知識創造のメカニズム:SECIモデル

知識創造のメカニズム:SECIモデル

電力を見直したい

先生、SECIモデルって知識の創造に関するものですよね? 原子力発電と何か関係があるんですか?

電力の研究家

良い質問ですね!SECIモデル自体は知識創造のプロセスを説明するものですが、実は原子力発電の安全性向上にも応用できるんです。

電力を見直したい

えー!そうなんですか?具体的にどんな風に役立つんですか?

電力の研究家

例えば、ベテラン作業員の経験や勘といった暗黙知を形式知化して共有したり、事故の教訓を組織全体で学び続ける仕組みを作るなど、様々な場面でSECIモデルが活用できるんですよ。

SECIモデルとは。

「SECI(セキ)モデル」という言葉を、原子力発電の分野で見かけることがありますね。これは、会社などで新しい知識が生まれる仕組みを表したもので、知識を生み出すための土台となる考え方です。この考え方は、野中郁次郎さんたちによって作られ、1991年にハーバード・ビジネス・レビューという雑誌に載りました。この考え方によると、知識には、言葉にできない感覚的な知識と、言葉や図で表せる知識の2種類があり、これらが個人やグループ、組織の間を行き来することで、新しい知識が生まれると考えられています。SECIモデルは、この知識の行き来を4つの段階で説明しています。1つ目は「共同化」で、みんなで体験を共有する中で、言葉にできない感覚的な知識を得たり、伝えたりすることです。2つ目は「表出化」で、得られた感覚的な知識を、みんなが理解できるように、言葉や図で表すことです。3つ目は「連結化」で、言葉や図で表された知識を組み合わせることで、さらに新しい知識を生み出すことです。4つ目は「内面化」で、言葉や図で表された知識を使って実際にやってみることで、その知識を自分のものにすることです。このようにして、再び言葉にできない感覚的な知識となった個人の知識は、また1から4の段階を繰り返すことで、よりレベルの高い知識へと変化していくのです。

知識創造とSECIモデル

知識創造とSECIモデル

現代社会において、企業が競争を勝ち抜き、優位な立場を築くためには、これまでになかった新しい価値を生み出す「知識創造」が不可欠となっています。知識創造とは、単に情報を集めるだけでなく、既存の知識を組み合わせたり、新たな視点を加えることで、より価値の高い知識を生み出すプロセスを指します。

この知識創造プロセスを体系的に理解し、実践するための有効な枠組みとして、「SECIモデル」が広く知られています。SECIモデルは、知識変換の過程を4つの段階に分け、それぞれの段階における知識の特徴と、段階間の移行を促進するメカニズムを明らかにしています。

具体的には、個人が持つ暗黙知を共有可能な形式知に変換する「共同化」、形式知を組み合わせ新たな形式知を生み出す「表出化」、形式知を組織全体に広め共有する「連結化」、そして共有された形式知を個人が実践を通して深化する「内面化」、という4つの段階から構成されます。

SECIモデルは、組織における知識創造のメカニズムを理解する上で非常に重要な視点を提供します。組織は、このモデルを参考に、それぞれの段階を促進するための取り組みを実施することで、より効果的に知識を創造し、競争優位性を獲得することが可能となります。

知識変換プロセス 段階 説明
SECIモデル 共同化 個人レベルの暗黙知を、他者と共有可能な形式知に変換する段階
表出化 形式知を組み合わせたり、体系化したりすることで、新たな形式知を生み出す段階
連結化 形式知を組織全体に広め、共有する段階
内面化 共有された形式知を、個人が実践を通して学習し、自らの暗黙知として深化する段階

暗黙知と形式知

暗黙知と形式知

知識には、大きく分けて二つの種類があると考えられています。SECIモデルはこの考え方に基づいて作られました。一つは「暗黙知」と呼ばれるものです。これは、私たちが長年の経験や勘、仕事のコツなどを通して身につけていく知識です。熟練の職人さんが持つような、言葉で説明するのが難しい知識がこれに当たります。例えば、自転車の乗り方を言葉で説明する事は難しいですが、実際に乗ってみると自然と体が覚えているように、私たちは多くの暗黙知を経験を通して得ています。もう一つは「形式知」です。こちらは、マニュアルやデータベース、設計図、あるいは議事録のように、言葉や図表を用いて明確に表現できる知識を指します。誰にでも理解できるように、形として残せる知識と言えるでしょう。SECIモデルは、このように対照的な二つの知識が、お互いに影響を与え合いながら、新しい知識を生み出していくプロセスを解き明かしていくのです。

知識の種類 説明
暗黙知 経験や勘、仕事のコツなどを通して身につけていく、言葉で説明するのが難しい知識 自転車の乗り方、熟練の職人さんの技術
形式知 言葉や図表を用いて明確に表現できる知識 マニュアル、データベース、設計図、議事録

知識変換のプロセス:共同化

知識変換のプロセス:共同化

知識変換プロセスにおける最初の段階である「共同化」は、個人の中にある言葉にならない、経験に基づいた知識を共有し、組織全体で共有される暗黙知を形成していくプロセスです。

このプロセスを具体的に見ていきましょう。例えば、長年培ってきた経験と勘を持つベテラン社員と、経験の浅い新入社員がいるとします。新入社員は、ベテラン社員と日常業務を共にする中で、ベテラン社員の行動や状況判断、細やかな作業の手順などを観察し、模倣することによって、その背後にある暗黙的な知識を吸収していきます。これは、まさに徒弟制度のように、実践を通して知識が伝承されていくイメージです。

このように、共同化は、経験の共有を通じて暗黙知を組織全体に広げ、組織全体の知識レベルの向上に貢献します。ベテラン社員の持つ貴重なノウハウが、新入社員に受け継がれていくことで、組織はより高いレベルで業務を遂行できるようになるのです。

段階 説明 具体例
共同化 個人の暗黙知を共有し、組織全体の暗黙知を形成するプロセス ベテラン社員の行動や状況判断、作業手順を観察・模倣し、新入社員が暗黙知を吸収する

知識変換のプロセス:表出化

知識変換のプロセス:表出化

– 知識を形にする表出化のプロセス知識変換の第二段階は「表出化」です。これは、頭の中にあるものの、言葉では表現されていなかったり、図表などで可視化されていなかったりする知識を、誰にでも分かりやすい形に変換するプロセスです。長年、特定の業務に従事してきたベテラン社員が、経験的に培ってきたコツや勘といった業務ノウハウをイメージすると分かりやすいかもしれません。このノウハウは、本人の中では理解していても、それを他の人に伝えるための言葉や手順書といった形では整理されていません。そこで、この暗黙知を形式知へと変換していくプロセスが「表出化」です。例えば、ベテラン社員が自身の業務内容を細かく書き出し、手順書を作成したり、新人向けに研修プログラムを開発したりすることで、暗黙知を形式知に変換することができます。また、業務の進め方や判断基準を図表化して共有することも有効な手段です。このように、表出化は、組織内に存在する貴重な知識を共有可能にするための重要なプロセスと言えます。表出化を進めることで、業務の標準化や効率化、属人化の解消、新人教育の効率化など、様々なメリットが期待できます。その結果、組織全体の能力向上に繋がり、ひいては顧客へのサービス向上にも貢献すると考えられます。

プロセス 説明 メリット
表出化 暗黙知を形式知に変換するプロセス
  • ベテラン社員が手順書を作成
  • 新人向け研修プログラムの開発
  • 業務の進め方や判断基準を図表化
  • 業務の標準化や効率化
  • 属人化の解消
  • 新人教育の効率化
  • 組織全体の能力向上
  • 顧客へのサービス向上

知識変換のプロセス:連結化

知識変換のプロセス:連結化

知識を生み出すプロセスにおいて、三段階目は「連結化」と呼ばれるプロセスです。これは、複数の形式知を組み合わせ、より高度な形式知や、これまでにない新しい形式知を生み出すプロセスを指します。

例えば、異なる部署でバラバラに運用されていた業務マニュアルを統合し、部署をまたいで使用できる汎用性の高いマニュアルを作成することをイメージしてみてください。また、顧客から得られた情報と市場の動向を分析した情報を組み合わせることで、より効果的な販売戦略を練り上げることができるでしょう。

このように、連結化は既存の知識を組み合わせることで、単独では気づくことのできなかった新たな価値を引き出すことができる重要なプロセスなのです。

知識変換のプロセス:内面化

知識変換のプロセス:内面化

知識変換の最終段階である「内面化」について詳しく解説します。内面化とは、文章や図表などで表された形式知を、個人が経験を通して学び、自分自身の感覚的な知識や技能として身につけるプロセスのことを指します。

例として、新しく会社に入った社員について考えてみましょう。新入社員はまず、会社や業務内容を理解するために、マニュアルを読みます。これは形式知を学ぶ段階です。しかし、実際に業務をスムーズに行うためには、マニュアルの内容を理解するだけでは不十分です。そこで、新入社員は先輩社員の指導を受けながら、あるいは自ら試行錯誤を繰り返しながら、実際の業務を経験します。すると、マニュアルに書かれていた知識は、個人の経験に基づいた具体的な知識へと変化し、自分自身の感覚として理解できるようになります。これが内面化です。

このようにして内面化された知識は、単なる知識として頭の中にあるだけでなく、個人の行動や意思決定に直接影響を与える力を持つようになります。つまり、内面化は、組織全体の行動や文化を変えるための原動力となり得る重要なプロセスと言えるでしょう。