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)
種類 石炭層貯留
目的 二酸化炭素を地中に閉じ込めて大気中への放出を防ぐ
期待される効果 地球温暖化対策
課題 貯留効率に大きなばらつきがある
貯留サイトの地質に依存する
貯留層の精密な三次元モデル作成が必要
二酸化炭素の圧入による地盤沈下や、周辺環境への影響予測が必要
二酸化炭素の漏洩を長期的に監視する技術が必要
今後の展望 安全かつ効率的な石炭層貯留技術を確立

今後の展望

今後の展望

– 今後の展望

地球温暖化という世界規模の課題を前に、二酸化炭素の排出量削減は喫緊の課題となっています。その有効な手段の一つとして期待されているのが、二酸化炭素回収・貯留技術、すなわちCCS技術です。RECOPOLプロジェクトは、このCCS技術の実用化に向けた大きな一歩となる成果を上げました。

RECOPOLプロジェクトで得られた知見は、今後のCCS技術開発を大きく前進させるでしょう。具体的には、二酸化炭素の回収効率向上や、貯留の安全性向上、そしてコスト削減といった課題解決に繋がるものと期待されています。

世界では、地球温暖化対策としてCCS技術への期待はますます高まっており、今後も研究開発や実証実験が世界中で活発に行われると予想されます。日本としても、RECOPOLプロジェクトの成果を活かし、国際協力のもと、CCS技術の実用化を推進していくことが重要です。

CCS技術は、地球温暖化を抑制し、持続可能な社会を実現するための切り札の一つとなる可能性を秘めています。今後の技術開発の進展に、そしてこの技術が地球の未来に貢献していくことに大きな期待が寄せられています。