未来のエネルギー:原子力で水を水素に!
電力を見直したい
先生、ISプロセスってどういうものですか?
電力の研究家
ISプロセスは、簡単に言うと、水を水素と酸素に分解して水素を作る方法の一つだよ。800度から1000度くらいの熱を使うんだ。普通の熱分解よりも低い温度で水素を作れるのが特徴なんだよ。
電力を見直したい
水を分解するのに、どうしてそんなに高い温度が必要なんですか?
電力の研究家
水はとっても安定した物質だから、分解するためには大きなエネルギーが必要なんだ。そこで、ISプロセスではヨウ素と硫黄の化合物を循環させて、より少ないエネルギーで水を分解できるように工夫しているんだよ。
ISプロセスとは。
『ISプロセス』は、原子力発電で水素を作る技術の一つです。熱を使って水を水素と酸素に分解する方法で、『熱化学分解法』とも呼ばれます。ふつう、水を熱で分解するにはとても高い温度が必要ですが、ISプロセスでは、いくつかの化学反応を組み合わせることで、800度から1000度ほどの熱で分解できるのです。このプロセスでは、ヨウ素と硫黄の化合物を使い回しながら反応を進めるため、『ISプロセス』という名前がついています。熱化学分解法の優れた点は、水だけを材料として水素を作ることができるため、石炭や石油のように地球温暖化の原因となる炭素ガスを出さないことです。日本では、現在、原子力研究所が高温ガス炉の熱を使ったISプロセスによる水素製造の研究を、東京大学と東京農工大学では、カルシウムや鉄、臭素などの化合物を使い回す『UT-3プロセス』の研究を進めています。1000度近い高温の熱を取り出せる高温ガス炉による水素製造は、アメリカやフランスでも再び開発が始まるなど、世界中で注目されています。
水素社会と課題
地球温暖化は、私たち人類にとって喫緊の課題です。その対策として、二酸化炭素を出さない、環境に優しいエネルギーへの転換が世界中で求められています。こうした中、水素はエネルギーを運ぶ役割を担うものとして、大いに期待されています。
水素は、燃やしても水しか発生しないため、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しません。このことから、水素は次世代のエネルギー源として世界中から注目を集めています。しかし、水素をエネルギーとして利用していくためには、効率的に、そして大量に、水素を作り出す方法を確立する必要があるのです。
現在、水素の製造方法には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、天然ガスから水素を取り出す方法です。この方法は、すでに実用化されていますが、製造過程で二酸化炭素が発生してしまうという課題があります。もう一つは、電気を用いて水を分解し、水素と酸素を作る方法です。この方法は、二酸化炭素を排出しないという利点がありますが、大量の電力を必要とするため、コスト削減が課題となっています。
水素社会を実現するためには、これらの課題を克服し、環境に優しく、かつ経済的な水素製造方法を確立していくことが重要です。
水素製造方法 | メリット | デメリット |
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天然ガスから水素を取り出す方法 | 実用化済み | 製造過程で二酸化炭素が発生 |
電気を用いて水を分解する方法 | 二酸化炭素を排出しない | 大量の電力を必要とするため、コスト削減が課題 |
ISプロセスの仕組み
– ISプロセスの仕組みISプロセスは、高温の熱エネルギーを使って水を水素と酸素に分解する技術です。熱化学分解法と呼ばれるこの方法は、 複数の化学反応を組み合わせて、水を段階的に分解していくのが特徴です。ISプロセスでは、特にヨウ素と硫黄の化合物を触媒として用いることで、より低い温度で反応を進めることを可能にしています。一般的に、水を水素と酸素に分解するには、非常に高い温度(2000℃以上)が必要となります。しかし、ISプロセスでは、触媒を用いることで反応温度を800℃から1000℃程度にまで下げることが可能です。これは、従来の方法と比べて、より効率的に水素を製造できる可能性を示唆しています。具体的には、ISプロセスは3つの反応過程からなります。まず、硫酸を分解して酸素と二酸化硫黄、水を生成します。次に、ヨウ素と水を反応させて、ヨウ化水素と酸素を生成します。最後に、ヨウ化水素を分解して水素とヨウ素を生成します。このようにして、ISプロセスは水を水素と酸素に分解します。ISプロセスは、太陽熱などの再生可能エネルギーを利用できる点でも注目されています。将来的には、二酸化炭素を排出しないクリーンな水素製造方法として期待されています。
ISプロセス |
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高温の熱エネルギーを用いて水を水素と酸素に分解する技術 (熱化学分解法) |
複数の化学反応を組み合わせて、水を段階的に分解 |
ヨウ素と硫黄の化合物を触媒として使用 |
触媒を用いることで反応温度を800℃から1000℃程度にまで下げることが可能 |
ISプロセスの3つの反応過程 |
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1. 硫酸を分解して酸素と二酸化硫黄、水を生成 |
2. ヨウ素と水を反応させて、ヨウ化水素と酸素を生成 |
3. ヨウ化水素を分解して水素とヨウ素を生成 |
ISプロセスの特徴 |
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太陽熱などの再生可能エネルギーを利用できる |
二酸化炭素を排出しないクリーンな水素製造方法として期待 |
ISプロセスと原子力
鉄を作る際に発生する二酸化炭素を減らす技術として、ISプロセスが注目されています。ISプロセスは、鉄鉱石から酸素を取り除く過程で水素を用いることで、二酸化炭素の代わりに水が生じる画期的な製鉄方法です。
このISプロセスを支える重要な要素の一つが、高温の熱源です。ISプロセスは、鉄鉱石から酸素を取り除くために、約900℃という非常に高い温度を必要とします。従来の方法では、この高温を得るために多くのエネルギーが使われ、同時に多くの二酸化炭素が排出されていました。
そこで注目されているのが、原子力発電所の一種である高温ガス炉です。高温ガス炉は、約900℃の高い熱を発生させることができ、ISプロセスに必要な熱を供給するのに最適です。さらに、原子力発電は発電時に二酸化炭素を排出しないため、ISプロセスと組み合わせることで、環境に優しい製鉄を実現できる可能性を秘めていると言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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技術名 | ISプロセス |
目的 | 製鉄時の二酸化炭素排出削減 |
仕組み | 鉄鉱石から酸素を取り除く過程で水素を使用し、二酸化炭素の代わりに水を生成 |
必要条件 | 約900℃の高温熱源 |
従来の方法の問題点 | 高温を得るために多くのエネルギーを使用し、二酸化炭素を排出 |
解決策 | 高温ガス炉(原子力発電所)の利用 |
高温ガス炉の利点 | 約900℃の高温を発生でき、ISプロセスに必要な熱を供給可能 発電時に二酸化炭素を排出しない |
期待される効果 | 環境に優しい製鉄の実現 |
日本の研究開発
– 日本の研究開発水素社会実現に向けた挑戦日本は、エネルギー資源の乏しい国であるため、新たなエネルギー源の確保が重要な課題となっています。その中で、水素は、燃焼時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。水素を製造する方法には様々なものがありますが、日本では、原子力の熱を利用して水を分解し、水素を製造する研究開発に力を入れています。日本原子力研究所は、高温ガス炉を用いた「熱化学法」と呼ばれる技術を用いて、水素を製造する研究開発を長年進めてきました。熱化学法は、水を電気分解するよりも少ないエネルギーで水素を製造できる可能性があるため、注目されています。特に、ヨウ素-硫黄サイクル(ISプロセス)と呼ばれる方法は、効率が高く、実用化に近い技術として期待されています。また、東京大学や東京農工大学では、ISプロセスよりもさらに効率が高いとされるUT-3プロセスという新たな熱化学法の研究開発が進められています。UT-3プロセスは、ISプロセスで使用されるヨウ素や硫黄の代わりに、カルシウムや鉄、臭素などの化合物を用いることで、より低い温度で水素を製造することが可能となります。これらの研究開発は、日本の水素社会実現に向けた重要な取り組みとして、国や企業が一体となって、更なる技術革新やコスト削減に取り組むことで、水素エネルギーの普及を加速させていくことが期待されています。
水素製造方法 | 特徴 | 研究機関 |
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熱化学法(ISプロセス) | 高温ガス炉の熱を利用 効率が高く実用化に近い |
日本原子力研究所 |
熱化学法(UT-3プロセス) | ISプロセスより低温で製造可能 カルシウム、鉄、臭素を使用 |
東京大学 東京農工大学 |
世界の動向
– 世界の動向
近年、地球温暖化への対策が世界共通の課題としてますます重要性を増す中、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーである水素に注目が集まっています。中でも、高温ガス炉と熱化学分解法を組み合わせた水素製造技術は、日本のみならず、アメリカやフランスといった国々でも再び脚光を浴びています。
高温ガス炉は、安全性が高く、運転時に二酸化炭素の排出を抑えられる次世代の原子炉として期待されています。一方、熱化学分解法は、高温の熱エネルギーを用いて水を水素と酸素に分解する技術です。この二つの技術を組み合わせることで、大量のクリーンな水素を効率的に製造できる可能性を秘めています。
アメリカでは、すでに高温ガス炉を用いた水素製造の実証実験が開始されており、フランスでも研究開発が積極的に進められています。国際原子力機関(IAEA)は、この分野における国際協力の枠組みを構築し、技術開発や安全基準の策定などを推進しています。
このように、高温ガス炉と熱化学分解法による水素製造は、世界的な関心を集めており、今後、国際的な連携が進展していくと考えられます。地球温暖化対策の切り札として期待されるクリーン水素エネルギーの普及に向けて、今後の技術開発の進展に大きな期待が寄せられています。
国 | 動向 |
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日本 | 高温ガス炉と熱化学分解法を組み合わせた水素製造技術に注目 |
アメリカ | 高温ガス炉を用いた水素製造の実証実験を開始 |
フランス | 高温ガス炉を用いた水素製造の研究開発を積極的に推進 |
IAEA(国際原子力機関) | この分野における国際協力の枠組みを構築し、技術開発や安全基準の策定などを推進 |