沈黙の影：肺がんを知る

沈黙の影：肺がんを知る

肺がんとは

– 肺がんとは肺がんは、私たちの呼吸を司る大切な器官である肺にできる悪性腫瘍です。肺は、体中に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する役割を担っており、生命維持に欠かせない臓器です。この肺にがんが発生すると、呼吸のたびに酸素を取り込むという肺本来の機能が損なわれ、息苦しさや咳などの症状が現れます。肺がんは、肺の細胞が何らかの原因でがん化することによって発生します。がん細胞は、正常な細胞とは異なり、無秩序に増殖を続け、周囲の正常な組織を破壊しながら成長していきます。さらに、進行すると、血液やリンパ液の流れに乗って、他の臓器に転移することもあります。転移が起こると、がんはさらに広がり、治療が困難になる可能性があります。肺がんは、日本人の死亡原因の上位に位置する深刻な病気です。早期発見、早期治療が重要であり、定期的な健康診断などを通じて、早期発見に努めることが大切です。

肺がんの種類

人間の肺に発生するがんは、大きく分けて二つの種類に分けられます。一つは「原発性肺がん」と呼ばれるもので、これは肺そのものから発生するがんを指します。肺の細胞にはいくつかの種類があり、がんはそれらの細胞の種類によってさらに細かく分類されます。

例えば、肺がんの中で最も患者数の多い「腺がん」は、粘液を分泌する細胞から発生します。また、「扁平上皮癌」は、肺の気管支や細気管支の内側を覆う細胞から発生するがんです。さらに、「小細胞がん」は、神経細胞と似た性質を持つ細胞から発生し、増殖が速く、早期に転移しやすい特徴があります。一方、「大細胞がん」は、顕微鏡で観察した際に細胞のサイズが大きく、他の肺がんに比べて比較的まれなタイプです。

もう一つは「転移性肺がん」で、これは他の臓器で発生したがん細胞が、血液やリンパ液の流れに乗って肺に移動し、そこで増殖を始めたものを指します。肺は血液循環の中継点となるため、様々な臓器のがんが転移しやすい臓器と言えます。転移性肺がんの場合、元になったがんの種類によって治療法も異なります。

肺がんの症状

肺がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことが多く、知らないうちに進行してしまうケースも少なくありません。そのため、早期発見が非常に重要となります。

肺がんが進行すると、咳、痰、血が混じった痰、胸の痛み、息苦しさ、声がれといった症状が現れてきます。これらの症状は、肺がん以外にも、風邪や気 bronchitis、肺炎など、他の病気でも見られることがあります。しかし、これらの症状が長引いたり、改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

さらに、肺がんが進行すると、がん細胞が他の臓器に転移することがあります。これを転移といいます。転移が起こると、転移した臓器によって様々な症状が現れます。例えば、骨に転移すると、激しい骨の痛みを感じることがあります。脳に転移すると、激しい頭痛や、体の痺れ、麻痺などの症状が現れることがあります。

肺がんは、早期発見、早期治療が非常に重要です。そのためにも、定期的な健康診断の受診や、少しでも体の異変を感じたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

肺がんの検査

肺がんの検査は、初期段階では自覚症状が現れにくいため、早期発見が非常に重要です。検査は、まず医師による問診から始まります。喫煙歴や咳などの症状、家族の病歴などを詳しく聞かれます。

問診後、胸部エックス線検査を行います。これは、肺がんの疑いがある場合に行われる最初の検査で、肺の影を写し出すことで異常の有無を調べます。この検査で異常な影が見つかった場合、精密検査が必要となります。

精密検査には、コンピューター断層撮影（CT検査）、磁気共鳴画像装置（MRI検査）などがあります。CT検査は、エックス線を使って体の断面画像を撮影する検査です。肺がんの大きさや形、位置、周囲の組織への浸潤などを詳しく調べることができます。MRI検査は、強力な磁場と電波を使って体の断面画像を撮影する検査です。CT検査よりもさらに詳細な画像を得ることができ、肺がんと周囲の血管や神経との位置関係などを確認することができます。

さらに、気管支鏡検査を行うこともあります。これは、口または鼻から細い管を入れて気管や気管支を観察する検査です。肺がんが気管支に達している場合、直接観察したり、組織を採取したりすることができます。採取した組織は、顕微鏡で調べることで、がん細胞の有無を確定診断します。

これらの検査結果に基づいて、がんの進行度や転移の有無を判断し、適切な治療方針を決定します。

肺がんの治療

肺がんと診断された場合、病状や体力、年齢などを考慮し、最適な治療法が選択されます。治療の選択肢は大きく分けて四つあります。

まず、がんを根治的に治療することを目的とする場合、手術、放射線治療、薬物治療が検討されます。外科手術は、肺がんの腫瘍を周りの組織とともに取り除く治療法です。肺がんが早期で、患者さんの体力も十分であれば、第一の選択肢となります。放射線治療は、体外から放射線を照射し、がん細胞を死滅させる治療法です。手術が難しい場合や、がんが周囲の組織に広がっている場合に有効です。薬物治療は、抗がん剤などのがん細胞の増殖を抑える薬を用いる治療法です。

近年注目されているのが、がん細胞の増殖に関わる特定の分子を標的にした分子標的薬です。この薬は、がん細胞だけを狙い撃ちするため、正常な細胞への影響が少なく、副作用を抑えることができます。進行した肺がんや、他の治療法の効果が期待できない場合に用いられます。

どの治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりの状況に合わせて決定されます。医師とよく相談し、最適な治療法を見つけることが大切です。