エネルギー政策の変遷:電源開発基本計画から重要電源開発地点へ

エネルギー政策の変遷:電源開発基本計画から重要電源開発地点へ

電力を見直したい

先生、「電源開発基本計画」って昔あった計画のことですよね?今はもうないみたいなんですが、どんな計画だったんですか?

電力の研究家

よく知ってるね!「電源開発基本計画」は、国の電気を作るために、どんな発電所を、いつ、どこに作るのかを決める計画だったんだよ。

電力を見直したい

へえー!国の電気を作る計画を立ててたんですね!でも、今はもうないんですよね?

電力の研究家

そうなんだ。時代が変わって、電力会社だけでなく、色々な会社が電気を作るようになったから、計画も変わっていったんだね。今は「重要電源開発地点」っていうのを決めて、そこで電気を作ることを応援しているんだよ。

電源開発基本計画とは。

「電源開発基本計画」は、かつて原子力発電を含む電力を作るための計画でした。国の発展や電力需要などを考えて、内閣総理大臣が決めていました。しかし、2000年以降の国のしくみの変化によって、この計画はなくなりました。そこで、同じような役割を新しく担うために、2004年からは「重要電源開発地点」を決めることになりました。これは、電力会社からの申し込みを受けて、経済産業大臣が決める仕組みで、地域の人たちの理解を得ながら、関係する省庁での手続きをスムーズに進めることを目指しています。

かつての電源開発の指針:電源開発基本計画

かつての電源開発の指針:電源開発基本計画

我が国の電力供給を語る上で、かつて「電源開発基本計画」は欠かせないものでした。これは、1968年に施行された電源開発促進法に基づき、国の状況を総合的に判断し、将来の電力需要を予測した上で策定されました。具体的には、国土の地理的条件、予想される電力需要、そして環境や経済への影響などを考慮し、長期的な展望に立って計画されました。この計画策定の責任を担ったのは内閣総理大臣であり、専門家からなる電源開発調査審議会に意見を聞いた上で、最終的な決定を下していました。このように、「電源開発基本計画」は、国が陣頭指揮を執り、長期的な安定供給の確保を目的とした電源開発の羅針盤としての役割を担っていました。電力会社はこの計画に基づき、火力、水力、原子力など、それぞれの電源の開発計画を具体化し、実行に移していきました。 「電源開発基本計画」は、高度経済成長期の電力需要の増大に対応し、日本の経済成長を支える上で重要な役割を果たしました。しかし、その後、省エネルギー技術の進展や環境問題への意識の高まりなどを背景に、電力供給を取り巻く状況は大きく変化し、2018年に廃止されました。

項目 内容
根拠法 電源開発促進法(1968年施行)
目的 将来の電力需要を予測し、長期的な安定供給を確保するための電源開発
計画策定
  • 責任者:内閣総理大臣
  • 助言機関:電源開発調査審議会(専門家)
考慮事項
  • 国土の地理的条件
  • 予想される電力需要
  • 環境や経済への影響
電力会社の役割 計画に基づき、火力、水力、原子力など、それぞれの電源の開発計画を具体化し、実行
歴史的役割 高度経済成長期の電力需要増大に対応し、日本の経済成長を支えた
廃止 2018年

  • 省エネルギー技術の進展
  • 環境問題への意識の高まり
  • 電力供給を取り巻く状況の変化

計画廃止の背景:規制緩和と電力自由化

計画廃止の背景:規制緩和と電力自由化

2000年代に入ると、それまでの電力行政の在り方が大きく見直されることになりました。これは、規制緩和と電力自由化という二つの大きな流れが背景にあります。

従来は、電力会社は発電から送電、そして家庭への配電までを一貫して担い、独占的な事業形態をとっていました。政府はこのような電力会社に対して、発電所の建設場所や電力料金などを厳しく規制することで、国民の生活に欠かせない電力の安定供給を図ってきました。

しかし、社会経済の成熟に伴い、より安価で効率的な電力供給が求められるようになりました。そこで、電力業界にも競争原理を導入し、民間事業者の創意工夫による電力供給を促すために電力自由化が進められたのです。

このような流れの中で、電源開発についても、従来のように政府が詳細な計画を立てて進めるのではなく、電力会社を含む民間事業者が、需要や採算性を考慮しながら主体的に取り組むことが求められるようになったのです。

時代 電力行政の特徴 背景
2000年以前 – 電力会社による発電から配電までの一貫体制
– 政府による電力会社への厳格な規制(建設場所、料金など)
– 国民への安定供給の重視
2000年以降 – 電力自由化による競争原理の導入
– 民間事業者による電力供給の促進
– 民間事業者による需要や採算性を考慮した電源開発
– 規制緩和
– 安価で効率的な電力供給の必要性

新たな枠組み:重要電源開発地点の指定

新たな枠組み:重要電源開発地点の指定

2004年10月、従来の電源開発基本計画に代わる新たな枠組みとして「重要電源開発地点」の制度が導入されました。この制度は、民間企業による電源開発を促進するために設けられました。 具体的には、電気事業者が新たに発電所を建設する際に、経済産業大臣に対して特定の地点を「重要電源開発地点」として指定するよう申請できます。
重要電源開発地点として指定を受けることで、いくつかのメリットがあります。まず、電力会社は国のお墨付きを得た上で、地元住民への説明や合意形成活動を進めることができます。また、発電所の建設に必要な許認可手続きにおいても、関係省庁からの協力が得やすくなり、手続きが円滑に進むことが期待されます。
この制度は、電力自由化の進展により、多様な事業者が電力事業に参入しやすくなった一方で、発電所の建設には多大な時間と費用がかかることから、民間企業が積極的に投資しにくい状況を改善することを目的としています。 電源開発地点の指定は、電力供給の安定化と低炭素社会の実現に向けて、重要な役割を担うと期待されています。

制度 目的 内容 メリット 期待される役割
重要電源開発地点 民間企業による電源開発の促進 電気事業者が新たに発電所を建設する際に、経済産業大臣に対して特定の地点を「重要電源開発地点」として指定するよう申請できる制度
  • 国のお墨付きを得た上で、地元住民への説明や合意形成活動を進めることができる
  • 発電所の建設に必要な許認可手続きにおいても、関係省庁からの協力が得やすくなり、手続きが円滑に進むことが期待される
電力供給の安定化と低炭素社会の実現

電力供給の安定確保に向けて

電力供給の安定確保に向けて

電力不足や価格高騰といった事態を避けるためには、電力の安定供給は私たちの生活や経済活動の基盤として欠かせません。かつて日本では、電力需要を満たすために、国が主体となって電源開発を行う計画経済的な手法がとられていました。いわゆる電源開発基本計画に基づき、電力会社は発電所の建設や運用を進めてきました。
しかし時代は変わり、電力市場の自由化や脱炭素化の流れが加速する中で、より柔軟かつ効率的なエネルギーシステムの構築が求められるようになりました。そこで導入されたのが、市場の競争原理を活用した重要電源開発地点制度です。
この制度では、国が電力会社の発電所建設を促す特定の場所を指定し、事業者の投資を誘導します。これにより、電力会社は需要やコストなどを考慮しながら、自律的に発電所の開発や運用を行うことが可能となります。
ただし、市場原理に委ねるだけでは、エネルギー安全保障の観点から課題も残ります。例えば、災害や国際情勢の変化によって、電力の安定供給が脅かされる可能性も否定できません。
そのため、国は重要電源開発地点の指定に際し、地域の電力需要や災害リスクなどを慎重に見極める必要があります。さらに、再生可能エネルギーの導入促進や電力系統の強化など、多角的な政策を組み合わせることで、エネルギー政策のさらなる進化を目指すべきです。

時代背景 電力供給の枠組み 特徴 課題
かつての日本 計画経済に基づく電源開発基本計画 国が主導、電力会社は計画に従い発電所建設・運用
現在 市場の競争原理を活用した重要電源開発地点制度
  • 国が発電所建設を促す場所を指定し、事業者の投資を誘導
  • 電力会社は需要やコストなどを考慮し、自律的に発電所の開発や運用を行う
  • 災害や国際情勢の変化による電力安定供給のリスク