原子力発電所の建設開始時期: 着手と着工

原子力発電所の建設開始時期: 着手と着工

電力を見直したい

先生、「原子力発電に関する用語『着手』について」ですが、資料によると『着手』は電源開発調整審議会で認められて、電源開発基本計画に組み込まれた時点って書いてあります。でも、実際に工事が始まるのは『着工』の時ですよね?なんだか紛らわしいんですけど、どうしてこんな風に分かれているんですか?

電力の研究家

なるほど、確かに紛らわしいよね。原子力発電所のような大きな事業は、実際に工事を始めるまでに、計画の検討や認可など、たくさんの段階を踏む必要があるんだ。そして、それぞれの段階で、関係機関や国民への説明責任を果たす必要もあるんだよ。

電力を見直したい

じゃあ、『着手』と『着工』を分けることで、計画の進捗を明確に示せるようにしてるってことですか?

電力の研究家

その通り!『着手』は、国の計画として正式に認められた段階を示し、『着工』は、実際に工事が始まる段階を示す。このように段階を分けて示すことで、国民は計画の進捗状況を把握しやすくなるんだよ。

着手とは。

電力会社の間では、原子力発電所を新たに作るときに、「着手」と「着工」という言葉を使います。それぞれの言葉の意味は、以下の通りです。(1)「着手」:発電所の建設を始める計画について、内閣総理大臣を長とする電源開発調整審議会という会議で、建設の開始が認められ、国の電力に関する計画に盛り込まれた時点を指します。(2)「着工」:発電所の建設工事の計画について、経済産業大臣から許可を得た後、実際に現地で工事を開始した時点を指します。

発電所建設の第一歩

発電所建設の第一歩

新しい原子力発電所を建設するとなれば、電力会社は気の遠くなるような長い道のりを歩むことになります。それはちょうど、壮大な建築物を建てるために、設計図の作成から始まり、様々な専門家の意見を聞きながら、長い時間をかけて安全性を確認していくようなものです。そして、この長い道のりの最初の大きな節目が「着手」と呼ばれる段階です。

この「着手」は、単に電力会社が「ここに発電所を建てたい」と考えただけではありません。電力会社は、まず国の定める厳しい安全基準に基づいて、具体的な建設予定地や発電所の設計、そして環境への影響などを詳細にまとめた計画書を作成します。この計画書は、国の専門機関による厳正な審査を受けます。そして、原子力規制委員会による安全性の確認や、経済産業大臣による電力供給の観点からの必要性の確認など、幾重もの関門を突破しなければなりません。

「着手」とは、こうした厳しい審査を経て、国の重要な審議会がその計画を妥当と認め、国の電力供給計画に正式に位置付けられたことを意味します。これは、電力会社にとって、長い道のりの第一歩を踏み出したことを示すと同時に、国のエネルギー政策においても重要な意味を持つことになります。

段階 内容 関係機関
計画書作成 建設予定地、発電所の設計、環境への影響などを詳細にまとめた計画書を作成 電力会社
審査 計画書に対する厳正な審査
– 安全性審査
– 電力供給の必要性確認
– 原子力規制委員会
– 経済産業大臣
着手 審査を経て、計画が妥当と認められ、国の電力供給計画に正式に位置付けられる。 国の重要な審議会

国の審議会による厳正な審査

国の審議会による厳正な審査

原子力発電所は、国のエネルギー事情を大きく左右し、私たちの暮らしや安全、そして未来の環境にも深く関わってくるため、電力会社の一存で建設を決めることはできません。そこで、国の重要な計画を検討する場として、内閣総理大臣をトップとする「電源開発調整審議会」が設置されています。この審議会では、電力会社が提出した原子力発電所の建設計画について、電力供給の必要性や安全性、環境への影響など、様々な観点から多角的かつ厳正な審査が行われます。審議会には、学識経験者や公正な判断をする専門家も参加し、国民の意見も踏まえながら慎重に審議が進められます。そして、この審議を経て国の重要な指針となる「電源開発基本計画」に盛り込まれることで、ようやく発電所の建設に着手することができるのです。

審議会名 トップ 審議内容 審議参加者 備考
電源開発調整審議会 内閣総理大臣 電力会社が提出した原子力発電所の建設計画について、電力供給の必要性や安全性、環境への影響など、様々な観点から多角的かつ厳正な審査 学識経験者、公正な判断をする専門家 国民の意見も踏まえながら慎重に審議
審議を経て国の重要な指針となる「電源開発基本計画」に盛り込まれる

具体的な工事に向けた準備段階

具体的な工事に向けた準備段階

原子力発電所の建設は、国の計画が承認された段階から、ただちに工事が始まるわけではありません。「着手」とは、あくまでも計画が正式に認められたという段階を指します。発電所の建設には、実際に工事を始めるまでに、多岐にわたる準備が必要となります。

まず、電力会社は、承認された計画に基づき、発電所の設計をより具体的に詰めていく作業を行います。建物の構造や使用する機器の仕様など、詳細な設計図を作成していくのです。同時に、建設に必要な資材の調達計画も立てられます。鉄鋼やコンクリートなどの大量の資材を、いつ、どこから、どのように調達するかを綿密に計画し、必要な契約を結んでいきます。

さらに、電力会社は、工事に関わる様々な企業と契約を締結します。建設会社はもちろんのこと、電気設備や配管工事、土木工事など、専門性の高い技術を持つ様々な企業が参画し、巨大なプロジェクトを協力して進めていきます。

これらの準備と並行して、電力会社は、地域社会との共存に向けた取り組みも進めます。環境への影響を評価する調査を実施し、その結果を地域住民に丁寧に説明します。住民の意見を聞き取り、懸念や不安を解消するための対話を重ねることで、理解と協力を得られるよう努めるのです。

段階 内容 関係者
計画承認後 ・発電所の設計の具体化
・資材調達計画の作成
電力会社
建設準備 ・建設に関わる企業との契約
・環境影響評価調査の実施
・地域住民への説明と対話
電力会社、建設会社、電気設備会社、配管工事会社、土木工事会社、地域住民

工事開始の許可と「着工」

工事開始の許可と「着工」

電力会社が原子力発電所を新たに建設する場合、幾つもの段階を経て計画を進めていく必要があります。まず、電力会社は発電所の建設準備段階が整うと、国に対して「工事計画」の認可を申請します。この申請は、経済産業大臣に対して行われ、発電所の設計図や建設方法が国の定める安全基準や環境基準を満たしているかどうか厳格に審査されます。

この審査は、原子力発電所の安全性を確保するために非常に重要であり、経済産業大臣は原子力規制委員会の意見を聴いて、認可を与えるかどうかを決定します。そして、経済産業大臣の認可が下りて初めて、実際に建設予定地において建設工事が開始されます。この工事が開始されることを「着工」と呼びます。つまり、「着工」とは、原子力発電所の建設が実際に始まる段階を指し、それは国の厳しい安全審査を通過した後に行われる重要なプロセスなのです。

段階 内容 備考
工事計画認可申請 電力会社が経済産業大臣へ提出 発電所の設計図や建設方法が安全基準・環境基準を満たしているか審査される
審査・認可 経済産業大臣が原子力規制委員会の意見を聴いて決定 安全性確保のために非常に重要
着工 実際に建設予定地において建設工事が開始 国の厳しい安全審査を通過した後に行われる

「着手」と「着工」の違い

「着手」と「着工」の違い

「着手」と「着工」は、どちらも原子力発電所建設における重要な節目ですが、その意味合いは大きく異なります。
「着手」とは、国の電源開発計画に発電所の建設計画が正式に位置付けられたことを指します。これは、国がその発電所の建設を認可し、計画がスタートラインに立ったことを意味します。
一方、「着工」は、実際に発電所の建設工事が開始された時点を指します。具体的には、敷地造成や基礎工事といった最初の作業が開始された段階を指し、計画が実行段階に移行したことを示します。
「着手」から「着工」までは、通常数年程度の期間が必要です。その間、電力会社は、関係省庁への許認可申請や地元住民との合意形成、環境影響評価の実施、建設資材の調達など、様々な準備や手続きを進めます。これらの準備が整って初めて、「着工」に至り、原子力発電所建設が本格的に動き出すのです。

項目 内容
着手 国の電源開発計画に発電所の建設計画が正式に位置付けられた段階。国の認可を得て、計画がスタートラインに立ったことを示す。
着工 実際に発電所の建設工事が開始された時点。敷地造成や基礎工事といった最初の作業が開始され、計画が実行段階に移行したことを示す。
着手から着工までの期間 通常数年程度。許認可申請、地元合意形成、環境影響評価、建設資材調達などの準備や手続きが必要。